庭好き、花好きが憧れる、海外ガーデンの旅先をご案内する現地取材シリーズ。今回訪ねたのは、イギリスのバッキンガムシャー州の歴史ある大邸宅、ハートウェル・ハウスです。広大な草地に囲まれ、かつて王侯貴族が暮らしたこの大邸宅は、現在は英国ナショナル・トラストの所有するホテルとなっています。このホテルでは、広々としたランドスケープガーデンを眺めながら、贅沢なお部屋でアフタヌーンティーがいただけます。イギリスの豊かな田園生活をプチ体験してきました。

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ロンドンから小1時間の別世界

ハートウェル・ハウス
©National Trust Images/John Millar

ロンドンの喧騒から離れ、小1時間。オックスフォードに近いハートウェル・ハウスは、都会からのアクセスがよい場所にありますが、ひとたび敷地内に入ると、緑豊かで静かな別世界が待っています。

屋敷と18世紀前半の王太子フレデリック・ルイスの像。
屋敷と18世紀前半の王太子フレデリック・ルイスの像。

ハートウェル・ハウスの始まりは1,000年ほど昔に遡り、その長い歴史の中で、さまざまな王侯貴族がここで暮らしてきました。19世紀の初めには、亡命生活を送っていたフランス王、ルイ18世が5年間滞在したといいます。

オベリスク
屋敷の南側の芝生に立つオベリスク。©National Trust Images/John Millar

20世紀に入ると、屋敷は億万長者のアーネスト・クックの手に渡り、第二次世界大戦中は軍の宿舎として使われもしました。その後、火災に見舞われるなどしましたが、1980年代に、寂れてしまった大邸宅をホテルとしてよみがえらせ経営する「ヒストリック・ハウス・ホテルズ」によって、大規模な修復が行われ、ハートウェル・ハウスは美しいホテルに生まれ変わりました。

ゴシック・リバイバル様式の教会
18世紀半ばに建てられたゴシック・リバイバル様式の教会。©National Trust Images/John Millar

2008年、ホテルとしてよみがえったハートウェル・ハウスは、この先の未来も、屋敷と庭の美しい姿が維持され、開発の手から守られるようにと、英国ナショナル・トラストに寄贈されました。現在、ホテル経営による利益はすべて、ナショナル・トラストに寄付されています。

イオニア様式のテンプル
イオニア様式のテンプル。©National Trust Images/John Millar

屋敷の周りには、広大な緑のスペースが広がっています。18世紀の初めに設計された、テンプルやオベリスクなどのモニュメントを配置した整形式庭園は、18世紀半ばになると、ケイパビリティ・ブラウンの系統を継ぐリチャード・ウッズによって再設計され、ランドスケープガーデン(風景式庭園)となりました。

水辺の景色
©National Trust Images/Chris Lacey
水辺のカナダガンの群れ
水辺にはカナダガンの群れが。©National Trust Images/Chris LaceyBuckinghamshire. Hartwell House is part of the Historic House Hotels group.

敷地内には、静かに水をたたえる湖もあります。果樹園とベジタブルガーデンでは、古い品種のリンゴやアンズといった果物や野菜が栽培され、ホテルのレストランで提供されています。

よみがえった壮麗な屋敷

壮麗な屋敷

さて、17世紀のジャコビアン時代と18世紀のジョージアン時代の様式が混じるお屋敷に入ってみましょう。ファサードの精巧な彫刻に思わず見入ってしまいます。

ナショナル・トラストのマークがある入り口

入り口にナショナル・トラストのマークがありました。ハートウェル・ハウスはトラストの他の庭園と違って、観光庭園として公開しているわけではありませんが、ホテルのお客さんは自由に庭園を散策することができます。

色遣いと彫刻が印象的な階段

ローズピンクの壁紙と緑の絨毯、白いしっくい飾りが印象的な階段です。欄干にいくつもの彫像が立っています。

どこかユーモラスな彫像

彫像は17世紀のジャコビアン時代のものと、現代のものが混じっているそうですが、素人目には見分けがつきません。彫像はなんだかユーモラス!

