花々の開花によって季節の移ろいを感じ、時々に実る美味しい果実をいただくのは、植物を育てている人だけの贅沢な時間。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんに、ガーデンでも育てられる美味しいサマーフルーツを教えていただきました。今回は、ドイツでサマーフルーツとしての人気が高まっているフルーツ4種と、サマーフルーツを使った簡単美味しいレシピをご紹介します。

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近年人気上昇中のサマーフルーツ

ドイツでは、夏にはさまざまなフルーツが実りの時を迎えます。前回ご紹介したベリー類は、ドイツの夏を代表するフルーツの一つ。昔からずっと食べられてきて、現在でも多くの人が日々口にする人気の高いサマーフルーツです。私個人にとっても、これらのベリー類についての子どもの頃の思い出や栽培経験などがたくさんあります。ドイツ人にはとても身近な存在なのです。

さて、今回スポットを当てるのは、ちょっと珍しいドイツのサマーフルーツたち。近年、ドイツのガーデンで人気が高まりつつあるフルーツです。ここではそんな新顔のフルーツを4種ご紹介したいと思います。

マルメロ(Quitten)

マルメロ

まず初めに取り上げたいのはマルメロ(Cydonia oblonga)。日本ではセイヨウカリンとも呼ばれます。バラ科の低木で、コンパクトなブッシュに生育します。5月から6月頃になると、白っぽい優しいピンク色の花を開き、辺りによい香りを漂わせます。私が住んでいるドイツの地域では、7月には小さな実が実り始めますが、収穫できるのはほとんど10月頃まで待たなければなりません。サマーフルーツというより秋の果実かもしれませんが、夏にも実が見られるので紹介しました。

マルメロの果実はリンゴやナシに似た見た目をしていますが、とても固くて苦いので、生のままで食べることはできません。また、果実の表面は細かな毛で覆われているため、調理する前に軽くこするなどして取り除いておく必要があります。ですが、このマルメロの実で作るマーマレードはとても美味しいですし、ジュレやシロップにするのも素敵です。マルメロの果汁から作られるジュレは、ワインに似たとても美しい色をしているんですよ。マルメロのジュースは、リンゴジュースとミックスして飲まれることもよくあります。また、マルメロの中にはChaenomelesと呼ばれる観賞用のものもあります。食用となるマルメロよりもずっと早く、4月頃に美しいオレンジ色の花を咲かせます。ドイツでは、春を告げてくれる花木の一つです。

子どもの頃は、果物が実る時期になると、家族みんなでたくさんの種類のジャムやマーマレード、ジュレを作ったものでした。こうしてジャムやジュレを作っておくことで、長い冬の間も、フルーツを味わうことができるのです。フルーツからマーマレードやジュレを作るのは、いつも時間と根気が必要な大変な作業。でも、家族みんなでジャムを作った時間は素晴らしい経験として、今も私の楽しい思い出に残っています。日本にも、このようにジャムやマーマレード、ジュレなどをみんなで作る“家族の日”があってもいいと思います。果物狩りに出かけた後に、みんなで素敵な宝物を作ってみてはいかがでしょうか。家族ばかりでなく、ジャムづくりなんかに熱心な友だちと作るのもいいですね。自分の家のキッチンでは作業ができないなら、みんなでコミュニティキッチンを活用するのも楽しいですよ。

ブドウ(Weintrauben)

ブドウ

ヨーロッパブドウ(Vitus vinifera)はつる植物で、人類とは非常に古くから関わってきた歴史を持っています。ドイツは美味しいワインの産地としても有名ですね。ブドウの種類は非常に豊富ですが、今回はテーブルグレープと呼ばれる、そのまま食べられるものについてご紹介します。

私がかつて、プロのガーデナーになるために通っていた大学は、ブドウ畑に囲まれていたのですが、当時、誰もその畑に行ってブドウをつまみ食いしようなんて人はいませんでした。それは、このブドウがワイン用に栽培されているものだったからです。

ドイツでフレッシュなブドウを食べようと思ったら、スーパーに行ってイタリアやスペイン、ポルトガルなど、ドイツよりもずっと暖かい地域から輸入されてきたブドウを購入するのが普通でした。実は、フレッシュなままで食べるテーブルグレープの栽培は、寒いドイツではそれほど一般的ではなかったのです。ちなみに、ドイツのテーブルグレープは、一般に黄色いブドウか、青紫のもの。実は真ん丸ではなく、細長い卵形をしています。

私が日本に来た最初の年、ブドウに関していえば驚きの連続でした。

まずは、その価格の高さについて。それから美しい姿とそのクオリティについて。実一つひとつの大きさと完璧な丸い形にも驚かされました。でも、なんといっても一番衝撃的だったのがブドウの食べ方。食べるときに、タネを取り出すなんて‼︎ その日まで、私はいつもタネも一緒に飲み込んでいましたし、ブドウの皮を食べないなんて考えたこともなかったのです。もっとも、今では、日本では皮付きのまま食べるブドウは、ドイツで食べられているものよりずっと皮が薄いという違いも分かるようになりました。

