花の女王、バラ。バラには野山に自生する性質そのままに栽培される野生種のほか、交配という栽培の技により生み出された無数の園芸品種があります。新しいバラがこの世に生まれるまでには、長い時間と、これまでにないバラを夢見て一輪に情熱を注ぎ続ける人々の存在があります。ここでは、新しいバラを生み出す世界中の育種家とバラのブランドヒストリーをご紹介します。

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1945年、第二次世界大戦終戦。ドイツが降伏した日に開かれた国際連合設立のための会議のテーブルに飾られたバラがありました。花径15㎝にも達する大輪の花は、クリームイエローに淡いピンクの覆輪が入る柔らかな色合い。フランス・リヨンにおいて作出され、戦時中の困難な状況の中、アメリカに渡って育てられたこのバラは、平和への願いを込めて‘ピース’と名付けられました。‘ピース’はその美しさと平和の象徴としてのエピソードから爆発的な人気を博し、世界バラ会議により認定される殿堂入りを果たした最初のバラとなりました。

1955年のメイアン・ファミリーの写真。右からマヌウ(マリールイーズ)、アントワーヌ、アラン、フランシス、ミシェル。

名花‘ピース’を作出したのは、フランスのバラ育種販売会社、メイアン社のフランシス・メイアンです。メイアン家は19世紀よりバラの作出を行ってきましたが、3代目であるアントワーヌ・メイアンが、現在のメイアン社の母体を築きました。その息子として生まれ、常にバラの文化に囲まれて育ったフランシスは、‘ピース’の作出時にはまだ20代前半の青年でした。彼は、このバラを病没した母、クラウディアに捧げ、‘マダム・アントワーヌ・メイアン’という名も与えています。フランシスは若くして亡くなってしまいましたが、その妻であるマヌウ・メイアンもまた、フランシスと同じくバラを深く愛し、バラの歴史に名を刻む素晴らしいバラを作出します。そのバラの名は‘ピエール・ドゥ・ロンサール’。「バラの詩人」といわれるフランスの詩人の名を与えられたこのバラは、中心にピンクがのる繊細な花色に、クラシックな花形がとても魅力的。花つきがよいのも特徴で、世界で最も愛されているバラの一つです。メイアン社は息子のアラン・メイアンに引き継がれ、現在も変わらずに美しいバラの数々を生み出し続けています。

‘ピエール・ドゥ・ロンサール’

メイアン社のバラ

メイアン社の大きな特徴は、自らを「ザ・グランド・ローズ・ファミリー」と呼ぶ通り、現在でも100%家族経営を貫き、伝統や家族の絆を何よりも大切に守っていること。メイアン一族は6世代にわたり、受け継いできた伝統や技術を活かしつつバラの育種を続け、新たな研究にも力を注いでいます。‘パパ・メイアン’や‘ソニア’など、家族にちなんだバラも多く見られます。また、芸術家や歌手など、世界的なスターたちにも美しいバラを捧げ、敬意を表しています。

2017年現在、世界バラ会議が選ぶ殿堂入りバラは16品種が選出されています。そのうち、‘ピース’や ‘ピエール・ドゥ・ロンサール’をはじめとする5品種がメイアン社作出のバラで、育種会社の中で最多を誇ります。フレンチローズらしい華やかな色彩とかぐわしい香りを持ち、エピソード性を備えた名を冠するメイアン社のバラは、世界中で多くの人を虜にし続けています。

華やかなメイアン・ブランドのバラ

‘ボレロ’

雪のような純白の花弁がふんわりと重なり、清楚で可憐な印象の品種。春の花は、中心にほんのりと淡くピンク色が入ります。オールドローズのように整ったロゼット咲きに、フルーツの甘く濃密な香りが漂います。

‘チェリーボニカ’

花つきがよく、手を掛けなくてもころんとした可愛らしいチェリーレッドの花を次々と咲かせます。こんもりコンパクトに樹形が整い、鉢植えでもガーデンでも育てやすい品種。

‘プリンセス・シャルレ―ヌ・ドゥ・モナコ’

モナコ公国のシャルレ―ヌ公妃に捧げられたバラ。パステルピンクにオークルが入る優しくシックな花色で、花弁はフリルがかって華やかです。切りバラとしても魅力的な品種で、甘い香りも楽しめます。

‘ビブ・ラ・マリエ!’

ボリュームのあるロゼット咲きの中心が、わずかにクリーム色がかるオフホワイトのバラ。

丸みを帯びた花弁が優しい印象を与えます。マンゴーやライチのようなフルーティーな香りも魅力的。

‘ビブ・レ・バカンス!’

「バカンス、バンザイ!」の名前の通り、発色のよいオレンジ色の中輪花が何度も繰り返し咲き、にぎやかで楽しげな雰囲気のバラ。花つきがよく、一株でも華やかなので、省スペースでの栽培にもおすすめ。

‘リモンチェッロ’

丸弁の一重花は、咲き進むにつれて鮮やかなイエローから次第に淡い色へと移ろいます。細い枝にたくさんの花をつけ、満開時は株全体を覆うような咲き姿に。小さな照り葉も可愛らしい。

 

メイアン社のバラ苗は、京成バラ園芸にてお買い求めいただけます。
記事協力&写真:京成バラ園芸

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『最も歴史あるバラのナーセリー「フランス・ギヨー社 GUILLOT」』
『花好きさんの旅案内【フランス】モネの庭』
『世界のガーデンを探る旅6 フランス「ヴェルサイユ宮殿」前編』

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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