チューリップやスイセンなどの球根花が咲き始めると、ガーデンは一気に色と華やかさを増して春本番になります。春のガーデンの主役となる「球根花」のストーリーや育て方アイデアを、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんに紹介していただきます。

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春の主役・華やかに咲く球根花

テラスに咲くチューリップ
テラスに咲く色とりどりの球根花。© StockFood / Visions B.V.

スイセン、チューリップ、ヒヤシンスなどといった多種多様な球根花は、春の始まりの花。春の先駆けであるスノードロップやキバナセツブンソウに続き、これらの花が咲き始めると、ガーデンの色合いは一気に幅広くなり、春本番の華やかな景色が生まれます。カラフルで明るい色合いのチューリップなどの球根花は、ドイツでは長く厳しい冬の終わりや、キリストの復活を祝うキリスト教の行事、イースターの到来をイメージさせる花なのです。

アメリカでの花販売時のユーモラスな思い出

バケツ一杯のチューリップ
© StockFood / Visions B.V.

ここで思い出話を一つ。以前アメリカのナーセリーに勤めていた頃は、チューリップ、スイセン、ヒヤシンスなどの球根を荷台いっぱいに積んだトラックで販売していました。中には車から降りることもなく、私たちに声をかけて希望の植物を伝え、私たちがそれを相手のトランクに積み込むと窓から代金を支払って、そのまま去っていくという人もいました。まだドライブスルー、という言葉も一般的ではなかった頃でしたが、私たちの販売方法はまさにそれ。今思い返してみても、なんだかおかしな思い出です。そうそう、道端でいろいろな花を販売していると、時に身の危険を覚えるほど、たくさんのミツバチが私たちの周りに集まってきたこともありました。日本では、このような形での花の販売風景はあまり見かけませんね。

球根花をコンテナで育ててバルコニーやテラスにも春を演出

春の花が咲くバルコニー

ドイツでは春になると、ガーデンはもちろん、多くのバルコニーでも、チューリップやスイセンなどの球根花が咲いて、景色に彩りを加えています。これらの球根花は、あまり根が深く張らず、コンテナでの栽培にも向いているため、バルコニーやベランダなどでのガーデニングにぴったりなのです。

球根花を鉢で栽培して春咲かせるには、秋から冬の間に植え付けておきましょう。まずは素敵なコンテナを用意すること。そして、水はけをよくするために鉢底石などを敷き、土を入れて球根を植えましょう。基本的に、球根の2倍の高さの土を被せて植えるとよいとされています。球根を植え込む際は、上下を逆さにしないよう注意。チューリップなどは上下が分かりやすい形をしていますが、中には上だか分からない形の球根もあるのです。

ベランダに咲くチューリップなどの球根花

さて、球根栽培の魅力の一つに、たくさんの球根を積み重ねて、豪華な景色をつくることができる点があります。まるでラザニアやミルフィーユのように、層状に球根を植え込むことで、多くの球根を植え込んだ豪華な鉢植えにすることができ、開花期の異なる球根を選べば一鉢で長く楽しむことも可能です。このように植え込む際には、一番下に大きい球根を入れて土を入れ、その上に中くらいの球根と土を、さらにその上に小さい球根を入れて土を入れるとよいでしょう。球根は上下に重ならないよう、ずらして隙間に植えてくださいね。

球根を植え込んだら、乾燥しすぎないよう、ときどき水やりを。ただし、水のやりすぎは根腐れにつながるので注意しましょう。それから、きれいに咲かせるには、冬の寒さにしっかり当てることが必要。寒い冬は、彩り豊かな春をつくるための大切な準備期間なのです。

ベランダやバルコニーでも育てやすく、使い勝手のよい球根花ですが、コンテナで栽培した場合は植えっぱなしにして翌年も楽しむというより、一年草のように扱ったほうがいいかもしれません。ガーデンでは、種類により、植えっぱなしでも翌年以降も花が楽しめる球根花もあります。また、ガーデンに植えるときは、同じ種類の花をグループにしてまとめて植えるのがオススメ。統一感が出てきれいに見えますよ。

チューリップの咲く春花壇
チューリップが群れ咲く春の花壇。

相性のよい花を取り合わせてもっと楽しむ

ヒヤシンスなど春の花が咲くベランダ
© StockFood / Visions B.V.

