春を告げる花として親しまれる「クリスマスローズ」。ほかの植物が芽吹く前に咲く貴重な花です。早春に土の中からたくましい茎を伸ばすその姿は、見る者に生きる希望を与えてくれます。そして、花やつぼみは可憐さと素朴さを併せ持った庭の宝石そのもの。花は下向きに咲くので、地面に寝そべって眺めるのが楽しみという方も少なくありません。クリスマスローズがどのように生産されているのか知りたくなり、原種と交配種を生産しているナーセリー「びいなすふぁあむ」さんを訪ねました。

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希望の花「クリスマスローズ」

仙台市にある私の庭で、春一番に咲く花が「クリスマスローズ」です。10年前に、植物関係の仕事をしていた姉から「このクリスマスローズは貴重な花だから大切に育ててね!」と言われ、大株の苗を譲り受けました。その後、地植えしたものが、上の4枚の写真です。育て始めた頃は価値が分からず「下向きに咲く暗いヤツ」と思い、なんとなく付き合ってきました。そのイメージが覆ったのが東日本大震災が発生した年の春です。震災で心身ともに疲れきった私が花壇に目を落とすと、クリスマスローズがたくましく新しい茎を何本も地面から伸ばし、その先で葉を広げ、宝石のように美しい花とつぼみがうつむくように咲いていました。私は、「うわぁ、凄い!」と叫びながら地面に寝そべり花を見上げ、再び生きる希望が湧いたことを覚えています。それから年を追うごとに株は成長し、毎年立派な花を咲かせています。
※一般に花弁と呼んでいる部位は萼片(がくへん)で、本来の花弁は退化して蜜腺となっています。

クリスマスローズの故郷を訪ねてみたい

クリスマスローズの魅力にとりつかれた私は、この花が育った場所を訪ねてみたくなり、わが家のクリスマスローズを生産した「びいなすふぁあむ」さんに連絡をとることにしました。びいなすふぁあむさんは、全国の愛好家の間では有名なナーセリーで、特に原種の生産においては聖地と呼ばれるほどです。

川崎町の晩秋の景色。
川崎町の晩秋の景色。
川崎町の晩秋の景色。

クリスマスローズのナーセリー「びいなすふぁあむ」さんは、蔵王連峰のふもとにある、宮城県・川崎町という自然豊かな美しい町にあります。「クリスマスローズについて教えてください」と私がたずねると、柔和な笑顔で「いいですよ!」と大森さんご夫妻が出迎えてくださいました。

びいなすふぁあむの晩秋の生産風景。
びいなすふぁあむの晩秋の生産風景。
びいなすふぁあむの晩秋の生産風景。

「びいなすふぁあむ」を営む大森さんご夫妻にお話を伺いました。

どうしてわが家のクリスマスローズは立派に育っているのですか?

普通のクリスマスローズの苗は、温室の中で鉢植えで育てられ、1月の寒い時期に店頭で販売されます。温室育ちの苗は鉢の中で根が回り、外の寒い環境に適応できず、うまく育たないものも出てきます。びいなすふぁあむでは、冬に掘り上げて鉢植えしたものを、ゆっくりハウスの中で開花させて販売したり、露地栽培で開花したクリスマスローズの株をお客様に選んでいただき、それを掘り上げて販売するので、鉢の中で根が回っていることがなく、そのまま地植えしても丈夫に育つのです。

どのようにして生産しているのですか?

自家製くん炭をつくる風景。

びいなすふぁあむでは、無農薬有機栽培で苗を育てています。3~5年寝かせたバークを元土として使い、自家製のくん炭と地元でとれた赤土に発酵豚糞、骨粉、苦土、かき殻石灰を混ぜた用土で育てています。土全体がふかふかで通気性と排水性、保肥力に優れ、クリスマスローズが丈夫に育ちます。

クリスマスローズの楽しみ方を教えてください。

クリスマスローズの原産国(東欧諸国など)では、落葉樹の下や野原でクリスマスローズが咲き、ヘパチカ(雪割草の原種)、プリムラ・ブルガリス、クロッカス、スノードロップ、アネモネ類などとコラボレーションする美しい風景が見られます。クリスマスローズは本来、庭で地植えして楽しむ植物です。ですから、これから日本の庭でもこの植栽を広めていきたいです。

家族の花「クリスマスローズ」

地元の小学校の卒業式に、クリスマスローズの苗をプレゼントしてきました。それを自宅で植えた卒業生が大人になり、どこか違う町でクリスマスローズを見つけると故郷を思い出すそうです。クリスマスローズは毎年咲き、家族とともに成長していく花なのです。

ゴーシュの森。
ゴーシュの森。
ゴーシュの森。

写真の風景は、農地に隣接する「ゴーシュの森」です。ふだん街中に暮らし、土に触れることが少ない子供たちに思いっきり時間を忘れて遊んでもらえるよう、特製のブランコや木登りできる木、BBQスペースなどを設け、解放しています。森林を満喫し、クリスマスローズも自然の姿で育った苗から好みのものを選んでいただけます。

 

大森さんにクリスマスローズにまつわる興味深いお話を伺い、すっかり魅了されました。私が自分の庭で感じているクリスマスローズが醸し出す優しさが、作り手からも伝わってきました。それで、ぜひ皆さんにもクリスマスローズの魅力を伝えたいと思い、本サイトでも記事で発信していただくことに。とにかく温かい人柄と、クリスマスローズを通して人の生き方を提案していく大森さんの記事をお楽しみに!

協力:びいなすふぁあむ http://venusfarm.blog.jp/

Credit

写真&文/albert_sun3
私は写真家ではありません。庭と植物が大好きなサラリーマンです。
「バラは難しい」と言われますが、ポイントをおさえれば誰でも育てることができます。
ガーデニングを楽しみながら、みなさんとWEBで共有できたら幸せです。
公益社団法人 家庭園芸普及協会認定「グリーンアドバイザー」

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