空気が温むこの頃。野山ではさまざまな緑が芽吹き始めます。そのなかにはふきのとうやわらび、ぜんまいなど春の旬を代表する「山菜」があります。料理人の間では「春は苦みを盛れ」と伝えられ、山菜のほろ苦さはこの季節ならではの旬の味です。会津で生まれ育ち、山菜摘みは幼い頃から遊びの一つだったという郷土料理研究家の本間のぞみさんが、山菜摘みのルールや美味しくいただく基本を教えてくれます。

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山菜摘みのルール。謙虚さが肝心。

山菜
bonchan/Shutterstock.com
  1. 採ってよい場所か確認しよう
    山菜は山の恵みですが、山を所有し、山菜を育てている農家の方もいるので、摘む場所が禁止区域でないかを確認しましょう。立て看板をチェックしたり、近隣住民に確認したりと、採ってよい場所かどうか調べましょう。
  1. クマに注意!
    山菜が芽吹く頃は、クマが冬眠から覚める頃です。都会に暮らしていると、クマとの遭遇をイメージできないかもしれませんが、山菜の生えているようなところは、そもそもクマやマムシなど野生動物の生活エリアです。一人では絶対に行動しないことを心がけ、大きな話し声を上げるか、ラジオをかけて歩くと、動物も近寄らないといわれています。
  1. 食べられるものかよく確認を
    ドクゼリなど、山菜によく似た毒草もあるので、十分に調べてから収穫しましょう。山菜採り名人がガイドしてくれるツアーなどもあるので、初めての場合にはよく知っている人と山に入った方が何かと安全です。
  1. 根こそぎ採らない
    山菜は地上部の食べられる部分だけを採り、根っこごと採らないようにします。根っこが残っていれば、シーズン中にもう一度再生して次の人が採れるかもしれませんし、翌年以降もずっと収穫が楽しめます。他の人のことも考えて、大事にしましょう。
  1. 欲を出さず、謙虚に
    自宅でおいしく食べられる分だけを収穫しましょう。もっともっとと、山へ入っていくうちに遭難するケースや、がけっぷちなど危険な場所に生えているものを採ろうと無理をして命を落とすことも。山菜採りは謙虚さが肝心。収穫する時も周りの草木を傷めないよう注意し、当然のことですがゴミなどはすべて持ち帰りましょう。

裏山で遊びながら覚えた身近で美味しい山菜・野草の種類

菜の花

会津の春は遅く、山菜や野草が本格的に採れるのは4月が終わる頃。ゴールデンウィークは毎年、子供たちを連れて会津に帰省します。その頃の会津は春満開の芽吹きシーズンで、家の畑も裏山も土手もすべてがやわらかな黄緑色に染まります。私は幼い頃、よく家の裏山や土手で野草や山菜、きのこやあけびなどを摘んで遊んでいました。とりあえずいろいろ摘んで持って帰ると、母が食べられるものを選り分けてくれました。特に山菜のこごみは橋の影の土手にたくさん生えていたので、たくさん摘んでは自分で茹でて、マヨネーズしょうゆをつけたものをおやつに食べていました。少し見つけにくいわらびは我が家のごちそうで、山で見つけると嬉しかったものです。夕飯に自分が採った山菜や野草が並ぶのは、なんだかとても誇らしい気分になりました。そうやって遊びながら、自然と食べられる山菜や野草を覚えていきました。

見つけやすい山菜・野草の種類とアク抜き方法

山菜

山菜の中には山の奥の限られた場所にあり、見つけるのが難しいものもあります。そういう山菜は、山菜採りの名人にお任せすることにして、ここでは比較的見つけやすい山菜や野草をご紹介します。山菜や野草の苦みや渋みは、これから育つ芽が、鳥や虫に食べられてしまわないようにするためといいます。人も食べすぎるとお腹をこわしてしまうこともあるので注意しましょう。美味しくいただくためのアク抜きの方法もご紹介します。

基本の3通りのアク抜き方法

<水にさらす>

芽吹き野菜の基本は、まず水にさらすことです(うどは1%の酢水)。たっぷりの水に10分ほどさらすことで、アクを抜く効果と同時に、食感も良くなります。

  • うど、のびる、こごみ、うるい、せりなどは水にさらした後、生で食べられます。

<揚げる>

油で揚げると、香りは残しながらアクを飛ばすことができます。

  • アクの少ない、たらの芽、ふきのとう、こしあぶら、よもぎ、こごみなどが向いています。

<茹でる>

20秒くらいずつ湯がいてざるにあげ、塩をふって粗熱が冷めるまでおきます。

  • アクの強いわらびやぜんまいは重曹を入れて湯がきます。ふきは米のとぎ汁や米ぬかで湯がくと、筋取りの際に指がアクで黒くなりません。

菜花/アブラナ科の一年草

菜花

<採れるところ>

土手などに自生していますが、栽培もされています。菜花・アブラナ科全般の植物が開花する前の若い葉やつぼみ(茎たちとも呼ぶ)、菜の花・西洋アブラナの柔らかな穂先を摘み取った部分をいただきます。

<摘み方>

手でポキポキ折れるところを摘むと、柔らかく筋張っていません。

<調理法>

揚げる・茹でる/茎とつぼみを分けて、茎から茹でます。

うど/ウコギ科タラノキ属の多年草

うど
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<採れるところ>

山の斜面で水気の多いところに生えます。自生の山うどは緑色で硬いため新芽を食べます。販売されている白いうどは、トンネルなど日の当たらない場所で栽培されたもので、茎まで柔らかく生食もできます。

