植物の姿を正確かつ精密に描くボタニカルアート(植物画)は、その美しさから多くの人に愛される芸術作品でもあります。2016年に英国キュー王立植物園「FLORA JAPONICA展」で好評を博した明治時代の植物画を展示する企画展が、東京都練馬区の牧野記念庭園記念館にて開催されています。

明治期の植物画に触れる貴重な機会 「雪斎・竹斎 英国キュー王立植物園帰国展」開催中!

2016年9月、イギリス・ロンドンにあるキュー王立植物園。ここで日本のボタニカルアーティスト35名が日本に自生する植物を描いた「FLORA JAPONICA展」が開催され、大好評を博しました。この展示会では、江戸時代以降に出版された植物図鑑(英国キュー王立植物園所蔵)や、1,500種以上の新種・新品種を命名し「日本の植物分類学の父」と呼ばれる牧野富太郎が描いた植物図(高知県立牧野植物園所蔵)なども展示されました。ボタニカルアートとは、植物学を表す「Botanical」と絵画「Art」を組み合わせた言葉。学術的に間違いがなく、細部までくっきりと描写され、植物の特徴が正確に描かれていることはもちろん、絵画としても美しく鑑賞価値が高く、インテリアやコレクションとして高い人気があります。

この展示会で好評を博した、服部雪斎(1807-没年不詳)と加藤竹斎(1818-1886)による明治期の植物画を展示する企画展「雪斎・竹斎 英国キュー王立植物園帰国展」が、練馬区立牧野記念庭園記念館にて開催されています。

服部雪斎は幕末から明治にかけて活躍し、美しい貝類の図鑑『目八譜』で知られる博物画家。明治維新後は博物局(現東京国立博物館)の画家として働き、博物画の秀作を多く描きました。植物画家としての技量も高く、牧野記念庭園記念館が保管する牧野富太郎植物画コレクションにも収蔵されています。

加藤竹斎もまた、明治期に活躍した植物画家の一人。博物局に所属し、明治14年からは東京大学小石川植物園御用係として多くの植物画を描きました。「FLORA JAPONICA展」では、彼が画工を務めていた小石川植物園(現東京大学大学院理学系研究科附属植物園)に所蔵されている作品が出品されました。

「雪斎・竹斎 英国キュー王立植物園帰国展」は、普段はなかなか目にすることのない、明治前期の古い植物画に接することができるまたとない機会です。この企画展に展示されている2人の植物画は、どちらも繊細にして正確な写実ながら、それぞれの絵には個性や特徴が表れています。ほぼ同時代に活躍した2人が、どのように植物をとらえ、表現しようとしたのか。作品をじっくりと見比べることで浮かび上がってくる両者の姿勢を鑑賞できるのが、企画展の大きな見どころです。

また、企画展では、2人の植物画に加え、「FLORA JAPONICA展」で展示された現代のボタニカルアーティストの中から、牧野富太郎にゆかりのある植物を描いた作品も併せて展示されています。

日本の植物画家の手によって描かれた、日本に自生する植物の繊細で精密な姿。この冬、植物の美しさを正確に写し取る、繊細なボタニカルアートの世界を味わいに展示会に出かけてみてはいかがでしょうか。

貴重な植物も楽しめる「練馬区立牧野記念庭園記念館」

1862年に高知に生まれ、日本の植物分類学の父とされる牧野富太郎。幼い頃より植物に親しみ、ほぼ独学で研究。東京帝国大学理科大学(現東京大学)の植物学教室で助手と講師を長年務めました。生涯に発見・命名した植物は1,500種以上、採集した植物は約40万点、収集した書籍は約4万5千冊にのぼり、また、“牧野式植物図”と呼ばれる正確な図でも知られています。練馬区立牧野記念庭園記念館は、牧野富太郎博士の偉業を末永く後世に伝えるため、博士が1926年から94歳で亡くなるまで暮らし、採集した植物を植えて「我が植物園」と愛した住居跡を整備して1958年に開園されました。園内には300種類以上の草木類が植栽されており、学問的にも貴重な植物を多数見ることができます。

写真&植物画/練馬区立牧野記念庭園記念館

Information

「雪斎・竹斎 英国キュー王立植物園帰国展」

練馬区立牧野記念庭園記念館

会期:2017年11月3日(祝・金)~2018年1月8日(祝・月)

Open:9:30~16:30、火曜日・年末年始休館

入場無料

住所:東京都練馬区東大泉6-34-3

Tel. 03-6904-6403/Fax. 03-6904-6404

アクセス:西武池袋線大泉学園駅下車(南口)徒歩5分、またはバス停「学芸大付属前」下車徒歩3分

Credit

取材&文/3and garden

ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。