神奈川・横浜で30坪(約99㎡)の庭を持ち、15年庭づくりをしてきた前田満見さんが、2016年に友人と2人で初めてイギリスを訪ねました。テーマは、憧れのイングリッシュガーデンを巡る旅。湖水地方からコッツウォルズ、ロンドンで訪れた数々のガーデンは、想像と期待を遥かに越えた美しさと、言葉では言い尽くせないほどの感動を与えてくれました。

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湖水地方 〜B&BとHolehird Gardens〜

まず初めに、私たちが訪れたのは、イギリス北西部の湖水地方。かの有名なピーターラビットのお話が生まれた場所です。宿泊先は、ウィンダミア湖畔の街ボウネスのB&B。ここで私たちを迎えてくれたのが、満開の藤でした。まさにウェルカムサプライズ!建物の壁面に誘引された藤の美しさに、長旅の疲れも一瞬で吹き飛んでしまいました。

翌日は、のんびりとボウネスの街を散策し、ウィンダミア湖のクルーズに参加しました。湖面に吹くひんやりとした風、澄んだ空気が心地よく、対岸のみずみずしい緑の中に点々と見える石造りの建物は、どこを切り取っても絵になる景色でした。

次の日は、いよいよチャーターしておいたタクシーでガーデン巡り。幸運にも、タクシーの運転手さんが日本好きな方で、片言の日本語を交えながらとても親切に接してくれました。初めに向かった先は、Holehird Gardens。庭好きの私たちのためにわざわざ立ち寄ってくれたガーデンです。何と、そこで生まれて初めて青いケシの花を見ることができたのです。手漉き和紙のような青い花びらに朝日が透ける様はとても神秘的で、暫く見とれました。

小さいながらもお手入れの行き届いた庭は、ボーダーガーデンやロックガーデン、ウォーターガーデンもあり見応え十分。ナチュラルな植栽も親しみやすく、特に、斑入りの葉が美しい黄色のカキツバタや、赤いクリンソウが鮮やかな水辺の植栽に目を奪われました。

湖水地方〜Rydal Mount garden〜

次に向かった先は、詩人ウィリアム・ワーズワースの邸宅Rydal Mount。1万8,000㎡(約5,500坪)にも及ぶ広大な庭園は、ガーデニング好きだったワーズワース自身によって造園されたことで有名です。山の中腹につくられた庭は、周りの自然と溶け込みダイナミック。山の中を散策しているような気分でした。

また、ワーズワース一家が暮らしていた当時の様子が再現された家の中も見学できるので、その暮らしぶりを垣間見ることができました。中でも、つる植物が無造作に絡まる窓辺は、まるで絵画のよう。どの窓からも庭の豊かな緑が見えました。この場所で、湖水地方の美しい景色をモチーフに数々のロマンチックな詩を残したことが頷ける、叙情的な眺めでした。

湖水地方〜ピーターラビットのお話が生まれたHill Top~

Rydal Mountを後に、次に向かったのが、かの有名なピーターラビットのお話が生まれたHill Top。その道中で、ウィンダミア湖を見下ろす丘の上で、素晴らしい景色を見ることができました。

実はこの場所も、タクシーの運転手さんが立ち寄ってくれたお勧めのビューポイント。これぞ湖水地方!というイメージにぴったりの絶景でした。「もし天国があるとしたら、きっとこんな所かもしれない」、そう思いました。

そこから車で約15分。Hill Topのあるニアソーリー村に到着した途端、お天気が一変、急に雨が降り出しました。とはいえ、ずっと憧れていたHill Top のなだらかな坂道のボーダーガーデンやピーターの菜園が目の前に広がっているのです。

迷うことなく雨に濡れながら興奮気味に写真を撮っていると、すれ違う人たちから、「Hello!」「Enjoy!」と声をかけてもらったり、笑顔で手を振ってもらったり…。こんな温かなコミュニケーションが生まれるのも、ビアトリクス・ポターさんとピーターラビットたちの魔法のおかげ。Hill Topは、世界中の人を笑顔にさせてくれる場所でした。

湖水地方〜Holker Hall Garden〜

そして、この日最後に訪れたのがHolker Hall Garden。ここは、昔、貴族の地主が建てた邸宅の庭で、現在でもキャヴェンディッシュ卿が住んでいるのだとか。その邸宅の一部を見学できるようになっていて、豪華でエレガントな室内を堪能することができました。

1991年に英国園芸界の最高峰「Garden of the Year」を受賞したという庭園は、何と約3万坪(99,000㎡)。装飾の美しい門扉の先や、柵の向こうに羊が放牧されていて、どこまでが庭園なのかわからないほどでした。そんな広い庭園で、ひと際目を奪われたのが、重厚な屋敷の屋根付近まで壁面にびっしりと誘引された白藤。垂れた白い花穂の優美さは圧巻でした。他にも鉢植え仕立ての藤があちらこちらに置かれていました。「いったい、あの高さまでどうやって誘引しているの?」「鉢植えの藤のつるは、どう処理しているの?」と、興味津々でした。

 

藤やバラが咲くメインガーデンの先には、森の中の散歩道のようなウッドランドガーデンが。日向は、アヤメやチドリソウのような紫と白で統一された涼やかな花々、日陰にはシダやギボウシ、鮮やかなクリンソウがバランス良く植えられていました。更に奥へ進むと、樹木に囲まれた薄暗い場所に噴水がありました。木漏れ日にキラキラと輝く水しぶきが美しくて、水音を聞きながら暫く眺めていました。

こうして、丸一日かけて巡った湖水地方のイングリッシュガーデン。豊かな自然の景色を取り入れた広大な庭園は、ゆったりとした時間が流れ、ナチュラルな草花の植栽が印象的でした。そして、何と言っても心が震えた満開の藤の美しさ。万葉の時代から愛されてきた日本原産の藤「wisteria」が、イギリスの人々にこんなにもが愛されているということに驚きと感動を覚えました。イングリッシュガーデンが、改めて藤の魅力を教えてくれたような気がします。

Credit

写真&文/前田満見

*次回は列車で南下し、コッツウォルズ地方へ。前田満見さんのイングリッシュガーデンを巡る旅、まだまだ続きます!

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