今、世界のビューティートレンドは「おいしく食べて美しく」が主流。目下、何を食べるかという食材セレクトが美の基本マネジメントです。そんな中、最も注目を浴びているのが放牧牛の赤身肉、グラスフェッドビーフ。これまで輸入肉が主流でしたが、オーガニック栽培で知られる「菌の黒汁」の開発者が、安心安全な牧草栽培をきっかけに放牧黒毛和牛の牧場を宮崎県でスタート。その赤身肉の良質な味と品質に、ホテルやレストランが熱い視線を注いでいます。

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海を望む美しい牧場で健やかに育つ牛たち

鏡山牧場
鏡山牧場。風車のある美しい風景の中で60頭の牛たちが暮らす。

宮崎県延岡市北川町、眼下に日豊海岸を望む鏡山の山頂。青い海と空との間に約65ヘクタールの緑の放牧地が広がる鏡山牧場。そのパノラマの景色の中で、60頭の牛たちが草を食み、のびのびと過ごします。「放牧をしたかったんですよね。きれいな景色の中で、ゆったり牛が過ごしているのって素敵じゃないですか」と話すのは鏡山牧場代表の八崎秀則さん。農業用の微生物資材「菌の黒汁」の研究開発と販売を行いながら多くの生産者と接し、一次産業への魅力を感じて2016年に延岡市で牧場運営を始めました。「菌の黒汁はもともと畜産農家の方にも愛用いただいていて、牛舎の独特の臭いが消えるというので、それで牧草を栽培しようと思っていました。ただ、牧場の地に選んだ鏡山の植生はとても豊かだったので、自然に生えている草を食べさせて、菌の黒汁は牛舎の衛星管理のために活用しています」。

宮崎牛

宮崎県といえば和牛の品質を競う全国大会で、3大会連続で日本一の栄冠に輝くブランド牛「宮崎牛」の産地。その一大産地でも、鏡山牧場の広さは県内随一を誇ります。実は、鏡山牧場で行っている放牧というスタイルは、食肉牛の肥育方法としては珍しいスタイル。多くの食肉牛は牛舎で飼われているため、それほど広さを必要としません。 A5ランクや霜降り肉といわれる高級牛肉は、牛舎であまり牛を動かさずに、糖質の多い穀物類を食べさせることで、脂肪分の豊富ないわゆる「サシ」の入った肉を作ります。そのとろけるような甘みのある肉こそ、黒毛和牛の醍醐味ともいえますが、鏡山牧場では放牧で牛たちを自由に歩かせ、あえて脂を絞って赤身が主体の肉牛開発に取り組んでいます。

女性の美と健康にたくさんのメリットがあるグラスフェッドビーフ

宮崎牛

牛を牛舎で飼い、主に穀物類を飼料とする肥育方法をグレインフェッドと呼ぶのに対し、放牧で牧草を食べさせて育てる方法をグラスフェッドと呼びます。同じ牛でもグレインフェッドとグラスフェッドで育てた牛では、その肉の栄養素に驚くほど大きな違いが出ます。グラスフェッドの牛には、女性が不足しがちな鉄分が多く含まれるほか、美肌や美髪に効果的な亜鉛、ビタミン類、青魚に代表されるオメガ3脂肪酸など身体によい栄養がたっぷり含まれているにも関わらず、高タンパク質で低カロリー。グレインフェッドと比較し、カロリーは約60%、脂質は40%という報告があります。ですから、海外のモデルや女優たちの間では、もはやグラスフェッドビーフやグラスフェッドバターはダイエット食として定番化しているほど。体型を気にする人の多くはお肉を避けがちですが、中年以降の女性の美と健康にはむしろメリットだらけです。

宮崎産の放牧黒毛和牛にシェフたちが熱視線

グラスフェッドビーフ

こうした世界的な流行を受けて、日本にもニュージーランドやオーストラリアなどからグラスフェッドビーフが輸入され、高級スーパーやレストランなどで提供されるようになっていますが、今、最もシェフたちから熱い視線を浴びているのが鏡山牧場の国産黒毛和牛のグラスフェッドビーフ。理由はその味。牛に穀物を食べさせたか、草を食べさせたか、また牛舎なのか放牧なのかという違いは栄養素に加え、もちろん味にも影響を及ぼしますが、そもそもの牛種の違いも牛肉の味の大きな要素です。

「世界的にも評価の高い宮崎の黒毛和牛は、サシがなくても肉自体にコクがあってすごく美味しいんです。赤身肉ではよりそれが際立って、脂肪が少ないのでいくらでも食べられます」(八崎さん)。鏡山牧場では牛の月齢によって牛舎と放牧を併用し、宮崎牛の美味しさを最大限引き出す赤身肉の開発に取り組み、栄養素のバランスに関しても大学と共同研究が進められています。

牛たちも、畜産従事者も幸せに暮らすために

宮崎牛

また、放牧という畜産スタイルは、アニマルウェルフェアという観点からも世界的な評価が高まっています。アニマルウェルフェアとは、食肉として人に食される運命にある牛や豚、鶏などの家畜であっても、その動物らしい生き方をさせようという倫理観に基づく国際的な理念で、日本もこれに加盟しています。「牛たちがストレスなく、健康に生きられるように、愛情を持って育てることは、生産者の大きな責任だと思っています」(八崎さん)。

同時に、八崎さんは畜産の従事者が働きやすい労働環境の整備にも心を配っています。畜産業は生き物相手がゆえに、いわゆる3Kといわれる過酷な労働環境になりがちです。牛はいつ出産するか分かりませんし、昼も夜もなく働かなければならないこともあります。だからこそ鏡山牧場では、あえて牧場を法人化し、社員の休みや福利厚生を徹底し、畜産の担い手を増やす働きかけをしています。

近日、鏡山牧場ECサイトもオープン予定!
乞うご期待

宮崎県産牛と八崎さん

放牧というチャレンジで宮崎県産牛に新しい価値を創造し、畜産業の未来を開拓しようとする八崎さんには、まだまだたくさんの夢があると話します。

「肉フェスや観光牧場をして、たくさんの人に宮崎の赤身肉の美味しさを知ってほしいんです。それに、ここはきれいな場所ですし、自分たちが食べる牛がどういう風に育っているのか、ぜひ子ども達に見て欲しいですね。そして畜産という仕事に、興味や魅力を感じてくれたら、そんな嬉しいことはありません」。

鏡山牧場では、赤身肉の肉質や風味を生かしたローストビーフやハンバーグなどの商品開発とともに、ECサイトでの販売も計画中。ガーデンパーティーやBBQなどでヘルシーなお肉を話題にできる日も近そうです。

Credit

取材&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

Photo/1) Syda Productions/Shutterstock.com
2〜7)鏡山牧場提供

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