観葉植物や草花など、植物を鉢に植えて育てる際に必須の作業「植え替え」は、なぜしなくてはいけないのでしょうか。その理由は、根の役割や環境づくりに秘密があります。ここでは、植物をちゃんと育てたい! 枯れた原因は何? など、ガーデニングを楽しむために知っておきたい基礎知識「植え替え」について解説します。

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植物で一番大切な部分はどこでしょう?

植物のつくり
ananas/Shutterstock.com

例外も多いのですが、『根』である場合が多いでしょう。

『根こそぎにする』『根絶やしにする』といった慣用句があるのも、根が残っていればなんとか再生してくるものという感覚があるからでしょうし、仏教に似た教義を持つインドの宗教・ジャイナ教が、徹底した殺生を禁じる戒律のため植物の根を食べるのを禁じているのも、やはり似たような背景でしょう。

それぐらい、根は大事なのです。

植物の根に関わる作業「植え替え」は、とても重要な内容なので、前編と後編に渡ってじっくり解説します。前編のテーマは、『植え替えされていない土の中では何が起きているのか?』です。

植えたままではどうなる? 4つの理由

1. 無くなる土の中の栄養分

枯れる
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根は植物の吸収器官で、生きるのに必要な水やミネラルを周囲から探して吸収します。「吸収する」ということは、つまり根の周辺からは必要な物質は無くなっていくということです。ですから根は常に、水やミネラルを求めて成長しながら前進しています。これは、その植物が枯れる時まで止まりません。

ということは、鉢植えなどの土の量が限られている場合は、いずれ必要な水もミネラルも尽きてしまうわけです。水は簡単に補給できますが、ミネラルはそうはいきません。水を与える度に、わずかですが無駄に流れ出てしまうし、肥料で補給できるミネラルはごく一部に過ぎません。いつの日か、土の中にある植物に必須な栄養素であるミネラルが無くなるのは避けられないのです。

2. 根の成長により居場所が無くなる

植物の根
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根は植物の一生を通じて成長しますから、年月が経てば経つほど大きく、長くなります。地植えならば植物の根を妨げるものはあまりありませんが、鉢植えでは限られた空間しかないので、やがて中は成長した根でいっぱいになってしまいます。「根詰まり」という状態です。

そうなると水や空気の入るスペースまで埋め尽くし、さらに根はお互いにミネラルと水分を奪い合って十分な量を吸収できなくなります。また植物の組織の中で根だけは呼吸のみしていますが、その呼吸に必要な酸素も足りなくなるので、根が枯れていき、その根に支えられていた地上部も合わせて枯れていくのです。

3. 溜まってゆく老廃物と増える有害な微生物

地面
WillemijnB/Shutterstock.com

植物の種類にもよりますが、多くの植物は根からさまざまな化学物質を出してミネラルを吸収しやすくしたり、周辺の邪魔者(他の植物の根など)を攻撃したりしています。

このような物質は土の中に溜まっていって、植物自身が暮らすのに不都合な状況になっていきます。ときには攻撃に使っていた物質に自分が毒されてしまう場合すらあります。

また、土の中にはさまざまな微生物が数知れぬほど棲んでいますが、年月が経つうちに次第に偏って、植えてある植物を害する病原菌といわれるようなものが増えていきます。

4. それ以前の問題

植物生産
Ekaterina Podzigoun/Shutterstock.com

土の劣化や植物自身の成長の結果のほか、厄介なことに、まず買ってきた時に植わっている土の問題があります。

現代の日本の花生産の技術レベルは高く、生産設備も整っています。そのため、一般家庭など消費者の栽培環境との差が大きくなってしまっているのです。

生産農家は生業ですから、なるべく手間をかけずに、なるべく早く高品質なものに育てて売ろうとします。その結果として、用土に家庭園芸で使うには水もちが良すぎるものが使われていることもあります。これをそのままにすると、根腐れなど重大な支障につながる場合があります。

柑橘類の鉢植え
Valentyn Volkov/Shutterstock.com

また狭い面積でなるべくたくさん育てるために、小さめの鉢で育てます。そのため根詰まりしやすい点もあります。これらを放置すると、たちまちのうちに根は悪い環境に囲まれる結果となるのです。

鉢の中の根が成長する過程で起きる事象を解説しました。これを受けて、次回は具体的な植え替えの方法についてご説明します。

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Credit

文/辻幸治(つじ・こうじ)
園芸家。1976年、大阪生まれ。江戸の園芸文化から海外のワイルドフラワーまで幅広く精通する。NHK「趣味の園芸」にも講師として出演。書籍や雑誌の執筆・監修でも活躍。著書に『色別 身近な野の花山の花 ポケット図鑑―花色別777種』(栃の葉書房)など。

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