家づくりでは人それぞれ、大切にするポイントが異なります。間取りや部屋の広さ、収納、デザイン、予算…。植物のwebショップオーナー、槇谷桜子さんの場合は「毎日、目にする室内からの眺め」でした。自分にとって何が一番大切なのかをじっくり突き詰めれば、ずっと笑顔で過ごせる空間が生まれるはず。これから家を建てようという方必見! 家づくりがもっと楽しく、豊かに自由になるヒントが満載の槇谷さんの家づくりをご紹介します。

絶対に譲れない我が家の顔「テラスドア」

「庭も空も全部入るような、壁一面の大きなテラスドアが欲しい!」。

古民家をリノベーションするうえで、一番最初に決めたのは庭に面するテラスドアです。家の外観のデザインというよりも、室内から庭を眺める際の「フレーム」として、テラスドアのデザインは家づくりにおいて最重要事項でした。そのフレームを通して庭を眺めた際に、より素敵に、庭にいるときとはまた違った表情の風景を楽しみたいと考えていました。

また、玄関は家の顔とよくいわれますが、私はテラスドアのほうを我が家の顔、フォーカルポイントにしようと決めていたので、ここから家全体のデザインを決めていきました。大好きな花がいっぱい咲く庭を眺めるために、一番大切にしたかったからです。

イメージぴったりの窓をつくるには?

現代のサッシの主流はアルミサッシです。アルミサッシにも素敵なデザインがたくさん増え、何より気密性が高く機能的。でも私の中では、『機能性』<『デザイン』が優先順位。機能性は後回しでもよいので、とにかく私のイメージするデザインの中で暮らしたかった!

メーカーのアルミサッシもいろいろと検討したものの、残念ながら私のイメージにぴったりのものが見つかりませんでした。だったらオーダーでつくってもらうしかない! どうせならずっと憧れていたアイアン製で、朽ちていく風情も楽しみたい! というわけで、アイアンサッシをフルオーダーで制作してくださる業者探しが始まりました。

苦戦した業者探し

とはいうものの、私にとっては未知の世界。インターネットで『アイアンサッシ』を検索しても、個人邸に使われている例はとても少なく、業者の情報も少ないうえに、私のイメージと合うところが見つからない…。いったんは家全体を施工してくださった中内工務店と取り引きのある金物業者に見積もりをお願いするところまでいきましたが、私の頭の中にあるイメージをどこまで理解していただけるかという不安が残りました。

たくさんの方にアプローチして情報を集めていたなかで、素敵な巡り会いがありました。私が家づくりを依頼するきっかけとなった中内工務店の施主の方が、「イメージを理解してくれそうな人がいるよ」と、ある方を紹介してくださったのです。

ファーストインスピレーションで衝撃の出会い!

現場を見てくださるということで、ドキドキしながら待っていると、遠くから大きなトラックが来たのかと思うような車の音が…。現れたのは、なんて可愛い旧型のワーゲン! 思わずアイアンサッシのことを忘れて、その車、本当に走れるの⁈ と可愛い乗り物について、いっぱい質問を投げかけてしまいました。

車の錆もエイジング加工ではなく、本当に年月を経たリアルなビンテージ! そんなビンテージ車から降りてきた方は、私と同世代の、おしゃれで笑顔のとっても素敵な「TUN UP CAFE」の中村さんという男性でした。

「あの車に乗り、自分に似合う服を着て仕事をするこの方なら、私のイメージやこだわり、妥協したくない気持ちをきっと分かってくださるはず!!!」と直感で確信しました。

それからたくさんお話をし、この家にもとても興味を持ってくださり、私のイメージを口頭で伝えると、すんなりと理解していただけました。

家づくりでは、こうした幸せなご縁をたくさんいただきました。中内工務店さんもですが、この方も出会うべくして出会えたのだと思っています。日常生活もそうですが、必要な時に必要な人が現れ、必要な時に必要な情報が自然と集まるものだと思い、生きています。だから、流れに逆らわず、風に乗って飛ぶように! が私の信条。

デザインは私、専門知識はプロに任せる

自分にこだわりがあるのはよいことだと考えていますが、建築は専門的知識が不可欠であり、私が素人であることも自覚していました。ですから、デザインは私が、使う素材や塗装はプロの意見を重視して役割分担でテラスドアを制作することになりました。私が書いた簡単なデザイン画を見ていただき、枠となるフレームより格子部分は細く、女性らしい柔らかな雰囲気が出るようにお願いしました。自分の持っているイメージや雰囲気を実現する際には、ディテールの具体化が必要です。

・中心は両扉が開くフレンチドアに。
・両脇の一マス分ははめ殺しに。
・すべて格子ではなく、一部分を鉄板にすることで、よりアイアン製であることを主張し、既製品とのデザインの違いを出してほしい。

などなど、ディテールを詰めることによって、当初私が抱いていた女性らしさ、フレンチテイストを求めながらも、直線美のスタイリッシュさもMIXしたデザインが出来上がっていきました。

最後まで悩んだのは、取っ手部分。大袈裟な装飾やゴツいデザインはNG! ここはプロに考えていただいて、私の伝えたNGポイントを避けて、握りやすさ、開けやすさも考慮してつくっていただきました。

プロ目線のこだわり

中村さんは、私と同じ「こだわり人間」。自分の仕事に誇りがあれば、こだわりがあるのも当たり前です。私自身、依頼主の言いなりではプロとはいえないと常々思っており、依頼主の期待以上のことをしてこそプロでしょ! と考えています。中村さんのこだわりポイントの一つは「塗装」。

私の素人知識では「色はマットな黒で」程度しか頭になかったのですが、塗装の方法もさまざまあるとのこと! 一通り説明していただきましたが、詳細な部分は知識不足で私には理解できず。しかし、そのこだわりと熱意にすべてお任せすることにしました。

期待以上の出来上がり

ガラス部分も一枚の大きなガラスを格子で挟み込むのではなく、一マス一マスが独立したつくりで、細いフレームにも凹凸があり素敵な陰影を演出してくれています。

「ここはプラスネジじゃなく、六角ネジでしょ!」という中村さんのプロならではの細かなこだわりも随所に加わり、完成品は期待以上。200kg近くも重量があるので、基礎部分には鉄骨の柱を入れ、設置には2人がかりで3日も要しました。

中村さんとつくり上げたこのテラスドアは、これからの長い人生を毎日共にする大切な私の一部分。毎朝、「やっぱり素敵~~~!」と晴れやかな気分にさせてくれています。

正直、このテラスドアは予算の2倍もかかってしまいましたが、後悔はありません! リノベーションも新築も予算を考えて進めなければいけないことですが、家の顔となる一番大好きな部分にとことんこだわると、家全体がとても素敵に見えてきます。

Credit

写真&文/槇谷桜子
‘大人可愛い’をテーマにした「Junk sweet Garden tef*tef*」とクールでスタイリッシュな観葉を扱う「BOTANICAL GREEN」、2つのWebプランツショップのオーナー。高校一年生の娘と小学校4年生の息子がいるアラフォー。花好きが高じてショップをはじめて10年、仕事と家庭の両立をしながらショップを展開中。繊細で絵画的な寄せ植えにファン多数。
「Junk sweet Garden tef*tef*」http://teftef.biz
「BOTANICAL GREEN」http://botanical-green.teftef.garden

テラスドア制作/「TUN UP CAFE」https://www.instagram.com/tun_up_cafe/

建築/「中内工務店」http://www.nakauchi-koumuten.jp/