今から200年ほど前の江戸時代後期。園芸が空前の大ブームとなったのをご存じですか? 四季折々の花の名所を案内したガイドブックが次々にベストセラーとなり、将軍や大名などのセレブは庭づくりに熱中し、庶民もこぞって植木鉢で草花を育てて庭先やインテリアをおしゃれに彩っていました。珍品奇品が多く生まれたのもこの時代。世界に類をみない発展をとげ、隆盛を極めた江戸時代の園芸大ブームを前期・後期合わせて200点あまりの浮世絵で紹介している展覧会が開催中です。

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「たばこと塩の博物館」で
1月31日(木)〜3月10日(日)まで

江戸の園芸熱 浮世絵に見る庶民の草花愛
「植木売りと役者」歌川国房 前・後期展示
大判錦絵三枚続き たばこと塩の博物館蔵

たばこと塩の博物館(東京都・墨田区)では、現在特別展示として「江戸の園芸熱 -浮世絵に見る庶民の草花愛-」が開催中です。前期・後期を通し約200点あまりの浮世絵が展示され、江戸時代に空前の大ブームとなり日本独自の発展を遂げた園芸文化のルーツに触れることができます。

お花見から始まった江戸時代の園芸大ブーム

博物館の所在地である墨田区は、百花園や小村井の梅屋敷、墨堤、近隣には藤の名所として知られる亀戸天神など数多くの花名所がありました。今では花見といえば桜ですが、江戸時代の人々は季節ごとの花はもちろん、景色のみならず鳥の歌ならここ、虫の声ならまた別のところ、というように自然のあらゆる事象に美を見出し、行楽を楽しんでいました。こうした自然への豊かな感性を持った江戸の人々は、やがて名所巡りから自身の暮らしのそばへと自然を引き寄せ、「園芸」という世界を発展させていきます。

イギリス人もびっくりの江戸っ子の草花愛

江戸の園芸熱 浮世絵に見る庶民の草花愛
「豊歳五節句遊」歌川国貞(三代歌川豊国) 前期展示
大判錦絵 個人蔵
秋の節句の花、菊を描いた浮世絵。屋根つきの菊花壇で、見事に咲いた花を支柱に留めつける女性。そのかたわらで女の子が花びらを集めて遊んでいる。
江戸の園芸熱 浮世絵に見る庶民の草花愛
「浮世四十八手夜をふかして朝寝の手」溪斎英泉 前期展示
個人蔵
朝顔の鉢とともに朝の身支度を整える女性が描かれ、鉢植えが日常の身近なものであったことが分かる。女性が手にしているのは歯磨き。赤い小袋は歯磨き粉。

「日本人の国民性のいちじるしい特色は、下層階級でもみな生来の花好きであるということだ。気晴らしにしじゅう好きな植物を育てて、無上の楽しみとしている。もし花を愛する国民性が、人間の文化生活の高さを証明するものとすれば、日本の低い層の人びとはイギリスの同じ階級の人達に比べると、ずっと優って見える」

と江戸の印象を書き残しているのは、英国の植物学者でプラントハンターであったロバート・フォーチュン。ガーデニング大国といわれるイギリス人をして、当時の江戸の園芸文化は感嘆に値するものであったことがうかがえます。

江戸の園芸熱 浮世絵に見る庶民の草花愛
「風俗東之錦」鳥居清長 後期展示
大判錦絵 個人蔵
植木売りの振り売りが描かれた浮世絵。正月向けに梅、福寿草などを売っている。
江戸の園芸熱 浮世絵に見る庶民の草花愛
「ゑん日の景」歌川国貞(三代歌川豊国) 前期展示
大判錦絵三枚続き 個人蔵
夏の縁日を描いた浮世絵。虫売り、金魚売りに並んで植木の露店が出ている。

その様子は大衆文化を表した浮世絵にも数多く残されています。江戸には「振り売り」と呼ばれた、今でいう移動販売の商人がおり、鉢植えの植物もしばしばそうした商人によって販売されていました。浮世絵には植木売りが街角で店を広げ、人々が鉢植えを吟味する姿が多く描かれています。

おしゃれな植木鉢の登場でブーム加速!

江戸の園芸熱 浮世絵に見る庶民の草花愛
「暦中段づくし 意勢固世見見立十二直 開 睦月松飾」三代歌川豊国 前期展示
大判錦絵 個人蔵
瑠璃釉の立派な鉢に、梅と福寿草が寄せ植えされている。

庭を持たない庶民の間に園芸が広がった背景には「植木鉢」の登場があります。じつは、植木鉢は江戸時代後期に本格的な生産が始まった比較的新しい器で、この普及により庭を持たない人々の間でも園芸が楽しめるようになったことが、園芸大ブームを加速させました。というわけで、浮世絵をご覧になる際には、ぜひ鉢のデザインにもご注目を。特に「おもちゃ絵」と呼ばれる種類の浮世絵には「植木つくし」というタイトルの作品がいくつもありますが、そこには鉢植えばかりが描かれています。

