母娘で17年間、北海道の大地にガーデンをつくり続けている上野砂由紀さんは、楽しみながら自然と親しむ方法をよく知っている女性です。そんな彼女が北海道旭川の「上野ファーム」を舞台に、庭づくりをしながら感じたこと、発見したこと、感動したことを季節の写真とともにご紹介します。ガーデンは思いがけない感動をくれる、心の栄養補給ができる場所ですよ。

いよいよ本格的な冬が到来しました。北海道は早くから雪が何度も降り積もり真っ白い世界をつくりだしています。寒くて雪も多い旭川は、根雪になるのが早い年、遅い年があります。いつも雪に振り回されて仕事が思うように進まないこともしばしば……。でも、すべてのことを受け入れて、長く厳しい冬を楽しく乗り越えていくのが北国のガーデナーです。

雪とバラがつくる美しい一瞬

雪囲いが終わる前に降り積もってしまった雪は、秋遅くに開花した花に思いがけない美しさをプラスしてくれました。深紅のバラと真っ白な雪、まるで物語のワンシーンのようです。

10月から準備を進めていたのに、雪囲いがすべて終わるのを待たず大雪になることもあります。そんな時は、雪の中からバラを掘り出して、作業の続きを行います。

一年で一番忙しいのは冬。時間との勝負です

秋から冬にかけての庭作業は、一年で一番作業量が多く、天気予報とにらめっこしながらスケジュールを細かく考えていきます。でも、自然は人間の予想を大きく覆すこともしばしば。雪囲いが間に合わず大雪に見舞われて、雪からバラを掘り出しながら雪囲いをすることも、よくあります。庭仕事にはとにかく厄介な雪ではありますが、バラに真っ白な雪が降り積もる瞬間は、とても幻想的なものです。こんな瞬間に出会えるのも雪国ならではかもしれません。

雪囲いをすっかりおえたバラ、特殊なシートでバラを包んで、マイナス20℃以下になる寒風から枝を守ります。

雪のベールに包まれた庭で楽しむこと

雪が完全に降り積もると、すべてが雪のベールに包まれて緑もみえなくなり、モノトーンの世界になります。長い長い北国の冬は、毎日憂鬱に思うよりも、楽しんだほうがいい! そんな楽しい気持ちにしてくれるのが、冬の植物飾りです。ガーデンで秋に刈り取っておいた草花や実、枝はとても素敵なガーデン飾りに変身する貴重な素材です。いろいろなものを使って年ごとに飾りを作るのです。今年はどんなものをつくろう。スタッフにも協力してもらい、どんなものに仕上げようかと考えるのも楽しいものです。

ガーデンで採取してクラフトに活用する植物

雪が降る直前までガーデンに咲く花は、ドライになっても美しいものが多くあります。ドライ向きの素材は、長い期間楽しみたいリースづくりには最適な素材です。例えば、ふんわりとしたグラスや蓮の実、真っ赤なローズヒップや枯れても美しい色が残るアジサイなど、冬支度ですべての植物を刈り取る前に、素敵な素材は吟味して大切に残しておきます。天気の悪い日や雪が降る日は、庭仕事がなかなか進みませんが、そういう日こそ創作時間にあてて、上野ファームのガーデン素材を100%使用した植物飾りをつくります。

朱色の実が美しいツリバナ。

ツリバナの実を小枝に吊るすだけでも可愛いガーランドに変身します。

ドライフラワーに向きそうな素材は、刈り取ったらハウスの中で乾燥させておきます。

最後の最後まで美しい色が残る四季咲きアジサイ。美しいグラデーションがとても魅力的です。

上野ファームのガーデン素材100%でつくったリース。今年はリースづくりが得意なガーデンスタッフがそろったので、個性豊かなたくさんのリースが完成しました! 緑をベースに、バラの実やグラスの穂をあしらったり、木の実やアジサイの花をアクセントにしています。

リースは壁にかけても素敵ですが、最近人気のフライイングリースにして、カフェの天井からたくさんのリースを下げてみました! リースを飾っただけでも冬のカフェ空間ではお客さんが盛り上がります。

樹木のメンテナンスのために剪定した枝も飾りに大活用

ガーデンから採れる飾りの素材の中で、私が一番好きなものは剪定後のサンゴミズキの枝です。しなやかで鮮やかな枝が特徴のサンゴミズキは、とても成長の早い低木。思い切った剪定をしなくては、すぐに伸び過ぎて樹形が崩れるので、毎年たくさんの枝を切っています。サンゴミズキは樹皮が赤や黄色なので、真っ白な雪景色にもとても映えて、どんな飾りにも使えて重宝します。クリスマスカラーとしても素敵ですし、めでたいお正月の飾りとしても使える万能の枝なのです。近年力を入れて飾っているカフェの窓辺にも、冬のうちに剪定するさまざまな樹木をふんだんに使って飾りつけます。

プンゲンストウヒやニオイヒバ、サンゴミズキなどで窓枠を縁どるだけで、冬ならではの窓飾りに大変身! ちょっとしたことですが、植物の気配を常に感じることができる飾りは、長い冬を豊かで温かい気持ちにしてくれます。

ローズヒップと針葉樹でつくった窓飾り。部屋の中からちらりと見える葉のシルエットも素敵です。

左/カフェの窓枠に合わせるように、真っ赤なサンゴミズキの枝でアートのように。右/枝だけでもきれいなリース。サンゴミズキは柔らかくて、リースづくり以外にもさまざまなことに使えるので、剪定後の枝はすべて大切にとっておきます。

クリスマスツリーのような、お正月かざりのような……。サンゴミズキを束ねてつくったオブジェは、上野ママオリジナルのアート作品。

冬だからこそ、雪が降るからこそ、植物で楽しむ遊び心。ちょっとした小さな飾りでも、植物の気配を常に感じることができるような冬飾りは、長い冬を豊かで温かい気持ちにしてくれることでしょう。皆様も素敵な冬をお過ごしください。

サンタが上野ファームにやってきた!? 楽しい写真をとって遊べるのも、作業がひと段落した余裕がある冬の楽しみのひとつ。

Credit

写真&文/上野砂由紀

北海道旭川にある「上野ファーム」のガーデナー。大学卒業後、アパレル会社に勤務し、園芸を学ぶため退社して渡英。2001年から実家である「上野ファーム」で庭づくりを始め、旭川ではいち早くオープンガーデンをスタート。2008年に放送されたTVドラマの舞台となった富良野の「風のガーデン」や「大雪 森のガーデン」の植栽デザインのほか、全国で講演会・トークショーなども行う。二男の母。

上野ファーム www.uenofarm.net
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