日本を原産とし、冬枯れの季節に開く美しい花が印象的なサザンカ。日本の冬の季節を彩る植物の特別企画「冬の華・サザンカ」が、千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館にて開催されます。特別企画の見どころと、先日好評のうちに終了した特別企画「伝統の古典菊」の模様を併せてお伝えします。

私たちの身近にある和の植物をもっと深く知ろう

春にはサクラやナノハナが景色を彩り、夏にはヒマワリなどの花が咲き競い、秋にはキクの花や木々の紅葉が楽しめ、そして冬のツバキやサザンカ……。世界でも珍しいほどはっきりとした四季を持つ日本では、日々の暮らしをさまざまな植物が彩ります。そんな私たちの暮らしになじみ深い植物について、もっと深く知ることができる展示を開催しているのが、国立歴史民俗博物館「くらしの植物苑」。この冬は、サザンカをテーマにした特別企画展を開催します。知っているようで実は知らない、身近な植物サザンカの新たな魅力を発見できる特別企画の見どころをご案内します。

冬を彩る日本特産の花木サザンカの魅力に迫る「冬の華・サザンカ」11/28(火)~2018/1/28(日)

晩秋から初冬の寒空の下、可憐な花を咲かせるサザンカは、日本で生まれ育てられた日本特産の花木です。周囲が冬枯れの季節を迎える中、ぽつりと輝くサザンカの色彩にはっとさせられた人も多いのではないでしょうか。

サザンカはその特徴により、自生種に近い「サザンカ群」、獅子頭、または寒椿と呼ばれる品種から生まれた「カンツバキ群」、そしてサザンカとツバキの自然交雑で生まれたとされる「ハルサザンカ群」の3グループに分けられます。特別企画「冬の華・サザンカ」では、江戸時代から現代までにつくられた約145品種ものサザンカを鉢植えで展示。普段なかなか眺めることのない、多様なサザンカの品種を一度に観賞できます。

3つのグループの花を見比べてみると、それぞれの特徴が分かって面白いもの。また、「サザンカの花色と花形」をテーマに、自生種の白花から赤花が出現した経過について、『大和本草』の「くれないのさざんくは」とシーボルトの著した『Flora Japonica』から解説したパネルや、唐子咲(からこざき)、采咲(さいざき)などサザンカ独特の名称について探ったもの、サザンカの花々を並べた花競(はなくらべ)の写真など、展示も充実。この冬、ディープなサザンカの魅力に浸りに行ってみてはいかがでしょうか。

秋から冬にかけて、一重~二重の花を咲かせるサザンカ群。写真は‘丁子車(ちょうじくるま)’。/くらしの植物苑「冬の華・サザンカ」11/28(火)~2018/1/28(日)
真冬に八重や獅子咲などの華やかな花を咲かせるカンツバキ群。写真は‘初光(はつひかり)’。/くらしの植物苑「冬の華・サザンカ」11/28(火)~2018/1/28(日)
名前の通り、開花の時期が遅く、花形や樹形も多様なハルサザンカ群。写真は‘星飛竜(ほしひりゅう)’。/くらしの植物苑「冬の華・サザンカ」11/28(火)~2018/1/28(日)

特別企画「伝統の古典菊」

キクは日本在来の植物ではありませんが、中国より伝わった後、平安時代にはすでに宮中で愛されていたほど日本人にはなじみ深い植物です。国立歴史民俗博物館「くらしの植物苑」では、この秋、そんなキクに関する特別企画「伝統の古典菊」が行われ、11月26日に好評のうちに終了しました。その展示会の内容をご紹介します。

貴族や神職者などの支配者層に愛されたキクは、大覚寺で門外不出とされた「嵯峨菊(さがぎく)」など独特の花が生み出され、不老不死のシンボルなどとして特に重要な植物となりました。近世になって大衆化した後も、変化に富むキクは菊花壇や菊人形として人々に愛され続け、花弁が咲き始めてから変化する「江戸菊」など新たな系統も生まれました。これらの伝統的な中輪種のキクは「古典菊」と呼ばれ、現在まで伝わっています。

江戸時代に各地方で生み出され、栽培されてきた「嵯峨菊」「伊勢菊」「肥後菊」「江戸菊」「丁子菊(ちょうじぎく)」などの中輪種が一堂に会した特別企画「伝統の古典菊」は、幅広い花姿を持つキクが並び、かつての日本人が、キクの花の美しさへの追求にかけた情熱が伝わってくるような展示会に。このほか、「菊花壇しつらえのいろいろ」をテーマに、江戸時代のキクの栽培に用いられた市松障子について、浮世絵や栽培書の挿絵などの絵画資料、栽培書や宴遊日記という大名日記などの文献資料から読み解いた解説パネルも展示されました。

明治時代になるまで大覚寺のみで栽培され、門外不出だった嵯峨菊。糸のような花弁が開くと立ち上がり、刷毛状に咲くのが特徴。写真は‘嵯峨の香’。/くらしの植物苑「伝統の古典菊」10/31(火)~11/26(日)
江戸時代の元禄(1688~1704)頃に流行した丁子菊。花心の筒状花が盛り上がって咲くのが特徴です。写真は‘牛若丸’。/くらしの植物苑「伝統の古典菊」10/31(火)~11/26(日)
文化・文政期(1804~30)に大流行した江戸菊は、咲き進むにつれて花弁が立ち上がり、形の変化も含めて長く楽しめる花。写真は‘黄金の光’。/くらしの植物苑「伝統の古典菊」10/31(火)~11/26(日)

「くらしの植物苑観察会」も随時開催

ご紹介の展示作品が見られる「国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑」は、さまざまな用途で利用され、生活文化を支えてきた植物への理解をより深めることを目的として開設された植物苑です。国立歴史民俗博物館の南東に位置する旧佐倉城の一角に位置し、食物や薬、染色材料など、6つの系統に分けて植栽されています。苑内の冠木門(かぶきもん)・休憩所・植栽方法は、江戸時代の武家屋敷の庭先から山野にいたる景観をイメージしたもの。特別企画に加え、「くらしの植物苑観察会」なども随時開催されています。

記事内写真/国立歴史民俗博物館「くらしの植物苑」

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Information

国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑

特別企画「冬の華・サザンカ」

11月28日(火)~2018年1月28日(日)

Open:9:30~16:30(入苑は16:00まで)、月曜日(祝日の場合は開苑し、翌日休苑)・年末年始(12月27日~1月4日)休苑

入苑料:一般100円、小・中学生無料

※2018年1月14日(日)は入苑無料、毎週土曜日は高校生入苑無料

住所:千葉県佐倉市城内町117番地

Tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)

アクセス:京成佐倉駅からバス約5分、総武本線佐倉駅からバス約15分。自動車利用の場合、東関東自動車道・四街道ICまたは佐倉ICから約15分。

Credit

取材&文/3and garden

ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

協力/国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