花や緑に親しみ、季節感に溢れる暮らしを訪ねる「私の庭・私の暮らし」。自宅の庭を公開するオープンガーデンによって、“庭づくり”という共通の楽しみをもつ友人と巡り会えるのも、庭づくりを続ける喜びの一つです。今回は、自身も自宅で庭づくりを楽しむ千葉在住の橋本景子さんが、北海道に行くたびに訪れるお気に入りの庭をご案内します。

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北海道のオープンガーデン巡りでの出会い

ガーデンエントランス
暑さが苦手なバラ「ロサ・グラウカ」が覆うアンティークのアイアンゲートのエントランスが、奥に広がる深い緑の世界に誘います。

私が北海道のガーデン巡りをするようになったのは、2009年。それ以来、毎年たくさんのガーデンを見、人に出会う旅を続けて、早10年が経ちました。今回ご紹介する旭川でガーデニングをする平岡明子さんとの出会いは、2010年のこと。旭川には、その頃オープンガーデンをしている庭がたくさんあり、いくつかの庭を訪ねた際に「きっと景子さんの好きな庭ですよ」とご紹介いただいたのが、明子さんの庭でした。美しい植物や厳選されたアンティーク雑貨などを巧みに取り入れ、隅々までセンスを感じさせる庭に一目惚れ。それからは毎年欠かさず、時には北海道滞在期間中に何度も寄らせていただいたり、季節を変えて秋にもと、通い続けている庭の一つ。今では「北の姉」と呼んで、交流がずっと続いています。

ガーデンのエントランス
ゲートをくぐると、通路にはレンガの間にはめ込まれた動物や天使模様のタイルが。両脇にぎっしりと植え込まれた植物を一つひとつ確認しながら歩いていると、なかなか前に進めず、楽しくももどかしくなります。

コツコツとつくり上げた庭には、真似したいアイデアがたくさん!

水受け
「1番最初に作った立水栓は、水平器もなかったから曲がってるのよ」と笑う明子さん。その足元にはお花を浮かべた銅の水受けを置いて。

20年前、歳をとっても困らないように、病院やスーパーに近くて便利な旭川市内から車でほど近い住宅街を選び、自宅を新築した平岡さん。家屋を建てた後に空いた敷地へ庭をつくり始めたと言います。大好きなインテリアをデザインするのと同じような感覚で、庭にもレンガを敷いたりフェンスを作ったり、パーゴラを建てたりして。少しずつ庭をつくり上げていくことが楽しくてたまらなかったそうです。

レンガの壁泉
雑貨屋さんで見つけた白いエンジェルを引き立てようと一度レンガを積んだのに、少し歪んでいたのが気に入らなかったからと、数年後に全部壊してやり直したオリジナルの壁泉です。

その頃は、材料も今ほど自由に手に入らず、お手本にするようなガーデンもなかったので、すべて自分で考えたゼロからの庭づくり。たとえ完成しても、気に入らなければ壊してやり直す…それを何度も繰り返してきました。

北海道の庭としては比較的コンパクトなサイズの平岡邸では、「これならうちでもできるかも?」と思わせてもらえるような工夫が庭のあちこちにあって、遊びに行くたびに楽しくて、何度も庭を回遊してしまうのです。

ガーデンテーブル
細い通路を抜けると広がるガーデンテーブルを置いたコーナー。最初は夫婦2人でお茶が飲める程度の広さでしたが、少しずつレンガを敷き広げて、現在のように。
バードバス
バードバスの下に広がるのは、サギナ・スプラータ。6月頃には小さくて真っ白な花が咲き、ふわふわの絨毯になります。

極寒の冬を経てやって来るガーデンの最盛期

デッドスペースの活用
デッドスペースになりがちな建物の角張った場所を腰板風にしつらえて、椅子や雑貨を置き、スタイリッシュなコーナーに変化させています。

ガーデンのオンシーズンには、びっくりするほど花数が多いクレマチスや、本当にうちにあるのと同じ品種? と疑うほどの濃い花色で咲くバラ、さらには珍しい山野草に山アジサイが迎えてくれます。でも、こんなに春が美しくてみずみずしい庭も、真冬になると-20℃近くなる日もあるというのです。明子さんの庭は、北海道でも特に寒さが厳しい地域に位置し、毎年ほぼ半年近くは雪の中に眠っていることを知る人は、そんなに多くはないと思います。

