今回注目するのは、心と体の滞りを取り払う、ジュニパーベリーの精油です。代謝を促し、むくみを緩和するジュニパーベリーは、この季節のボディケアにぴったり。ゼラニウムやグレープフルーツと合わせた、女子力のある華やいだ香りのボディオイルで、夏本番に向けて、心と体のお手入れをしませんか。

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魔除けの樹 ジュニパー(Juniper)

ジュニパー

ジュニパーベリーは、ジュニパー(Juniperus communis、ユニペルス・コンムニス、和名セイヨウネズ)の実のことをいいます。ジュニパーはヒノキ科、ビャクシン属の常緑針葉樹で、北ヨーロッパ、北アメリカ、アジア、北アフリカと広範囲にわたって自生し、変種や亜種の多い植物です。ジュニパーの類はコニファーの一種として庭づくりにも多用され、西洋では多くの園芸品種が生み出されています。

ジュニパーは、ヨーロッパの歴史の中で、悪い物から守る魔除けの樹、とされてきました。

新約聖書『マタイによる福音書』では、イエス・キリストの生誕後、養父ヨセフは天使のお告げを受けて、幼子の殺害を企むヘロデ王の手から逃れるため、聖母マリアと幼子イエスを連れてエジプトに向かいます。このエジプトへの逃避は、キリスト教美術でよく取り上げられるモチーフで、さまざまな画家がさまざまな解釈で絵に表していますが、こんな逸話も残されています。追手の兵士が差し迫った際、聖母マリアはジュニパーの若木を見つけ、その枝の下にとっさに幼子イエスを隠したことで難を逃れた、というものです。

ジュニパー

もっとも、この植物はじつはエニシダの仲間だったという説もあるのですが、中世ヨーロッパの人々は、針葉樹らしい清らかな香りもあってか、ジュニパーには人々を守る魔除けの力があると考えていました。魔女除けに戸口に枝を飾ったり、魔除けや疫病除けとして、ハーブを床にまき散らすストルーイングに使ったり、また、枝を燃やして、場の空気を清めもしました。

杜松の盆栽
杜松の盆栽。

日本では西日本に、近縁種のネズ(Juniperus rigida、ユニペルス・リギダ)が自生しています。ジュニパー同様に固く鋭い葉が、ネズミ除けに役立ったことから「ネズミサシ(鼠刺)」と名付けられ、そこから省略して「ネズ」と呼ばれるようになりました。庭木や生け垣に使われるほか、盆栽の世界では「杜松(としょう)」の名で仕立てられ、人気があります。また、漢方では、ネズの実は「杜松子(としょうし)」として、利尿薬に使われています。

ジンを風味づけるジュニパーベリー

ジン

ジュニパーはイチョウのような雌雄異株で、雄花と雌花が別々の個体に咲き、風の働きによって受粉します。その実は、ジュニパーベリー(juniper berry)と呼ばれていますが、針葉樹のジュニパーは裸子植物なので、実際は、松かさと同様の球果(cone、コーン)となります(松かさは果皮が乾燥して木質化した「乾果」で、ジュニパーベリーは果皮が多肉で汁液に富む「液果」)。ベリーと呼ばれていても、ラズベリーやブルーベリーのような、ベリー(berry)類とは根本的に異なります。

ジュニパーベリーの白い粉がかかったような緑色の実は、ゆっくりと、2年ほどかけて黒く熟していきます。

ジュニパーベリーは中世のオランダを発祥とするお酒、ジンを風味づけるスパイスとして使われてきました。いま世界的に、さまざまなハーブや果皮、スパイスなどで風味をつけた、クラフトジンの人気が高まっていますが、ジュニパーベリーはジンをジンたらしめる、必須のスパイスとして欠かせないものです。

ジュニパーベリーは伝統的な薬草療法として、つぶしてお茶にして飲まれますが、利尿を促し、尿路感染症の緩和や、腎臓の働きを高めるとされています(但し、腎臓疾患のある方、妊娠中の方のご使用はお避けください)。また、健胃作用がありますが、ジンも同様に、胃腸によいお酒とされています。

スパイスとして料理にも

ジュニパーベリー
ローズマリー、ガーリック、ジュニパーベリーを用いたウサギ肉の蒸し煮。

日本ではあまり馴染みがありませんが、ジュニパーベリーはスパイスとして、ローズマリーやローリエのように肉料理の臭み消しに利用され、特に、臭いの強いラムや、シカ肉、ウサギ肉などのジビエ料理で用いられます。また、ドイツでは郷土料理のザワークラウトの風味づけに使われます。日本でも手に入るスパイスなので、牛の煮込みなどに使ってみてはいかがでしょうか。

ドイツのザワークラウト
ドイツのザワークラウト。

浄化を促す精油

ジュニパー

ジュニパーベリーの精油のキーワードは「浄化」。身体を温め、循環を促して、余分な水分や老廃物を排出するデトックス作用があり、身体がすっきりするイメージです。むくみ解消や、夏の冷房から来る冷えの緩和に適当な精油です。

精神的にも、心を刺激して、後ろ向きの感情や気のよどみを取り除き、気持ちを切り替えるのに役立ち、自律神経を整えます。

ジュニパーベリーの精油は、果実(球果)から水蒸気蒸留法により抽出したものです。「ジュニパー」の名で販売されている場合もあり、中には、材料に葉や小枝が含まれているものもあります。材料を確認し、わかりづらい場合は信頼できるお店で相談してから購入しましょう。