ブドウ

ありがたいことに物事は変化するもので、現在では私の住んでいる南バイエルンのような寒い地域でも、テーブルグレープを育てることができるようになりました。ガーデンでは、家の壁沿いや、寒風が直接当たらないような場所で育てることができます。ブドウはつる植物なので、つるが這い登れるように、フェンスやトレリスなどが必要。肥沃な土と大きなコンテナを使えばコンテナ栽培もでき、日当たりのよい壁際で、壁から25~40cmほど離れた場所にコンテナを設置して育てます。ブドウにはたくさんの種類があるので、栽培に興味があるなら、地元のガーデンセンターで、気候に合ったオススメの品種を教えてもらうとよいでしょう。

ブドウはたくさんの魅力がある植物です。その美味しい果実は言うまでもなく、秋に美しく色づく葉、クラフトに使うのにも素敵なつる…。栽培にも広いスペースは必要ありませんし、うまく剪定すれば緑のカーテンにもなります。もっとも、欠点もあります。熟れ過ぎた実が地面に落ちれば家の前を汚してしまいますし、実を収穫する前に鳥たちがやってきて、みんな食べてしまうことも。実を鳥たちから守るためには、収穫期が近づいたらネットをかけるとよいでしょう。病気にも注意が必要です。

アロニア(Aronia)

アロニア

近年、ドイツではどんどん人気が高まっているサマーフルーツが、このアロニア・メラノカルパ(Aronia melanocarpa)。バラ科の耐寒性果樹で、2~3mほどの高さのシュラブに育ち、小さな白い花を房状につけます。秋には美しい紅葉も楽しめます。

アロニアはコンテナで栽培することもでき、土や環境にはそれほど気を使わなくても大丈夫。育てやすい果樹です。果実はカシスによく似ていますが、生で食べた場合はちょっと酸っぱくて苦く、カシスほど美味しくはありません。アロニアを味わうなら、ジュースやジュレ、リキュールなどに加工するのがベスト。カシスやリンゴ、マロニエの果汁と合わせても美味しいですよ。

さて、アロニアが近年になってこんなに人気になっているのはなぜでしょう?

それは、ポーランドやロシアのような東側諸国の研究により、この実には、健康によい、抗酸化物質と呼ばれる遊離基(フリーラジカル)が豊富に含まれていることが分かったから。これらは糖尿病に効果があり、さらにはガンの治療にも効果があるといわれているのです! そんな理由からも、現在注目を集めているサマーフルーツなのです。

サルナシ(Kiwi)

サルナシとキウイ
サルナシとキウイ。© StockFood / Krieg, Roland

フェンスや仕切り、トレリス、壁に沿って育てるのにぴったりなのがサルナシ(actinidia arguta)。小さなキウイそっくりの見た目をしたフルーツで、ミニキウイなどとも呼ばれ、キウイと同じように食べることができます。水はけのよい土壌を好み、育てるのはさほど難しくありません。

キウイがドイツで食べられるようになったのは最近で、このサルナシがドイツに入ってきてからのこと。私の兄は家でこのサルナシを育てていて、家の一部はサルナシのつるに覆われています。実は小さくてとても愛らしく、味がよいうえに、たくさんの実をつけてくれます。

大きく育つキウイは栽培が難しいので、栽培の前には必ず地元のガーデンセンターや専門家からアドバイスをもらうといいですよ。また、栽培する際には、交配のために少なくとも雌雄の株を1本ずつ植えるとよいでしょう。

サルナシは、マフィンなどのデコレーションにオススメ。焼き上がったマフィンの上にホワイトチョコやアイシングを掛けて、スライスを載せるだけでも、とっても可愛くなりますよ。イチゴの代わりにケーキのデコレーションにするのもいいですね。ほかに、ヨーグルトと一緒にそのまま食べたり、ジャムにしたり。ソルベなども夏にぴったりのスイーツです。

サマーフルーツの簡単美味しいレシピ

サマーフルーツのレシピ
© StockFood / Gorobina

さて、サマーフルーツの楽しみといえば、やっぱり食べること。そのまま食べてももちろんいいのですが、ケーキなどをつくればまた違った味わいが楽しめます。サマーフルーツの中には、マルメロやアロニアのように、そのままでは口にしにくいものもありますが、ひと手間かければとても美味しくいただけます。今回は、前回ご紹介したベリー類と、今回取り上げたサマーフルーツを使った簡単美味しいレシピをちょっとだけご紹介。新鮮なサマーフルーツが手に入ったら、ぜひトライしてみてくださいね。