扱いやすい手軽さに加え、カラーバリエーションの広さも球根花の大きな魅力です。コンテナの色や、自宅の壁の色とも合わせやすいので、同系色でまとめたり、コントラストを付けたりと、置き場所や好みに合わせてコーディネートすることができます。また、背の高い球根花から小型のものまで、草丈もいろいろなので、高低差を付けた寄せ植えにもオススメ。壁の前に置くコンテナなら、壁側に背の高いチューリップなどを植え、手前にシラーやムスカリ、小型のスイセンなど草丈の低い植物を入れるなど、場所に合わせて球根をチョイスするとよいでしょう。

また、球根花は、既存の鉢植えにプラスして変化をつけるのにも活躍します。球根は根が深く広がらず、植え込む際にもスペースが必要ないのがポイント。新しい苗を狭いスペースに植えようとすると、根を傷つけてしまう可能性がありますが、球根ならちょっとした隙間に入れ込んで、春にはがらっとイメージチェンジすることができます。

バラやクレマチス、ライラックなど、冬は葉を落としてしまう落葉樹や多年草は、それだけを鉢で育てていると、冬の間寂しい見た目になりがちです。秋のうちにこの鉢植えの隙間に球根花を植えておけば、冬から春にかけても変化が楽しめる鉢植えになりますよ。このような鉢植えに球根を追加する際は、すでに根が張っているので、小さめの球根を植えるのがポイント。背丈の低い花を選ぶと、コンテナ内でのバランスもとりやすいですよ。

球根花と花木のコンテナ

私の大好きな球根花の寄せ植えは、小さめのサクラの木の株元に、ムスカリやアイリスなどの青い球根花、トランペット咲きの小型のスイセンを組み合わせたもの。春らしい雰囲気の淡い色合いのサクラの花と、爽やかな青花、鮮やかなスイセンの黄色のコントラストを見ると、春の訪れを実感できて気持ちも弾みます。皆さんも、ぜひ好きな組み合わせをいろいろ見つけてみてください。

眼前に美しい光景が広がる球根花の名所

ラッパズイセン

ドイツにはEIFELという有名なスイセンの名所があります。4~5月にかけて黄色いスイセンが小川のように咲き誇り、小規模ながらもフェスティバルも開かれます。自然の中にある名所で、花々の間を歩き回れる細い小道があり、訪れる人々は、花の海の中の散策を楽しむことができます。実のところ、ドイツに住んでいた頃には訪れる機会がなかった場所。次に春にドイツに行くときには、絶対に見に行きたいと思います。

ドイツの隣国オランダには、世界的にも有名なキューケンホフ公園がありますが、こちらを訪れた際には全く違う雰囲気の球根花の競演を見ることができました。キューケンホフ公園は、広大で平坦な土地を持ち、ともすればやりすぎにも思えるほど、たくさんの球根花や花々があふれるほどに咲き乱れ、計算された豪華な景色をつくり上げていました。また、キューケンホフ周辺のチューリップ畑の美しさも記憶に残っています。

日本に来てから訪れたスイセンの名所は、静岡県下田市にある爪木崎。印象的な海岸や丘が、美しいスイセンの花に覆われ、とても素晴らしい光景でした。しかも、爪木崎のスイセンは開花が早く、1月のうちからこの景色を楽しむことができるのです。

現在、私の家の近所にある公園にも、松の木の下に多様な種類のスイセンが植わっています。これらのスイセンの花は、ともすれば退屈になりがちな冬を明るくし、たくさんの人に愛されています。

毎年見ていると、面白いことに、品種によってはその場所に合わないらしく、前年よりも花の数が少なくなるものもあります。そういえば、私の家のガーデンでも、珍しいスイセンの品種を注文して植えると、多くの場合は一度しか花を咲かせてくれず、翌年にはどこかに消えてしまうのです。ちょっと残念な気もしますが、それもまたガーデニングの面白さですね。

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Credit


ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/Friedrich Strauss/Stockfood, Stockfood

取材/3and garden

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