手すり子も彫像

よく見ると、欄干を支える「手すり子」もすべて彫像になっています。この中に、英国の首相だったウィンストン・チャーチルに似せた彫像があるとのことですが、どれがそうでしょうか……。

豪華なライブラリーでアフタヌーンティーを

豪奢なライブラリー
©National Trust Images/John MillarBuckinghamshire

私たちが通されたのは、ロココ調の装飾が施され、大きな窓のある素敵なライブラリーでした。

窓の外に広がる緑

窓の外には、ランドスケープガーデンの緑が広がっています。

窓からのランドスケープ

窓の外を覗いてみると、木々の間に大きなトピアリーを発見。チェスの駒のようです。

広大な芝生

トピアリーの前には、クローケー(クロッケー)ができる芝生が広がっていました。『不思議の国のアリス』にも出てくる遊びですね。日本のゲートボールは、クローケーを参考に考えられたものなのだとか。

気持ちのよいテラス席も

ライブラリーの外はテラス席になっていて、ここでもお茶を楽しむことができます。右側の出窓の部分がライブラリーです。

ハートウェル・ハウス

再び、室内へ。大理石のマントルピースや、曲線を描くしっくい飾りが優雅です。ロココ調の装飾とはこういうものなのか、と実感。

ライブラリーの本棚
©National Trust Images/John Millar

本棚には、円をつないだデザインの、金箔を被せた真ちゅう製の針金細工が施されています。1760年頃に作られたもので、英国内でも貴重な古い針金細工です。

ハートウェル・ハウスのアフタヌーンティー

そして、待望のアフタヌーンティー! 3段トレイの上から、チョコレートケーキ、焼き菓子、スコーン。見ているだけで幸せになります。

小花柄の食器や銀器のテーブルセッティング

小花柄の愛らしい食器や銀器を使ったテーブルセッティングに、気分も浮き立ちます。

サンドイッチ

キュウリ、トマト、サーモンなどのサンドイッチと、焼き立てスコーン。かなりボリュームのある内容で、紅茶をポットにたっぷり(コーヒーを選ぶこともできます)。これはどんな味、次はどれをいただこうと目移りしながら、時折外の風景を眺めつつ、優雅な気分で本場のアフタヌーンティを満喫することができました。

アフタヌーンティー

こちらは違う年に訪ねた時の写真。この時はマカロンがあって、スコーンの形もちょっと違います。訪ねる時によって、トレイの内容が変わるのですね。クリスマス時期には、スパイスが効いたスコーンなど、クリスマス仕様のアフタヌーンティーをいただけるそう。

英国式の豪華な田園暮らしを体験

本館のレストラン

ホテルには、かつてのオランジュリー(温室)が改装されたスパや、ジムが完備されていて、テニスや釣りを楽しむこともできます。滞在すれば、都会を離れてのんびりと、しかし、優雅に自然の中でリフレッシュするという、英国貴族のような田園暮らしを体験できます。写真は、朝食、昼食、本格ディナーがいただける、本館のレストラン。

天井飾りが見事なグレートホール

こちらは、イギリス・バロック様式の傑作、天井飾りが見事なグレートホール。1740年頃の完成以来、床を除いて変わらない姿を保っています。アフタヌーンティーをいただくのに、こちらの部屋に通されることもあるそう。どちらの部屋でも、優雅な気分が味わえますね。

ダブルベッドの客室
©National Trust Images/John Millar

本館には48部屋あり、それぞれ美しい調度品で設えられています。18世紀に馬小屋として使われていた建物は、より豪華なスイートルーム専用の建物となっています。クラシカルな天蓋付きベッドのある部屋もありますよ。

写真協力

英国ナショナル・トラスト(英語) https://www.nationaltrust.org.uk/
ナショナル・トラスト(日本語) http://www.ntejc.jp/

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Information

〈ハートウェル・ハウス〉Hartwell House ホテル情報

ロンドン、メリルボン駅から、最寄り駅のハデナム&テーム・パークウェイ駅(Haddenham & Thame Parkway)まで電車で約40分。駅からホテルへはタクシーで約10分です。

トラディショナル・アフタヌーンティは予約を。時間は、月と火は13:30~、水~日は15:30~。料金は1人£32。

*2018年現在の情報です。

Oxford Road, Vale of Aylesbury, Buckinghamshire HP17 8NR
+44(0)1296 747 444
https://www.nationaltrust.org.uk/holidays/hartwell-house-and-spa-aylesbury

Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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