花や葉、実、トゲなどに個性的な美しさを持つ品種が数多く存在する原種系のバラ。独創的な庭づくりにも活用したいガーデン素材です。今回は、そんな原種系のバラについて、他の草花とも合わせやすく美しいオススメの品種とその特徴について、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」のオーナーで、園芸家の太田敦雄さんにご案内いただきます。

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ナチュラルにも独創的にも演出自在。さりげなく個性的な原種系バラ

前回に引き続き、今回もガーデニング素材としても多様で個性的な美観を庭に提供してくれる、原種や原種に近い品種のバラ(以下、原種系バラと略称)をご紹介していきます。

ロサ・ベイシーズパープルローズ
日本にも自生するハマナスの血を引くロサ ‘ベイシーズパープルローズ’。20世紀に作出された品種ですが、しべの目立つ一重咲きやプラム色の茎など、原種らしい雰囲気を強く漂わせる品種です。

今回は、前回の記事写真でも登場したものを中心に、個性が際立ったオススメの原種系バラについて各種解説していきます。本記事では、厳格な「原種」という枠にとらわれず、上写真の‘ベイシーズパープルローズ’ の他にも、通常、オールドローズに分類されるチャイナ系の旧い品種 ‘ムタビリス’ といった、原種バラの魅力を知るきっかけになり得る園芸品種も含めて、包括的に取り扱っていきたいと思います。

シャクヤクとバラ
妖艶な芍薬の背景に中国原産のロサ・ファレリ・ペルセトーサを組み合わせた、シノワズリ(中国趣味)を演出した植栽例。原産地をヒントに植栽を解くことで、見た目以上の説得力を持ちますよね。

セレクト1
ロサ・グラウカ

ヨーロッパ広域のやや山岳寄りの地域を原産とする、ダークな葉色の美しい原種です。蝋を葺いたような灰赤紫色がとても珍しく、ガーデニング素材としても一級品のカラーリーフ低木といえるでしょう。

ロサ・グラウカ

ピンク色の一重咲きの花と、ニュアンスのあるダークな葉色とのコントラストもよく、植栽の中でもとてもよく目立ちます。開花期は現代バラのハイシーズンより少し早めで、関東平野部では、ゴールデンウィーク明け頃に咲きます。他のカラーリーフ樹木の新緑と合わせてもとても見映えがよいです。

ロサ・グラウカ

耐寒性も強く、夏は冷涼な気候下で葉色が冴えるため、寒冷地でのガーデニングにも絶好のカラーリーフ素材です。オレンジ色の大ぶりなローズヒップがたくさん実り、オーナメンタルにも楽しめ、秋の季節感も演出してくれます。花、葉色、実と見どころも多く、たいへん観賞価値が高いバラです。

ロサ・グラウカ
半日陰エリアでマルバノキ’恵那錦’ と組み合わせた植栽例。

ロサ・グラウカは日本の高温多湿な夏がやや苦手で温暖地では夏に葉が落ちやすいです(秋には復活します)。温暖地では強い日向を避けて、風通しのよい半日陰に植栽するとよいでしょう。

温暖地向けとしては、ロサ・グラウカとロサ・ルゴサ(=ハマナス)との交配により作られた品種、ロサ ‘カルメネッタ’がオススメ。グラウカの葉色を継承しつつ、より花が大きく耐暑性に優れた原種系交配種です。

【DATA】
■ 学 名:Rosa glauca(syn. Rosa rubrifolia
■ バラ科
■ 系 統:Sp スピーシーズ(原種)
■ 主な花期:春(一季咲き)
■ 樹 高:2m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:やや弱い
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト2
ロサ・ファレリ・ペルセトーサ

細かい針棘にびっしりと覆われた小豆色の枝と、サンショウの葉に似た形状の、とても珍しい灰青緑みの葉色が渋い雰囲気満点の中国原産種。

ロサ・ファレリ・ペルセトーサ

原種らしいピンク色の一重花も楚々として美しいです。花と灰青緑みの葉や小豆色の茎など、各部位の色のコントラストもよく、野趣とデザイン性をバランスよく兼ね備えた原種です。枝がしなやかで、お椀を逆さにしたような、ふんわりとしたドーム形の樹形に育ちます。

ロサ・ファレリ・ペルセトーサ

温暖地では強い日向よりは半日陰の環境で、やや山野草に近い趣で植栽すると猛暑期に弱ることなく育てやすいです。前年に伸びた枝に開花する性質がありますので、剪定は花後の梅雨頃に行い、秋までに枝を伸ばして樹形を整えるとよいでしょう。

【DATA】
■ 学 名:Rosa farreri f. persetosa
■ バラ科
■ 系 統:Sp スピーシーズ(原種)
■ 主な花期:春(一季咲き)
■ 樹 高:1.5m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト3
ロサ・オメイエンシス・プテラカンサ(=ロサ・セリケア・プテラカンサ)

