日常に豊かさと公園のような心地よさを提案しているparkERsが、観葉植物を日本の四季のある暮らしに取り入れる新しい植物の楽しみ方をご紹介するこの連載。
日本の文化には移り変わる季節に合わせた行事や習わしがたくさんあり、日本人はそれらを大切にして暮らしてきました。慌ただしく暮らす毎日に、その時旬の花や自然の情景を取り込んで、日本人らしく植物と生きる考え方を未来へ運びます。

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壁面緑化〜植物が目線の高さにあると、自然に植物の魅力に気づくことができる〜

日本列島は北から南へ約3,000kmにも及び、さまざまな環境が存在することもあって、約6,000種の植物が存在する植生豊かな国です。シダ類だけでも、なんと600種以上存在しています。

上の写真は新山口駅にできた壁面緑化。山口県に自生する植物約135種を用いてアートのようにデザイン化しています。このような取り組みにより、当たり前のように存在する地域の植物の魅力を再認識してもらうことを目的に実施されたプロジェクト。

壁面を緑化すると、いつもは足元でなかなか見えない小さな植物が目線の高さにあり視界に入ってくるため、普段気がつかない植物の特徴や魅力が見つけやすくなります。

植物が目線の高さにあると、植物の見え方が変わる。

1芸、2芸…植物を愛でて遊ぶ日本古来の文化を現代に

日本には古くから、1種の植物を多品種揃えて並べ、その少しの違いを楽しむという日本人特有の植物の楽しみ方がありました。民衆は江戸時代から、アサガオやツバキ、サツキなど多くの植物について、さまざまな品種を競ってつくり、その小さな違いを見つけることで“植物を愛でる”遊びをしていました。通常とは異なる箇所を「芸」と呼び、例えば、通常は丸くて緑色の葉がギザギザになっていたら「1芸」、さらに葉に斑も入っていたら「2芸」と呼び、芸の数を競って遊んでいたのです。さりげない細かな違いを散りばめて愛でる、粋な遊びですね。

上の写真は、このような日本人独特の遊び方を壁面緑化に取り入れたオフィスの事例です。シェフレラという植物を10品種ほど入れて、葉の形や色、質感の違いを見て楽しめるようにしています。じっくり見るほどに気がつく新たな発見が、一緒に過ごす仲間との会話のきっかけ(コミュニケーション)にもなればとの思いも込めてつくっています。

植物が目線の高さにあると、植物の見え方が変わる。

日常の中に“植物の魅力”を見つけ、心豊かな暮らしを

前述したように、植物を近くで見られる工夫をすると、ディテールを見比べて楽しむことができます。そして植物の魅力をさらに分解していくと、その魅力の原点が見えてきます。昔から多くの日本人は植物の魅力をそれぞれに感じ、それを遊びにも変えてしまうほど豊かな心を持って暮らしていました。

上の写真は、青森県にある『星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル』。奥入瀬渓流の圧倒的な大自然を一つ一つトリミングし、その魅力の要素をパネル化しました。植物のパネルだけでなく、樹皮の型を取ったパネルやグラフィックパネルなど、さまざまな角度から植物の魅力を飾っています。古くからの考え方に、現代の新しい見せ方を取り入れてみると、さらに植物の深みが感じられると思います。

昔ながらの「植物を愛でる」という文化を、現代の私たちも日常に取り入れることで、もっと心豊かな暮らしに近づけるかもしれません。

植物のパネルと樹皮の幹肌パネル。

今月の植木屋:大分発信のシダの宝庫「グリーンエルム」

都内ではあまり見ることができない、個性豊かで魅力にあふれるシダ植物たち。そんなシダ植物を生産しているのが、大分県にある株式会社グリーンエルムさんです。日本古来の植物たちを熟知しているグリーンエルムさんでは、その地域本来の景観、風土、気候に適合した種類を選出し、生産しています。

日本にはシダ植物が600種類以上生育していますが、これまで植栽として使用されてきた品種数は20種類にも満たないのが現状です。シダ植物は種類の見極めと栽培が難しいのですが、グリーンエルムさんは、植物が本来自生している生息環境(耐乾、耐湿、耐陰性)を考慮して栽培し、都市部でも生息できる種類を少しずつ増やしています。

街中で見られる植物がもっともっと多様になると、植物を愛でる楽しみがさらに増えそうですね。

コモチシダ。もともと岸壁に自生するシダ植物なので壁面緑化等に使用した際に、根元から立ち上がることなく自然な景観を創出できる。

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辻永岳史(Tsujie Takeshi)
大学院にて壁面緑化を中心に都市緑化技術を研究。その後、大手花屋でフラワーデザインや空間装飾を学ぶ。緑化技術とフラワーデザインのノウハウを掛け合わせ、植物の豊かな表情を生かして、さまざまな生活シーンに合った空間を提案。お客さまのニーズに合わせて、見ていてワクワクするような、印象に残る居心地よいグリーン空間づくりを目指している。
https://www.park-ers.com/
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