今まであまり世話をしてこなかったバラの手入れをし、春に向けて再生させるのに適したシーズンがやってきました。こんな鉢が手元にある方は、なるべく1月中旬まで(可能なら12月末まで)に終わらせることを目標に、作業を進めましょう。ここでは、今年の春から都内某所にあるバルコニーで育ててきた鉢植えのつるバラについて、生育診断をしながらアーチに誘引するまでの作業プロセスを、バラの専門家、河合伸志さんに教えていただきます。

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まずは現状をチェック!

【現状】春から育て始めた四季咲き性のシュラブローズ‘ブリーズ・パルファン’を1日2回自動灌水で水やりをしながら、特に植え替えをせず育ててきた鉢。写真右は、5月の開花の頃。葉が青々と茂り、次々と半八重の淡いピンク花を咲かせていました。左は、この作業当日の12月中旬の様子。ほとんどの葉が落ちています。

河合さんの診断

‘ブリーズ・パルファン’はシュートがよく発生するバラですが、この株はシュートの発生はなく、一番花以降の花も咲いた形跡がほとんどなく、全般に順調とはいえない状況。その要因は、数年間鉢替えをしていないために根詰まりしていること、肥料切れしていること、またさらには、黒星病(黒点病)が原因で落葉していることなどが考えられます。残っている葉を見てみましょう。

河合:ほら、枝先に残っている葉に黒いシミのような点がありますね。これは黒星病です。これが原因で葉が落ちてしまったのでしょう。それに、表土を見てください。コケの隙間に根がびっしり張っている様子があり、これは根詰まりしていると考えられます。このバラの状態ですが、枝数や株の様子から想像すると2〜3年は植え替えをしていないのではないでしょうか。ですから、鉢増しをしながら病葉を摘み取るのが今日の主な作業内容になります。

鉢増しの作業プロセス

【用意するもの】現状より2回り大きい鉢(鉢底にしっかり穴があるもの)、鉢底石(鉢底のサイズに合わせて量を調整。ここでは軽石をネットに入れたものを5つ使用)、用土(堆肥入りバラ専用用土)、元肥、剪定鋏、シャベル、熊手。

鉢から根鉢を抜き出す

底の方は根の塊しかないほど、びっしりと根が回っています。これくらいまでになると、順調に水や肥料が届きにくくなり、生育に影響が出始めます。今回は鉢増し(現状より大きな鉢に植え替える)なので、たくさんの根を崩す必要はありませんが、熊手で根をかき取るように表土とサイド、鉢底をほぐします。このように根がガチガチに固まっていると、新しい根が伸びにくいので、全体的に軽くほぐしましょう。

植え込み前の準備

鉢底穴が隠れるように鉢底石を入れます(軽石やパーライト、硬質赤玉土<大粒>など)。あらかじめ培養土に元肥を混ぜておいた用土を鉢底石の上に根鉢の大きさに合わせて適量入れます。

今回は植え込み後に枝をアーチに誘引するため、根鉢を鉢の端に寄せて植え付けます。用土をまんべんなく入れていきます。掘り上げた際、根鉢をあまり崩していないのと、根鉢と新しい鉢の大きさの差が十分なので、棒などでつつかなくても隙間にしっかりと用土が入ります。

あいたスペースに草花を植えるアイデア

鉢の端にバラを寄せたことで、片側に少しスペースがあきました。今後、そのスペースに草花を植え込む際、作業がラクにできるように、あらかじめ空のビニールポットを置いてから隙間に用土を入れます。ウォーター・スペース(灌水の際に水が溜まる部分)を残すため鉢の縁から3〜5㎝程下まで用土を入れ、水をやったら植え込み完了です。

アーチに沿わせる前の4つの作業

今回の株は順調に生育していないので、あまり切り詰めないようにし、枝を多く残します。まずは、残った病葉を全部摘み取り、次に茶色く枯れた枝を切り取ります。冬に葉(特に病葉)を取り除くのは、病気を次のシーズンに持ち越さないための大切な作業です。

楊枝ほどの弱小枝(じゃくしょうえだ/細く弱々しい枝)は、今後の開花が見込めない枝です(小輪の品種の場合)。また、弱小枝が株に多く残っていると蒸れて病虫害が発生しやすくなるので、根元から丁寧に切り落とします。不要な枝(枯れた枝や弱小枝)を切り終わったら、花枝(開花する、もしくは開花した枝)を1〜2節残して切り落とします。

写真上は、剪定前。下は不要な枝を切り落とし、開花する花枝を残した剪定後です。切った枝の量は少ないですが、見た目にもスッキリしました。

写真左は、植え込み直後の剪定前。右は、株全体の不要な枝を切り落とした剪定後の姿。

アーチに誘引する

アーチに誘引するほどたくさんの枝がないので、アーチの幅に合わせてまんべんなく一番太い枝を配置して、麻紐でとめつけました。これで誘引は完了です。

後日、ビオラやアリッサムなどのポット苗を用意し、あらかじめ空けておいたスペースに植え込みました。自動灌水の水量は、休眠期に合わせて2日に1度、2ℓ程度に調整。1~2月に寒肥を与え、これで春を待ちます。つるバラは前年度に伸びた枝に花を咲かせるので、前年度の生育が順調でないこの株に多数の花は望めませんが、来年度の成育の改善が見込まれ、結果さらに翌年の開花もよくなることが期待できます。

Credit

アドバイス&文責/河合伸志
千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『ミニバラ NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月』(NHK出版)、『バラ大図鑑 選ぶ、育てる、咲かせる(別冊NHK趣味の園芸)』監修など。

写真/3and garden

協力/株式会社タクト

 

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