イギリスの南西端に位置するコーンウォール州は、国内で最も温暖な気候に恵まれています。緑豊かで、美しい浜辺や漁村があり、サーフィンも楽しめる、英国人に人気の保養地です。その暖かな地にあるトレングウェイントン・ガーデンは、プラントハンターが世界中から持ち帰った珍しい植物が豊かに茂る庭。そこには、変化に富んださまざまな庭景色が待っています。

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120年前のこと、英国の慈善団体ナショナル・トラストは、開発で失われていく自然や、歴史ある建物や庭といった文化的遺産を守り、後世に残そうと、活動を始めました。多くのボランティアの力によって守り継がれる、その素晴らしい庭の数々を訪ねます。

世界中の植物が茂る庭

©National Trust Images/Andrew Butler

トレングウェイントンの屋敷と庭は、1817年、ジャマイカから帰郷した資産家のサー・ローズ・プライスによって整えられました。その後、1867年に、地元の実業家トーマス・サイモン・ブリソーの手に渡り、以来、1961年にナショナル・トラストに寄贈されるまで、ブリソー家で6代に渡って受け継がれてきました。12万㎡ほどの広い庭には、石塀に囲われたエリアと、小川に沿って小径を散策できるエリアがあります。

©NTI/Marina Rule

庭づくりに特に熱心だったのは、3代目のサー・エドワード・ブリソーです。20世紀前半、彼は、州内随一といわれた有能な庭師とともに、園内に小川を引いたり、世界各地の珍しい植物を集めたりして、庭園を充実させました。

5月になると、かつてプラントハンターが持ち帰った希少な品種を含むアザレアやロドデンドロンが、小径を鮮やかに彩り、甘い香りで満たします。

異国情緒あふれるツリー・ファーンの林

©Marina Rule

園内で最もエキゾチックな雰囲気が漂うのは、ツリー・ファーン(ディクソニア・アンタルティカ)の茂る林です。一見するとヤシの木のような、オーストラリア原産の大きなシダが、ひんやりとしてほの暗い、静かな世界をつくります。そこに明るさをもたらすべく植えられているのは、鮮やかな花色のツバキやロドデンドロン。他では見られない、ちょっと面白い取り合わせです。

花々に縁どられる小川の庭

©National Trust Images/Andrew Butler

こちらは、園内を流れる小川に沿ってつくられた、ストリーム・ガーデン。小川の流れは自然で、その昔に人工的につくられたとは信じられません。アメリカミズバショウ、ヤグルマソウ、ホスタ、シダ、ヘメロカリス、クロコスミアといった植物が植えられた、解放感のある水辺の景色が素敵です。

©National Trust Images/Andrew Butler

春から初夏にかけて、小川はさまざまな花に縁どられます。中でも目を引くのは、黄と赤紫の色鮮やかなカンデラブラ・プリムラ。燭台のようにすっと伸びた姿をして、小川のそばでよく育つプリムラです。

ノアの方舟を模したキッチン・ガーデン

©Marina Rule

石塀でぐるりと囲われ、傾斜のついた花壇のあるキッチン・ガーデンも見逃せません。この地所を最初に整えたサー・プライスは、いささかエキセントリックな信仰を持っていて、キッチン・ガーデンを、ノアの方舟の大きさ(およそ120×20m)に合わせてつくったと伝えられています。なかなかユニークな発想ですね。現在、このキッチン・ガーデンの一部は、地元の人々や小学生のコミュニティーガーデンとして使われています。

©National Trust Images/Andrew Butler

ペンザンス周辺には、海辺の断崖絶壁につくられた野外劇場ミナックシアターや、英国最西端となるランズエンドなど、ダイナミックな自然を感じられる観光スポットがあります。ぜひ周遊して、コーンウォールの旅を満喫してください。

取材協力

英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/
ナショナル・トラスト(日本語) http://www.ntejc.jp/

Information

〈The National Trust〉Trengwainton Garden トレングウェイントン・ガーデン

コーンウォール州ペンザンスへは、ロンドンから車で約6時間。電車では、ロンドン・パディントン駅からペンザンス駅まで約5時間。駅のバス・ステーションから庭園へは約20分、タクシーなら約10分。2月12日~10月29日の月~木と日に開園(10:30~17:00、屋敷は非公開)。

住所:Madron, near Penzance, Cornwall, TR20 8RZ
電話:+44 (0) 1736363148
https://www.nationaltrust.org.uk/trengwainton-garden

Credit

文/萩尾 昌美 (Masami Hagio)

ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。5年間のイギリス滞在中に、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するようになる。神奈川生まれ、早稲田大学第一文学部・英文学専修卒。

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