花や緑に親しみ、季節感に溢れる暮らしを訪ねる「私の庭・私の暮らし」。SNSで全国のガーデニング仲間とつながりながら、自身も千葉の自宅でDIYと庭づくりを楽しむ橋本景子さんが、お気に入りの庭をご案内します。今回は、群馬県伊勢崎市で18年ガーデニングを楽しむ山中ゆかりさんを訪問。初夏の最新写真とともに、庭づくり秘話をご紹介します。

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40坪の敷地を手作りで庭にする

ガーデン
庭の奥からガーデンの入り口方向を振り返ると、住宅街の中とは思えないほど、しっとりとした植栽が広がっていました。

のどかな住宅街の一角にある山中さんのお庭を訪ねたのは、5月だというのに35℃近くなるという予報の暑い日でした。ゆかりさんが自身の住まいのある100坪の敷地内に約40坪(約132㎡)の庭をつくり始めて18年になります。

手作りの庭
ご主人が17年前に作ったパーゴラは、昨年、窓や棚をつけてリニューアル。パーゴラの中は、まるでショップのようにディスプレイされて、天井は巨峰の葉がグリーンのスクリーンに。やがて垂れる房に袋がけするのは、几帳面なご主人の担当です。

自宅を新築し、さて次は庭をつくろうと思っていた矢先、突然訪ねて来た造園屋さんから「変形三角形の土地で、面白い庭ができそうだから、ぜひつくらせて欲しい」との申し出。「そんなに面白いのなら自分たちでやりたい!」と始めた庭づくりです。まず、ご主人と2人で雑誌などを参考にして、庭の真ん中にアプローチをつくって、ヤマボウシなどの木を植えました。素敵に見えたらいいなぁと、次はDIYでパーゴラつきのデッキを作って真っ白にペイントし、真っ赤なバラが咲く‘カクテル’を這わせたのです。

周囲には黄色やピンクの花を植え込みました。「この地域で一番のローズガーデンを目指していて、その頃はなかなかいい感じだと思っていたの。でも、まるでちぐはぐなガーデンだったわ」と当時を思い返して、ゆかりさんは笑います。

ミニパーゴラ
庭の突き当たりのコーナーにはミニパーゴラを作り、友達から譲り受けたというバラを誘引。

庭仕事が大好きで、仕事が終わってからも、街灯のわずかな明かりの下で夜の23時頃までかけて寄せ植えを作ったりしているうちに、気がつけばバラは70株を超えるまでに。数が増えたバラを枯らしてはいけないからと、農薬を使って管理していたら、ある日、農薬がかかった蛾を食べたカマキリが、突然もがき苦しんで死んでしまうのを目の前で見てしまったのです。そうしたショッキングな出来事をきっかけに、当時話題になっていた無農薬栽培の世界に進んで行ったのでした。

無農薬栽培の実践と雑木の庭への憧れ

庭の通路
広い通路の脇には雑木を植え、大好きな宿根草が重なって見えるように植栽。

当時、バラをオーガニックで育てる方法を記して人気だった梶みゆきさんの著書『バラの園を夢見て』を読んで、自身もいろいろな無農薬栽培を試しているうちに、森のように自然な庭をつくる素敵な女性に出会ったゆかりさん。バラと雑木の調和を考えるようになりました。

林の中のような庭
小低木をうまく組み合わせて、その間に低い背丈の宿根草を植え、まるで林の中にいるような爽やかな風景に。

木々の隙間から見える部屋の灯りのことや、部屋の中から見える庭木の涼しげな景色を大切にしていたら、庭には自然と雑木が増えて、バラは減っていきました。そして、暮らしの中に好きで飾っていた雑貨も庭にプラスしてみたのですが、なんだか混沌とし、今度は憧れの女性の目に自分の庭はどう映っているのか意識するようになって……。気がつけば、自分が目標とする庭の到達点がどこなのか全く分からなくなって悩む時期もあったと言います。

リビングの雑貨
リビングから雑貨越しに見えるパーゴラの景色。ブドウの葉が茂ると差し込む光がグリーンになるなんて素敵!

