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築100年の古民家を自宅兼会社にリノベーションした、植物のwebショップオーナー、槇谷桜子さん。柱が自由に取り払えないという物理的な事情と、自宅兼会社という特別な事情が絡まり、間取り考はさらに高難度に。しかし熟考の末、やりたいことも、やるべきことも実現できるユニークな間取りが生まれました。ワーキングマザーを支える「家事時短間取り」にご注目!

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「主婦」「母」「社長」をこなすための家づくり

私が「Junk Sweet Garden Tef*Tef*」というweb上のプランツセレクトショップを自宅で始めたのは、10年前。娘が6歳、息子が1歳の時でした。ショップを一時閉店し、主婦業と母業をメインに生活した時期もありますが、やはり植物が好きで、お客様に求めていただける喜びを知ってしまった私は、人生から仕事を切り離すことができませんでした。仕事をしながら、母としても子どもが幸せになれるように育てたい!

「主婦」「母」「社長」の兼業は簡単なことではありませんでしたが、なんとかこの10年、3つの役割をこなしてきました。しかし、会社の成長とともに、3つの約をこなし続けるためには、これまでの場所では難しくなってきました。そこで始まったのが、この古民家リノベーション計画です。

小さなガラスの小窓がある玄関扉を開けたら、すぐにこのメインルーム。廊下はなく、写真中央の扉を開けるとオフィス。

ですから、間取りを考えるうえで私が最も重要視したのは作業効率。「主婦」「母」「社長」を一人でこなしていくには、一日24時間の中でどれだけ有効に時間を使えるかがポイントです。効率化を図るということは、いかに無駄な動きを省くかということでもあります。しかし一方、省けない、省きたくないのがコミュニケーション。母親として子どもたちとのコミュニケーションは当然、大切にしていますし、社長として社員とのコミュニケーションもとても大切に考えています。

何を省略し、何を省略しないのか。消去法で省略可能なことといえば、家事が残りました。自宅兼会社ということを最大限に有効活用し、仕事の合間の細切れの時間で家事をこなし、すぐに仕事に戻れるように間取りを熟考しました。

「細切れ家事」ができる廊下のない間取り

仕事から家事へ、家事から仕事へのスムーズな動線の確保を考えた結果、廊下のない間取りが生まれました。簡単ではありますが、上が現在の我が家の大まかな間取り図になります。

まず決定したのが、前回にお話ししたアイアンのテラスドアのあるメインルーム。ここにキッチンを配置し、日中子どもが学校へ行っている時間は応接間や社内会議部屋、また従業員の休憩部屋として使っています。ここは夕方からは自宅のダイニングとして夕食を家族で頂きます。夕方、ご飯をつくっている時にまだ従業員が仕事をしてくれていることもあります。そんなときもご飯をつくりながら仕事の話ができるように、キッチンから従業員の顔が見えるように設計してあります。将来、生活が変化した時に大きな工事をせずに済むように、2階にもセカンドキッチンを設けていますが、現在は使用していません。今は私が日中1階で仕事をし、その合間の細切れの時間を使い、夕飯の仕込みをしたり、キッチンまわりの家事をこなせるように、仕事スペースとキッチンスペースは隣接しているほうが時短になり効率的です。

メインルームからオフィスルームの眺め。ガラス窓のある扉を開けると花苗の梱包部屋。オフィス内に家族玄関の扉(写真右手前)があります。

廊下はなく、扉一つで隣はオフィスです。私は一日で一番長くオフィスにいるので、間取りはオフィスを中央に配置しました。オフィスと自宅スペースは壁一枚ですから、仕事をしていても洗濯機や炊飯器、オーブンの終了メロディーが聞こえ、仕事と家事を同時進行させることができます。廊下がないので扉一つでランドリーへ、またはキッチンへ行って家事を済ませ、またすぐオフィスへ戻って仕事に取りかかれる環境です。

また、私や従業員が花苗を管理する農業ハウスと母屋を一日に何回も往復するため、1階はほぼ全面を土足スペースにしました。ですから、玄関に靴を脱ぐスペースは必要なく、靴を脱ぎ履きする時間も短縮! いずれ庭ができたら、野菜を庭から採ってきてすぐにキッチンで料理することもできます。

本来廊下とするスペースを共有して使う部屋にすることにより、廊下がほとんどないこの間取りは、私にとって子どもたちと顔を合わせる時間を少しでも確保することができますし、従業員とも常に顔を合わせることができ、その動きも把握しやすくなっています。

北側には花苗を管理する農業ハウスがあり、日中私はその農業ハウスかオフィスにいます。

大まかに事務スタッフ、梱包スタッフ、植物管理スタッフと3部門に分かれており、私がどの従業員ともスムーズに連携が取れるようにしました。会社としての間取りは、オフィスから梱包部屋へはドア一つで区切られているだけですので、開けて仕事をすれば指示も聞こえる近さです。

また梱包部屋から農業ハウスまで一直線で行ける動線を確保したりと、全ての場所で効率を重視し、間取りを組み立てていきました。

‘私らしい’間取り

家族玄関を開けたところ。ここで靴を脱ぎます。

手前のドアは、家族玄関へのドアになります。

子どもたちが帰ってくると、私の席から目線が合うようにし、帰宅後はここで一日の出来事を話してから2階の家族スペースへ帰って行きます。私は仕事の手を止めることなく、子どもたちの顔を見て、その表情から心情を読み取り、フォローすることができています。

会社兼自宅の最大のメリットは、「細切れ家事」が実現でき、仕事をしながら子どもたちとのコミュニケーションも取れる点にあります。「仕事」と「プライベート」は完全に分けたい方には向かない間取りかもしれませんが、私には仕事も家事もすべて自分のやるべき生活の一部ですから、分けるという考えはありません。また、マルチタスク的に同時にいろんな作業をこなすのが得意なので、このような‘私らしい’間取りが生まれました。

家づくりで間取りに悩んだら、ご自身がどのように動ければスムーズなのか、一日のスケジュールを書き出してみてはいかがでしょうか。生活スタイルに合った、あなたらしい間取りが浮かび上がってくるはずです。

建築/「中内工務店」http://www.nakauchi-koumuten.jp/

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