世界的な名園がいくつも存在するイギリスですが、ガーデニングが大好きな国民の多いこの国には、初心者のお手本になりそうな個人の庭もたくさんあります。NGS(ナショナル・ガーデンズ・スキーム)の主催するオープンガーデンは、普段は見られないそんな個人の庭を、最高のタイミングで見ることのできる貴重な機会。そして、英国のアマチュアガーデナーにとって、NGSのオープンガーデンへの参加を認められるのは、大変に名誉なことなのです。2017年に公開された、宿根草とオーナメンタル・グラスが美しい庭にご案内しましょう。

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ロンドン郊外、一軒家の庭

Photo by Adrian de Baat

ここは、ロンドンから車で約1時間の、ハートフォードシャー州にあるドゥバート夫妻の庭。広さは1,300㎡ほど。夫のエイドリアンさんは1999年に退職すると、妻のクレアさんとともに本格的に庭づくりに取り組むようになりました。ガーデニングの本を読んだり、参考になりそうな庭を訪ねたり、2人は独学で試行錯誤しながら、腕を磨いてきました。

Photo by Adrian de Baat

オーナメンタル・グラスとの運命の出合い

庭づくりを始めてしばらくしてのこと、ふらりと訪れたナーセリーショップで、エイドリアンさんは運命の出合いを果たします。彼の目を引いたのは、初秋の光と風を受けて軽やかに踊り、きらきらと輝く、イネ科のオーナメンタル・グラス。思わず見とれるエイドリアンさんに、店主は、有名なオランダ人ガーデンデザイナー、ピート・アウドルフの著書『Gardening with Grasses(グラス類を使ったガーデニング)』を見せてくれました。

Photo by Adrian de Baat

アウドルフは、野趣あふれる宿根草やオーナメンタル・グラスを大きな塊にして植え、草原のような自然な景観をつくり出す、世界的なガーデンデザイナー。ロンドン五輪の、クイーン・エリザベス・オリンピック・パークの植栽を手掛けたことでも有名です。エイドリアンさんは、アウドルフの現代的なデザインにすっかり魅せられて、彼の設計した庭園をいくつも訪ね、ついにはオランダで公開されている彼の私邸まで訪ねて行ったのでした。

アウドルフ流の、野趣あふれる植栽

Photo by Adrian de Baat

中央の広い芝生をぐるりと囲む長い花壇には、アウドルフの庭でよく見られる宿根草やグラスが、所狭しとばかりに植わっています。明るい花色の塊をつくるエキナセアやアスチルベ。それとは対照的に、長く花穂を伸ばすリスラム。エイドリアンさんのお気に入りの宿根草は、北米原産の香りのよいモナルダです。グラス類も背が高いもの、こんもりと茂るもの、葉のしっかりしたもの、フワフワしたものなど、形も質感もさまざま。それら多種多様な植物を、リズミカルにバランスよく植えているのが見事です。

Photo by Adrian de Baat

日本人にとってはお馴染みの、ススキの生える景色を思い浮かべるとよく分かりますが、高さのあるグラス類は植栽に立体感を与え、庭づくりでとても重宝する植物。冬もそのまま立ち枯れて、味のある景色をつくってくれます。エイドリアンさんのグラス・コレクションは年を経るごとに充実。今年もペルー原産の新しい品種を取り入れました。

海外への旅もインスピレーションの源

Photo by Adrian de Baat

中央の広い芝生と、ついたてのような立派な生け垣の緑は、花壇の植え込みを引き立てます。グラスをもっとたくさん育てるために花壇を広げたいと思うエイドリアンさんと、芝生を広く残したいと願う妻のクレアさんの間で、何度か攻防が繰り広げられたのだとか。

写真の奥、生け垣に囲まれた小さなスペースでは、旅好きな夫妻が北米や南米、アフリカ、アジアへの旅で見つけた、異国情緒たっぷりの植物を育てていて、趣の異なる空間となっています。この写真では見えませんが、なんとバナナも生えています。

10年間続けているオープンガーデン

Photo by Adrian de Baat

宿根草が見頃を迎える7月、夫妻は2007年から毎年、NGSのオープンガーデンを行っています。2年に1度は10月にもオープンして、秋の景色を楽しんでもらいます。夫妻は2017年には約300人の、10年間の累計では約3,000人の訪問客を迎え、その入園料をチャリティに寄付してきました。

「私たちはオープンガーデンが大好きです。もし素敵な庭を持っているなら、少しの間、他の人と分かち合ってみるといいでしょう。地域活性のよい機会にもなりますよ。確かに疲れるけれど、深い充足感が得られます。それに、なんといっても、困っている人を助けるチャリティの資金集めに貢献できる。オープンガーデンは、みんなが幸せになれるのです」。

夫妻の充実したガーデニングライフは続きます。

Text by Masami Hagio

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