中国南西部~ネパールにかけての標高の高い地域を原産とし、新枝にびっしりと連なっているようにつく、透明感のある大きな赤いヒレ状のトゲが強烈な個性を放つ、まさに「カッコいい」という形容詞がぴたりとくる原種です。

ロサ・オメイエンシス・プテラカンサ

関東平野部ではゴールデンウイーク頃に咲く早咲きの白一重花やサンショウに似た小葉も原種らしい野趣があり、植栽の中でも浮きすぎず、適度にその存在感を発揮してくれます。

ロサ・オメイエンシス・プテラカンサ

凶暴なトゲのオーナメンタルさや色みを生かして新感覚のカラーステムプランツとして活用してみてはいかがでしょうか。日本の高温多湿な夏がやや苦手です。温暖地では西日の避けられる半日陰で育てるとよいでしょう。

【DATA】
■ 学 名:Rosa omeiensis f. pteracantha(syn. Rosa sericea f. pteracantha
■ バラ科
■ 系 統:Sp スピーシーズ(原種)
■ 主な花期:春(一季咲き)
■ 樹 高:2m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト4
ロサ・ロクスブルギィ(=イザヨイバラ)‘オーレオマルギナツス’

中国南西部から東南アジア原産で、「イザヨイバラ」という和名でも知られる原種、ロクスブルギィの黄覆輪葉選抜種です。

イザヨイバラ

原種とは思えない、花弁がとても多い繰り返し咲き性の大輪花で、黄覆輪斑の入る葉や棘鉄球のようなつぼみ、冬の独特な枝姿など、花以外の見どころも多く、日本の気候にも合って病虫害も少なく育てやすい、オススメの原種バラです。

イザヨイバラ‘オーレオマルギナツス’

原種では珍しい花弁の多い八重咲き花容と繰り返し咲き性があり、「バラの花」という視点で見ても美しい逸品なのですが、日本ではむしろ「斑入り植物」の範疇で伝統園芸の分野で珍重されてきました。

イザヨイバラ

花が完全な円状に開かず、少し欠ける花姿からついた「十六夜(いざよい)」バラという和名も風流ですね。またイザヨイバラは、冬の落葉期に旧枝の皮が剥がれてちょっと白骨を思わせる白い枝姿となります。

冬のイザヨイバラの枝

四季を通じて観賞ポイントが移り変わる、多芸で面白い素材です。自然樹形で自立し、まとまった姿に育ちます。

【DATA】
■ 学 名:Rosa roxburghii ‘Aureo-marginatus’
■ バラ科
■ 系 統:Sp スピーシーズ(原種)
■ 主な花期:春~秋(繰り返し咲き)
■ 樹 高:1.5m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト5
ロサ・ムルチフロラ・ワトソニアナ (=ショウノスケバラ)

別名「金絲薔薇」「庄之助薔薇」とも呼ばれる、ノイバラの変種とされる日本原産種です。

ショウノスケバラ

バラの仲間とは思えない、ヤナギを連想させるような細長葉がとても涼しげで風流な趣があります。 その葉には斑のような不規則なかすれ模様が入ったり、よじれたり縮んだりして、なんとも不思議な葉芸を披露するのも面白いところ。カラーリーフとはまた違う、葉の観賞価値を持った珍種バラですね。本種も、「バラ」という範疇ではなく、むしろ葉芸を愛でる山野草の分野で珍重されてきました。

ショウノスケバラ

優美な花を楽しむバラ園芸の価値観とは対極的な存在感を放つバラで、ガーデニング素材としてはまだそれほど普及していませんが、それだけに、さりげなく植えられていると「おっ!」と目を引きます。半日陰のナチュラル植栽などにも違和感なく似合います。日本原産だけに、日本の気候にも合い、育てやすいです。

【DATA】
■ 学 名:Rosa multiflora var. watsoniana
■ バラ科
■ 系 統:Sp スピーシーズ(原種)
■ 主な花期:春(一季咲き)
■ 樹 高:1.5m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト6
ロサ・スピノシッシマ&ロサ・スピノシッシマ ‘ダブルホワイト’

ロサ・スピノシッシマは、西~南ヨーロッパの比較的乾燥している地域を原産とする、たいへん美しく観賞価値の高い原種です。

ロサ・スピノシッシマ
一重咲きの原種、ロサ・スピノシッシマ。Diana Taliun/Shutterstock.com

原種スピノシッシマと、その八重咲き品種のロサ・スピノシッシマ ‘ダブルホワイト’。ともに、関東平野部ではゴールデンウィークの頃には開花する早咲き種です。

ロサ・スピノシッシマ ‘ダブルホワイト’
ロサ・スピノシッシマの八重咲き品種 ‘ダブルホワイト’。Alina Kuptsova/Shutterstock.com

ふっくらした花容で黄金色のしべとのコントラストも美しい白花を咲かせます。スピノシッシマ種は、その花の美しさでもオールドローズ愛好家を中心に人気の高い原種ですが、花以外にも多彩な見どころがあり、いろいろな視点から楽しめます。