<摘み方>

根元を少し掘り、つけ根からナイフなどで切り取ります。根っこは残します。

<調理法>

生・揚げる・茹でる/皮は繊維に沿って厚めにむき、すぐに1%の酢水にさらします。食べやすい大きさにスライスして、表面が白っぽくなるまで茹でます。

こごみ(クサソテツ)/イワデンダ科多年生シダの一種(新芽)

こごみ
Kelly Marken/Shutterstock.com

<採れるところ>

半日陰の土手などに自生しています。山や林などの道沿いなどの平地で、比較的万人が取りやすい場所に生えています。

<摘み方>

若芽の根元部分をナイフなどで切り取ります。

<調理法>

揚げる・茹でる/下の黒っぽい部分だけ切り落とし、食べやすい大きさに切って茹でます。お湯に入れた瞬間、鮮やかな黄緑色に変わります。

たらの芽/ウコギ科タラノキ属の落葉低木

タラの芽

<採れるところ>

日当たりのよい山野に自生しています。人気の山菜なので、山へ採りに出かけても、手の届く芽は先を越されていることがしばしば。そのため、自宅の畑で育てている人も多いようです。実家でも先祖から受け継いだたらの木を育てており、芽を収穫しやすいように毎年短く剪定しています。

<摘み方>

若芽の根元部分から折り取ります。

<調理法>

揚げる・茹でる/ハカマの部分を取って根元の硬い部分の皮をむいて調理します。

ふきのとう・ふき キク科フキ属の多年草

ふきのとう ふき

<採れるところ>

直射日光の当たらない、水辺の近くなどの湿った日陰に自生しています。

<摘み方>

根元部分からナイフなどで切り取ります。

<調理法>

ふきのとう
揚げる・茹でる/汚れを取って調理します。

ふき
茹でる・塩水で長期保存/品種によって大きさや太さがずいぶん異なります。山ふきは細く柔らかいのでそのまま使えますが、スーパーなどで販売されている大きなふきは筋取りが必要。ふきを鍋に入る長さに切り、まな板にのせて塩をまぶし、両手で転がして板ずりをします。鍋にたっぷりのお湯を沸かし、4分ほど茹でた後、冷水にとって冷まし、皮をむいて水にさらします。葉はアクが強いので3〜4回茹でましょう。炊き込みご飯の香りづけに、葉と一緒に炊くこともあります。

よもぎ/キク科ヨモギ属の多年草

よもぎ
dalbam/Shutterstock.com

<採れるところ>

日当たりのよい土手や畑の縁、路傍や空き地などに自生しています。

<摘み方>

若芽を摘み取ります。

<調理法>

揚げる・茹でる・冷凍・乾燥

葉玉ねぎ/ヒガンバナ科ネギ属の多年草

葉たまねぎ
細長い野菜が葉玉ねぎ。

<採れるところ>

畑で栽培します。

<摘み方>

引き抜き、緑の葉の部分をいただきます。

<調理法>

揚げる・茹でる/食べやすい大きさに切ります。熱が均等に入るように厚みを揃えて茹でます。小口切りにすると辛みが残るので、苦手な人は縦切りにするとよいでしょう。

山菜の長期保存方法

<わらびの塩漬け>

わらびの塩漬け

並べたわらびに上下真っ白になるくらいの塩をかけて重石を置きます。1年以上保存可能です。

  • 塩漬けわらびの使い方

大きな鍋にお湯を沸騰させ、塩を洗い流したわらびを入れます(余熱でも柔らかくなるので、グラグラ茹でないよう注意)。再びフツフツとお湯が沸いてきたらすぐ火をとめてそのまま一晩漬け置きます。翌日何度か水を替えながら味見をして、苦みやえぐみを感じなくなったら、加熱調理して食べられます。

<乾燥ぜんまい>

採りたてのぜんまいを茹で上げてから、4、5日軽く揉みながら天日干しします。2年以上保存可能。

  • 乾燥ぜんまいの使い方

鍋にお湯を沸騰させ、ぜんまいを入れて2分ほど煮たら火をとめ、そのまま一晩浸け置きます。翌日何度か水を替えながら味見をして、苦みやえぐみを感じなくなったら加熱調理して食べられます。

<ふきの塩水漬け>

下処理したふきを瓶に詰め、沸騰したお湯を注ぎ、塩をひとつまみ入れてふたを閉めます。脱気作業をして1年ほど保存可能です。

  • ふきの塩水漬けの使い方

水洗いしてから加熱調理して食べられます。

乾燥ぜんまいとふきの塩水漬け。
左が乾燥ぜんまい、右がふきの塩水漬け。

それぞれの素材を使った調理方法は次回ご紹介します。お楽しみに!

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Credit

制作&レシピ/本間のぞみ
会津郷土料理研究家。福島県会津若松市生まれ。デザイン事務所のアシスタントを経てガーデニング雑誌編集部に入社。庭のある暮らしや食に関する記事をつくる中で、さまざまな食のプロに出会い魅了され、和菓子店、ベーグル店、ビストロなどで経験を積む。現在2人の子どもを育てながら、地元の母がつくった会津野菜や食品を使ったレシピの提供中。

Photo/3 and garden

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