どちらの精油も、腎臓疾患のある方と妊娠中の方はご使用にならないでください。また、長期間のご使用はお避けください。

ジュニパーベリーのスリミングオイル 作り方

ジュニパー

【材料】

  • ホホバオイル(クリア・精製したもの) 50ml
  • 精油:
    グレープフルーツ(フロクマリンフリー)4滴
    ジュニパーベリー 2滴
    ゼラニウム 2滴
    真正ラベンダー 2滴

【道具】

ビーカー、ガラス棒、遮光びん(50ml用)

【作り方】

ホホバオイルをビーカーに注ぎ、そこにそれぞれの精油を足していきます。精油によって粘り気が異なりますので、1滴ずつ落とすようにしましょう。

精油を入れたら、ガラス棒でくるくるとよく混ぜます。混ざったら、遮光びんに移して完成です。

びんのフタをオイル用のポンプにつけ替えると使い勝手がよくなります。内容とつくった日付を書いたラベルを貼り、日の当たらない場所に保管します。長期の使用を避け、早めに使い切りましょう。

夏らしい華やかさの中に、爽やかなジュニパーベリーがほのかに香る、フローラル系の香りです。ジュニパーベリーやグレープフルーツが代謝を促し、オイルで優しくなで上げるだけでも、身体が温まるのを感じると思います。

ジュニパー

【オイルマッサージの方法】

最初に、手のひらにオイルを少量とって温め、両首筋から鎖骨の溝に向かって、2~3回優しくなでおろします。この後、腕、脚、お腹と、単独で、もしくは、慣れたら組み合わせてマッサージをしてみましょう。

〈腕〉
オイルを足して温めながら腕全体になじませ、手の先から二の腕に向かって、てのひら全体を密着させるようにして、なで上げます。気になる部分は、老廃物を出し、脂肪を燃焼させることをイメージして、少し圧をかけながらもみほぐしてみましょう。最後は、脇の下に流すように。

〈足〉
オイルを足して温めながら足全体になじませ、両方のてのひら全体を使って、足を両側から包み込み、足先からなで上げます。気になるところは、てのひら全体でもんでみましょう。この時、膝の裏や、足の付け根に流し込むようにマッサージすると、むくみや疲れをとりやすくなります。

〈お腹〉
お腹周りも、 手のひら全体を意識して、「の」の字を書くようにオイルをよくなじませてから、気になるところをもんでみましょう。

終わったら、余分なオイルは優しく拭き取ります。オイルマッサージは、どの部分も、心地よいと感じる程度の圧で行います。強い力は必要ありません。特に、お腹周りや内ももは皮膚もデリケートなので、様子を見ながら少しずつならします。マッサージの前後には、白湯など、水分を十分に取りましょう。

*『おうちでアロマテラピー』シリーズ、その他のブレンドはこちらからどうぞ。

*精油は信頼できるアロマテラピー専門店で、実際に手に取り、購入しましょう。肌に合わない、気分が優れない、などと感じた時は使用を止め、医師にご相談ください。

*精油はアロマテラピー専門店での購入が安心です。下記に取り扱い時の注意をまとめましたので、ぜひご一読ください。

〈精油を使用する際の注意〉

・ 原液を皮膚につけない。ついたらすぐ石鹸で洗い流す。
・飲用しない。目に入れない。
・火気に注意する。
・医師による治療や投薬を受けている場合は、必ず当該医療機関に相談する。
・3歳未満の乳幼児には芳香浴以外は行わない。また3歳以上であっても使用量を半分以下にし、十分注意を払う。
・高齢者、既往症のある方は半分以下の量を目安に。妊娠中は体調を考慮し、芳香浴以外のアロマテラピーを楽しむ場合は十分注意する。

〈精油の保管・保存について〉

・直射日光と湿気を避け、火気のない冷暗所に保管する。
・子どもやペットの手の届かないところへ保管し、誤飲に注意する。
・開封後1年以内を保存期間とし、柑橘系の精油は半年以下を目安にする。
・香りに異変を感じたら使わない。

〈精油の品質について〉

・次の内容を箱やラベル、使用説明書で確認できるものを選ぶ。ブランド名、品名、学名、抽出部分(位)、抽出方法、生産国(地)または原産国(地)、内容量、発売元または輸入元。

Credit


アドバイス/Miho Takahata
AEAJ(公益社団法人 日本アロマ環境協会)アロマテラピー・インストラクター。香りとクラシック音楽が大好き。

文/萩尾昌美

〈参考文献〉
北野佐久子編(2005)『基本 ハーブの事典』東京堂出版
和田文緒(2008)『アロマテラピーの教科書』新星出版社
木田順子(2014)『あたらしいアロマテラピー事典』高橋書店
バーグ文子(2016)『アロマテラピー精油事典』成美堂出版

Photo/1)Melica/ 2)Martin Fowler /3)Dionisvera /4) Bernd Schmidt /5)Michelle Lee Photography /6)Marina Onokhina /7)Antimon  /8)Michelle Lee Photography /9)Melica /10)Madeleine Steinbach/Shutterstock.com

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