自分の好きが詰まった心地よい空間へ

グレーの壁とピンクのバラ
雑貨が大好きなゆかりさんらしく、庭のコーナーごとに数々の雑貨とバラがコラボ。ピンクのバラは実生の株で、グレーのペンキとよく似合っています。

そうやって日々、試行錯誤しているうちに、10年ほど前のある時、「自分の庭だから、自分の好きなものを植えて、好きな雑貨を飾ればいいんだ」と気がついたのです。それ以来、ゆかりさんの庭は、ゆかりさんらしさが詰まった、自身もリラックスできる心地よい空間になり、日々庭づくりを楽しんでいます。

夫のDIYを味方に庭を次々とグレードアップ

手作りの室外機カバー
室外機カバーが壊れてしまったけれど、庭の構築物の補修に忙しいご主人を気遣い、「私がやってみるか」と、描いたデザイン画は、憧れのガーデンキッチン風でした。しかし、作れるはずもなく放置していたそのデザイン画を見たご主人が、「これ素敵じゃん、俺作るよ」と張り切って2週間ほどで完成。本物の蛇口やホウロウの洗面器を使った本格仕様です。

庭での担当は、DIY はご主人、植栽はゆかりさんと、夫婦で庭づくりをする理想的な役割分担に。「こんなの素敵よね〜」と雑誌などを見せてはご主人を洗脳。そうやって次のDIY作品のアイデアや創作意欲へとつなげているそうですが、時には意見が対立することもあるとか。

間仕切り
リビングとキッチンカウンターとの間に、小さなガラスや扉を組み合わせて間仕切りを作ったのもご主人。冷暖房が効きにくくはなったものの、視線を遮ることができて大満足。

ある時、植え込みや通路の流れを変えたいのに、ご主人の賛同を得られず、手伝ってもらうことも叶わなかった、ゆかりさん。自らが地面を40cm掘って、大きなガラと砕石を入れ、転圧(上から力を加えて密度を高める作業)し、レンガブリックを敷くという大仕事をやってのけました。「もう二度とできないわ」と思い出を語るゆかりさんですが、長いガーデニングライフの間に、ご主人の操縦法もずいぶん腕が上がったみたい。これも立派なガーデニングのテクニックですね(笑)。

庭づくりは日々の暮らしの充実に必須

パーゴラのバラ
庭へと誘うパーゴラの赤いバラ‘ジプシー・ボーイ’は、そろそろ終盤。次のシーズンは、山アジサイなどが主役となります。

週に3日は仕事に出ているゆかりさんですが、今では、「庭を見ないと頭がおかしくなるほど、自分の庭が愛おしくて。毎日の作業で部活みたいに体はくたくたに疲れるけれど、充実感がすごくて、心が満たされるのよ」と明るく言います。とはいえ、ゆかりさんの庭がある群馬の気候は、夏は気温が高く、冬は赤城おろしが吹きすさぶという、植物には過酷な環境です。そんな中でのガーデニングは、時には音を上げそうになるとか。

ガーデン
アジサイ‘伊予獅子てまり’とキョウガノコ、ミヤコワスレが混ざり咲いて。可憐で爽やかな組み合わせ。

昔、庭をロックガーデン風にしようとコニファーなどを植えていたところ、5mほどに成長した木が一晩ですべて斜め45度に倒れたり、オープンガーデンの直前に、仕事から帰ってきたら、庭の真ん中でフェンスが倒れていたりと、大風によるハプニング話は事欠きません。

「ガーデニングって、楽しいことは10%で大変なことが90%の、例えるなら山登りみたいな趣味ですよね。こんな大変な思いをしても、ほんの少しの嬉しさを経験するために、毎日黙々と続けるものなのよね」とゆかりさんは言うけれど、彼女の大変さって、ちっとも辛そうじゃないところが、私にも共感できるポイントです。

インスタグラマーさんの絵になるシーンづくり

ガーデン インスタグラム

彼女は、今ではフォロワー2万人を超える大人気のインスタグラマーさん。毎日の更新を楽しみにしている方がたくさんいます。今度はどんな新しい場面がお披露目されるのか、いつも変化する庭から目が離せません。

ガーデンベンチ

ロマンティックな白いガーデンチェアーの前に置いた「チャイブ」の花は、インスタでのID(chaives022)の由来となっているウェルカムフラワーです。ジョウロと帽子を置いて、「ちょっと休憩中」というイメージでつくったコーナーでしたが、お友達のアドバイスで、スコップを2本置いてみたら、さらにストーリーが生まれる場面になりました。

インスタグラマーの庭

とげなしの白バラ‘群星’が優しく包むシーティングアーバーの周りには、たくさんの植物ポットが。ここがポットだらけのポッティングガーデンだった頃、冬場にお隣のガスボンベの軍団や積み込まれたゴミが見えるのに耐えられなくて、一念発起。インスタ映えまでも意識して、ご主人に構造物を作ってもらいました。「昨日までのコンプレックスを、今日からは見せ場に変える!」。これもゆかりさんの名言です。

Credit

写真・文/橋本景子
千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも23,000人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどう作ろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/
インスタグラム kay_hashimoto

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