スマホゲームに通ずる「おもちゃ絵」での園芸紙遊び

江戸の園芸熱 浮世絵に見る庶民の草花愛
右/「新板樹木づくし」歌川貞房 大判錦絵 前期展示 個人蔵
左/「新板植木つくし」歌川芳虎 大判錦絵 前期展示 個人蔵
さまざまなデザインの鉢や植物の仕立て方も面白い。

おもちゃ絵は、女性や子どもを対象にして描かれたもので、切り抜いて遊んだり、物の名前を覚えたりする実用的な浮世絵です。そのため、ここに描かれた鉢は庶民に普及していたものが中心ですが、白地に瑠璃色の縞模様や凝ったモチーフのついたものなど、今と比較しても意匠を凝らしたものが多く、江戸っ子のガーデンライフがいかにハイセンスであったかがうかがえます。また、おもちゃ絵のなかには庭を構成する樹木や草花、門、踏み石などがパーツとして描かれたものがあり、これらを好きに組み合わせ、紙上で庭づくりを楽しんでいたと推測されます。なんだか現代のスマホ版‘庭づくりゲーム’と共通するものがありますね。会場には当時実際に使われていた美しい植木鉢も展示されており、こちらも一見の価値ありです。

珍品奇品でブームに次ぐブーム

江戸の園芸熱 浮世絵に見る庶民の草花愛
「百種接分菊」歌川国芳 前期展示(後期も別に所蔵される同作品を展示)
大判錦絵三枚続き 個人蔵
1本の木に接ぎ木をして100種の菊花を咲かせたもので、一輪一輪に名札がつけられている。右端には番付を見る男性も描かれ、番付表を見ながら花巡りをしていたことがうかがえる。

江戸時代には栽培技術を伝えた園芸書の出版も相次ぎ、栽培方法や育種技術も大きく発展しました。朝顔ブームや菊ブームがたびたび発生し、また珍品奇品が多く生まれるようになったのもこの頃です。菊は一般の人々も好んで栽培しましたが、プロの腕を競うテーマにもなりました。「菊細工」は植木屋同士が栽培技術を競い合うなかから生まれたもので、菊の花で動物や人形、風景を表したものや、上の浮世絵のように1本の株から100種の花を咲かせたものなど、園芸技術の粋を集めた展示が街中に登場しました。それらを巡るマップや番付も生まれ、江戸の人々はこうして季節ごとの花イベントを大いに楽しみました。

展覧会ではこうした江戸の園芸文化の流れを「花見から鉢植へ(プロローグ)」「身の回りの園芸」「見に行く花々」「役者と園芸」の4つのコーナーで構成し、江戸の人々の草花への愛と園芸熱を浮世絵で紹介しています。植物を身近に置き、季節の変化を楽しむ江戸の人々の風雅な暮らしと遊び方は、今の私たちにもたくさんのヒントをくれそうです。

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■賞品

江戸の園芸熱 浮世絵に見る庶民の草花愛

1等/「江戸の園芸熱 浮世絵に見る庶民の草花愛」図録(全193ぺージ・カラー)3名様

2等/かわいいおもちゃ絵の絵葉書6枚1セットを5名様

■応募締め切り

2019年2月17日 23時59分

■応募方法

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★上記の1、2、3のステップを完了された方が抽選の対象となります!

■当選と賞品発送

厳正な抽選により、当選された方のみに、Garden Storyフェイスブックからメッセージでご当選通知を差し上げます。その際、賞品をお届けするために必要な情報(ご住所、郵便番号、日中ご連絡のつく電話番号など)をお知らせいただきます。 お客様からいただいた個人情報は、賞品の発送及び、より良い商品の開発や、個人を特定しない統計資料として利用させていただきます。

また、当該事業の委託に必要な範囲内で委託先に提供する場合を除き、個人情報をお客様の承認無く、第三者に提供することはありません。

Information

「江戸の園芸熱 -浮世絵に見る庶民の草花愛-」

会期:前期/1月31日(木)〜2月17日(日)
後期/2月19日(火)〜3月10日(日)

開館時間:午前10時〜午後6時(入館は午後5時30分まで)

休館日:月曜日(ただし2月11日は開館)、2月12日(火)休館

会場:たばこと塩の博物館 2階特別展示室

住所:東京都墨田区横川1-16-3(とうきょうスカイツリー駅から徒歩8分)

電話:03-3622-8801

HP:https://www.jti.co.jp/Culture/museum/index.html

入館料:大人100円、満65歳以上(要身分証明)と小中高校生は50円

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浮世絵で見る江戸の庶民のガーデニングスタイル 展覧会「江戸の園芸熱-浮世絵に見る庶民の草花愛-」開催中

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献:『江戸と北京 : 英国園芸学者の極東紀行』ロバート・フォーチュン著、三宅馨訳(広川書店)

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