スピノシッシマの実
スピノシッシマの実。ChWeiss/Shutterstock.com

サンショウの葉によく似た小葉は、マットな青緑みを帯びて渋いリーフプランツとしても存在感がありますし、小豆色みを帯びた新枝や、新枝にびっしりと生える赤い針棘、初夏にはダークチェリーのような大ぶりな黒いローズヒップも楽しめ、原種っぽい野趣と優美さを多角的に兼ね備えています。

スピノシッシマ系のバラはやや高温多湿が苦手です。暖地では西日と強い直射が避けられる、風通しのよい場所に植えるとよいでしょう。夏場冷涼な地域では夏の葉落ちも少なく、きれいに育てやすいです。寒冷地でのガーデニングにぜひオススメの原種です。

【DATA】
■ 学 名:Rosa spinosissimaRosa spinosissima ‘Double White’
■ バラ科
■ 系 統:Sp スピーシーズ(原種)
■ 主な花期:春(一季咲き)
■ 樹 高:1.5m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:やや弱い
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト7
ロサ・キネンシス ‘ムタビリス’

ヒラヒラした一重咲きの花弁がまるで蝶が舞っているかのような花容となる、作出年不詳の古いチャイナ系の品種です。

ロサ・キネンシス ‘ムタビリス’

四季咲き性があり、長い期間花を楽しめます。咲き始めのクリームイエロー~アプリコット~淡ピンク~濃ピンクへと移ろっていく花色の変容がとても美しく、たくさん開花している時期は1株で多色咲きのような不思議な雰囲気を漂わせます。原種に近い野趣を残している品種なので宿根草などとも合わせやすいですし、現代バラと合わせても多様性を表現できます。

ロサ・キネンシス ‘ムタビリス’
サンブカス・ニグラ ‘ブラックレース’ の黒紫葉と合わせて。

本種 ‘ムタビリス’は、チャイナ系のバラの中でも比較的有名で手に入りやすい品種です。‘ムタビリス’に似たヒラヒラした花容や、移ろう花色のよりレアな原種や品種もありますので、‘ムタビリス’を手掛かりに奥深いチャイナローズの世界を探ってみるのも面白いでしょう。

【DATA】
■ 学 名:Rosa chinensis ‘Mutabilis’
■ バラ科
■ 系 統:Ch チャイナ
■ 主な花期:春~秋(四季咲き)
■ 樹 高:1.5m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向

セレクト8
ロサ ‘ベイシーズパープルローズ’

最後は日本にも自生するロサ・ルゴサ(=ハマナス)の系統の園芸品種を。

ロサ ‘ベイシーズパープルローズ’

本種ロサ ‘ベイシーズパープルローズ’ は、20世紀後半に作出された品種ですが、ハマナス由来の原種的な味わいが深い逸品です。濃厚な赤紫色の、ハマナスに似た比較の大輪の一重咲き花容で、存在感たっぷりの黄色の雄しべとの対比がとても妖艶な雰囲気を漂わせます。

ロサ ‘ベイシーズパープルローズ’

新枝はダークな紫褐色となり、カラーステムプランツとしても楽しめ、キャラ濃く、かつ原種由来の観賞価値を感じさせるバラです。

ロサ・ベイシーズパープルローズの紅葉
落葉前の秋の黄葉。黄~橙~茜色への複雑な色みを呈します。

ルゴサ系特有の返り咲き性、枝を覆い尽くす針棘、美しい黄葉、強健さなどの諸々の野生的魅力に加え、深い紫赤の花弁、黄金色の妖艶なしべ、紫色のステムといった、大人びた色気も兼ね備えています。

【DATA】
■ 学 名:Rosa ‘Basye’s Purple Rose’
■ バラ科
■ 系 統:HRg ハイブリットルゴサ (1968年作出)
■ 主な花期:晩春~秋(繰り返し咲き)
■ 樹 高:2m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向

原種系バラ

「個性とは、無数の選択行為の集積から浮かび上がってくる他者との差異の諸相である。」
(太田敦雄  園芸家 1970 – )

Credit


写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科卒業後、前橋工科大学で建築デザインを学ぶ。趣味で楽しんでいた自庭の植栽が注目され、建築家とのコラボレーションワークなどを経て、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書に『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)。
オンラインショップでは、レア植物や新発見のある植物紹介でファンを増やしている。
「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp
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