ブルーベリーのビスケットロール

ブルーベリーロール
© StockFood / Friedrichs, Emma

ブルーベリーの最もシンプルなレシピの一つは、ビスケットロール。ドイツではとてもポピュラーな美味しいケーキです。ブルーベリーを冷凍しておけば、ふわふわの生地でくるりと巻いたロールケーキをいつでも味わうことができます。

<材料>

A(ビスケット)
卵3コ、砂糖80g、小麦粉(薄力粉)80g、ベーキングパウダー小さじ1

B(クリームフィリング)
生クリーム200cc、マスカルポーネチーズ130g、バニラシュガー大さじ1、砂糖大さじ1、冷凍のブルーベリー150g、レモンのしぼり汁1/2個分

<作り方>

初めにビスケットをつくります。

  1. 卵を白身と黄身に分けます。
  2. 黄身に砂糖を加え、泡だて器で白くもったりするまでよく混ぜます。
  3. 別の容器で、白身を角が立つまで泡立てます。
  4. 2と3をさっくりと混ぜ合わせます。
  5. 4に小麦粉とベーキングパウダーをふるい入れます。
  6. オーブンペーパーを敷いたスクエア型に流し入れ、180℃に予熱したオーブンで10~12分程度焼く。焼き上がったら型から外して冷ましておきます。

クリームフィリングの材料すべてを混ぜ合わせ、6の上に塗り、ロール型に巻いたらでき上がり。

ラズベリーとカシスのフルーツソース

<材料>

ラズベリー200g、カシス400g、カシスリキュール100cc、砂糖適量

<作り方>

バニラアイスとの相性が抜群のフルーツソース。

作り方はとても簡単で、材料をすべて鍋に入れ、砂糖を加え、火にかけるだけ。砂糖の量は、お好みの甘みとフルーツの熟し具合で調整しましょう。鍋を3分以上火にかけ、表面にできる泡を取り除いてでき上がりです。

マルメロのジュレ

マルメロ

マルメロからつくるジュレは、少し手間と時間がかかりますが、その分味は格別。たくさんつくって小分けにしておくと、長く保存して楽しむことができます。

<材料>

4~6㎏のマルメロの実、水2ℓ、ジャム用砂糖(Gelierzucker※の2:1)500g×2パック、漉すためのガーゼ2枚、250ccの蓋つきガラス容器8個

※Gelierzucker
ドイツでは一般的によく使われているジャム用砂糖。砂糖にあらかじめペクチンが含まれているため、簡単にジャムやジュレをつくることができます。果物と砂糖の比率に応じて、2:1や3:1などの種類が販売されています。手に入らない場合は、砂糖とペクチンで代用しましょう。

<作り方>

  1. マルメロの実は、前日の夜のうちに外側の細かい毛を取り除き、よく洗っておきます。
  2. 翌朝、下処理しておいた実を適当な大きさに薄切りにします。マルメロはとても固いので、この作業がとても難しくて大変!
  3. 大きな鍋に切った実を入れ、2ℓの水を加えます。
  4. 蓋をして、グラグラと沸騰させないように注意しながら1時間ほど煮ます。
  5. もう一つ鍋を用意し、ガーゼをかけて、4を汁ごとそこにあけて漉します。最低でも12時間かけて、ゆっくり漉しましょう。
  6. 翌日、ガーゼに残った分を軽く絞ります。
  7. 6を1.8ℓ量って鍋に入れ、ジャム用砂糖を加えて4分間、かき混ぜながら強火で煮立たせます。
  8. 4分経ったら、少し取り出して小さなお皿に入れてみましょう。1~2分ほどで少し硬くなってくるようならちょうどいい頃合い。
  9. できるだけ熱いうちに、煮沸消毒した蓋つきガラス容器に入れます。
  10. 容器に入れたら蓋をしっかり閉め、容器を逆さに置きます。容器を逆さにすることで、空気も滅菌され、密閉状態を作ることができます。そのため長く保存がきくようになります。
  11. 5分経ったら容器を元通りの向きに直して保存します。

サマーフルーツスムージー

スムージーは一番簡単にフルーツを味わえるレシピの一つ。好きなサマーフルーツを、牛乳と氷と一緒にミキサーにかけるだけで完成です。お好みで甘みを足してもいいですよ。

ヨーグルト&フルーツ

シンプルに楽しむなら、ヨーグルトにトッピングするのがオススメです。私はよく朝食ヨーグルトにフルーツを乗せて朝食にしたり、絞ったり混ぜ込んだりして変化をつけながら楽しんでいます。その時期に旬を迎えるフルーツを使うので、季節感たっぷりです。

ここで紹介したレシピはあくまでも一例で、他にもサマーフルーツを美味しく食べるアイデアはたくさんあります。美味しいフルーツが手に入ったら、ぜひそのまま味わうだけでなく、いろいろなアレンジも楽しんでみてくださいね。

Credit


ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/Friedrich Strauss/Stockfood, Stockfood

取材/3and garden 

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