ウェルカムフラワー
10月のガーデンには、小さな椅子に置かれた秋の恵みとウェルカムフラワーが。

8月に暖房を入れたくなるほど寒い日があったり、電話口で「景子ちゃん、トンボが飛んでたのを見たんだよ〜、あぁ、もう夏が終わるよ」と嘆いていたことも。10月には初雪が降ることも多いので、8月のお盆が終わると同時に、明子さんの庭では冬越しのための多数の作業が始まります。例えば、家の中に取り込むために植物の挿し芽をしたり、10月になると、寄せ植えを解体したり処分したり。東京では考えられないほど早く雪囲いの準備も始まります。

野鳥のテーブル
大きなヒマワリは、庭に来る小鳥たちの冬ごもり前の餌用に。こんな素敵なテーブルでいただくランチは、さぞかし美味しい事でしょう。

さらには、庭を飾っていたアンティークや雑貨も、すべて洗って倉庫にしまいます。雪の中でしっかり眠ってもらうために、つるバラも根っこから倒して全部の葉をむしり、プチプチの梱包材をぐるぐる巻いたりと、本当にたくさんの作業。

春になって雪が溶けても、庭作業を始められるのは4月末からわずか1カ月半ほどの短期間。雪国では、庭を元通りにするためには毎日のように働かないと間に合わず、終わりのない冬支度や、体力を使う春の準備が重労働で大変と、オープンガーデンをやめてしまう人も多いのです。

クレマチスとガーデンボード
黄金色に変わった原種のクレマチス、ボタンヅルが覆うガーデンボードは、庭に出られない冬の間にカリグラフィーの本を取り寄せて練習し、ペンキで仕上げた作品の一つ。

それなのに、「冬支度のお手伝いに行くからね〜」と、秋にお邪魔しても、お手伝いするどころか、夏とはまた違う秋のガーデンの美しさに魅了されるだけで、何も手伝わないまま、温かいお部屋でおしゃべりして帰って来るという私です。

室内のインテリアにも明子さんのセンスのよさが随所に

アンティークが並んだキッチン
セレクトのセンスのよさを感じるアンティークの逸品が並んだキッチンのシェルフ。

ガーデンばかりだけではなく、明子さんの美意識を感じる箇所は室内でも随所に見られます。コツコツ集めたという多数のアンティークが日常の暮らしに馴染み、まるで日本とは思えない素敵なインテリアを作り上げるセンスをお持ちです。でも、海外に一度も行ったことがないというのですから、信じられません。

ドライフラワーとポストカード
ハーブドライヤーにはアンティークのポストカードやドライフラワーを。
カーテン越しの庭
レースのカーテン越しのリビングから見える景色も計算し尽くされた美しさです。

庭をしばらく楽しんだ後、まるで海外旅行にでも来たような気分になれるお部屋でいただくお茶の美味しいこと!

「大勢のお客様が来てくれたオープンガーデンも楽しかったけれど、今では気心の知れた友人たちと年に一度の再会を楽しんだり、ゆっくりと話をする時間を楽しみたいので、一般公開はしてないの」と言う明子さん。

北海道に行った時、いつでもお邪魔できる私の大切な庭友である平岡明子さん。いつも美しく、完璧な庭を維持するために頑張りすぎず、それよりも、ずっと長くガーデニングを続けてほしいなと思うのです。

平岡明子さんのブログ「北の小さな庭物語」
http://montana0027.cocolog-nifty.com/blog/

Instagram:lemon_leaf_27

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Credit

写真・文/橋本景子
千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーもまもなく2万人。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどう作ろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/
インスタグラム kay_hashimoto

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