マンションのバルコニーもガーデニングを一年中楽しめる屋外空間です。都会のマンションの最上階、25㎡のバルコニーがある住まいに移って2019年で27年。自らバラで埋め尽くされる場所へと変えたのは、写真家の松本路子さん。「開花や果物の収穫の瞬間のときめき、苦も楽も彩りとなる折々の庭仕事」を綴る松本さんのガーデン・ストーリー。今回は、一斉に花開く嬉しい季節の楽しみ方をご紹介します。

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バラの最盛期を迎えて

ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール
バルコニーで咲く‘ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール’。

早いものでGarden Storyへ「ルーフバルコニー便り」を綴り始めて一年。再びバラの最盛期を迎えた。例年5月はバラ三昧の日々を送っている。四季咲きの苗も多いので休眠期を除いてほぼ一年中花を見ることができるが、いっせいに花開くこの季節は格別だ。

14年前に出版したフォト&エッセイ集『晴れたらバラ日和』の中で、バラとの日々を「バラ遊び」と名付けた。今もその遊びは続いている。

連載第1回のバルコニーをバラ園に変えたストーリーはこちらをご覧ください。

バラの宴

ローズパーティー
バラの宴は午後5時から始まる。夕陽がスポットライトのようにバラにあたる時間だ。

客人を招き、バルコニーで花見の宴を開いて20数年が経つ。古くからの友人たちなので気の置けない会だ。最初の数年は張り切って料理を作っていたが、宴が何回か続くと疲れ果てる。何よりも久しぶりに会った友とゆっくり話ができないことが残念だった。

山菜
越後湯沢からバラの宴当日に届いた山菜の数々。大学時代の写真仲間の会に、湯沢在住の先輩から贈られた。

そこでお誘いの文面に「飲み物、料理、お持ち寄り大歓迎」の一行を忍ばせた。結果は大成功! それから毎年バルコニーのテーブルには、友人たちの手料理、気に入った店の惣菜、さらに地方からのお取り寄せの珍味が並ぶようになった。

古伊万里の器

室内のテーブルに用意するのはシャンパンとちょっとした前菜。あとは長年集めた古伊万里の食器やヨーロッパで求めたアンティークのグラス類で、いずれも空の器だ。

サンドイッチ
友人が持参した、自家製のパンで作ったサンドイッチ。‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’の花を添えて。

各自が好きな皿や鉢に料理を盛り付け、飲み物と小皿を持ってバルコニーに出る。そこでの会話はバラと食べ物に始まり、多岐にわたり、再びバラと美味を愛でるといった具合だ。

ローズパーティー

何よりも乾杯のシャンパングラスに花びらを浮かべて飲み干す恒例の行事が大好評。「最高の贅沢」と褒められるのが嬉しい。長年無農薬でバラを育てているご褒美ともいえるだろう。「本日は‘コレット’です」「‘レイニー・ブルー’です」と浮かべたバラの名前とともに、友と集えることを祝している。

バラのカード

バラのカード

バラの季節は忙しい。つぼみについた虫を取り除き、花がらを摘む。と同時に陽の具合や咲き加減の良い花を見つけると、すかさずカメラを向ける。写真は自然光のもとで、花を瑞々しく撮ることを心掛けている。早朝や夕方の斜光で撮ることが多い。あえて逆光で花に露光を合わせたものなど、光を味方につけるのがコツだ。

通常のL版の写真プリントをポストカード大の2つ折りの台紙に張り込めば、簡単にたくさんの種類の花のカードができる。手作りの素朴なものだが、生写真の良さが際立つ。

バラのカード

お気に入りの写真を印刷して何種類かのカードも作ってみた。2つ折りのグリーティングカードとポストカード。いずれも5枚1組にして、それぞれのバラの名前の由来を書いた紙を添えている。

バラのカードはちょっとした挨拶状や、何かのお礼に手渡したりしている。そうしたカードはさまざまに旅をして、意外なところで出くわすことがある。初めて訪れたオフィスの壁に留められているのを発見するなど、カードならではの神出鬼没さでドキリとさせられることも多い。

クレオパトラ風呂

バラ風呂

このところ5月に真夏のような暑さが続き、お披露目を待たずにはらはらと散るバラも多い。散る寸前の花びらを集め、水を張ったガラス鉢に貯める。その日集めた花弁は、夜にバスタブのお湯に浮かべるのだ。ほのかな香りと、花びらが肌にふれる感触が心地よい。

その時の花によって「ロココ風呂」「スピリット・オブ・フリーダム風呂」と名付ける。やがて「ミックス風呂」となって、色や香りもさまざまに混じり合い、むせ返るほど。そこで私は「気分はクレオパトラ!」とひとり悦に入っている。

マンションの狭いバスルームなので、あくまで「気分は……」なのだが。

バラの花びら

この雰囲気を伝えると、帰り際に花びらを所望する客人がいる。後日感想を聞くと、異口同音に「クレオパトラになったみたいだった」との答えが返ってくる。それほどクレオパトラとバラ風呂は知られているらしい。

エジプトや古代ローマでは、バラの持つ薬効や美容効果が珍重されていた。僧院などの薬草園で栽培されていた記録もある。思い付きで始めたバラ風呂だが、バラの季節に疲れ知らずでいられるのは、毎日のバスタイムのおかげかもしれない。

自宅のバラならではのバラ遊び

ローズパーティー
シャンパンと前菜からスタートする宴のテーブル。この時期だけのささやかな贅沢。

シャンパンに花びらを浮かべたり、クレオパトラ風呂を楽しんだりが可能なのは、20数年にわたり無農薬でバラを育てているからこそ。市販の切り花は農薬漬けといっても過言ではないので、残念ながらあまりオススメできない。庭やベランダに数株の苗があれば、バラ遊びの日々を楽しむことができる。ぜひバラ遊びをオススメしたいと思っている。

夜のローズバルコニー
夜のバルコニー。バラがライトアップされ、幻想的な雰囲気に包まれる。

季節のバルコニー便り

これまでご紹介してきた松本路子さんのルーフバルコニー便り。季節ごとの楽しみも併せてご覧ください。

ユリ

5月 マンションで叶える小さなバラ園!初めの1歩
6月 初夏に輝くユリとアジサイの思い出
7月 芸をする朝顔
8月 マンションで叶える野菜&果実・夏の収穫

観葉植物

9月 バルコニーとリビングを結ぶ観葉植物たち
10月 秋バラの楽しみ
11月 ベルギーゆかりのバラたち
12月 鉢植えバラの冬仕事
1月 レモンの収穫

桜

2月 バルコニーで楽しむ3種の桜
3月 早咲きのバラをめぐる物語〜その1
4月 早咲きのバラをめぐる物語〜その2

バルコニーガーデン

Credit

写真&文/松本路子
写真家・エッセイスト。世界各地のアーティストの肖像を中心とする写真集『Portraits 女性アーティストの肖像』などのほか、『晴れたらバラ日和』『ヨーロッパ バラの名前をめぐる旅』『日本のバラ』『東京 桜100花』などのフォト&エッセイ集を出版。バルコニーでの庭仕事のほか、各地の庭巡りを楽しんでいる。2018-19年現在は、造形作家ニキ・ド・サンファルのアートフィルムを監督・制作中。

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