秋バラシーズン真っ只中の10月、近くのバラ園を訪ねて、春よりも色鮮やかで香りも濃く感じられる秋バラの魅力を堪能してみましょう。また、訪れたバラ園の歴史を改めて知ることで、そこに咲くバラがより魅力的に見えてくることもあります。今回は、バラ文化と育成方法研究家で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんに、都心からも近い東京都調布市の「神代植物公園」のバラ園をご紹介いただきます。

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昭和36年から数々のバラの名花を植栽

神代植物公園

神代植物公園のバラ園は、1961年(昭和36年)につくられました。歴史あるバラ園には、約400品種、5,200株のバラが植栽され、本園の整形式沈床庭園では、主にモダンローズを数多く見ることができます。また、その横には、野生種が植栽されたオールドローズ園や国際ばらコンクール花壇があります。

世界バラ会連合より「優秀庭園賞」が贈られた庭

神代植物公園

2009年(平成21年)には、世界41カ国のバラ会が加盟する「世界バラ会連合」より、バラの育成、維持管理、展示様式が高い水準であると評価されたバラ園に贈られる「優秀庭園賞」を受賞しています。

かつての「日米親善のバラ園」の面影を今に伝える「本園」

「本園」内をゆっくり見て回っていると、高芯剣弁咲きのバラが多いことと、作出国がアメリカのバラが多いことに気がつきます。その理由は、1959年(昭和34年)に、アメリカ・ロサンゼルスより、同地の中央公園のバラ園で採取した約80品種のバラの接ぎ穂が「日米親善のバラ」として東京都へ贈られたことから縁ができたためといわれています。

1959年当時の名花であったハイブリッドティーローズやフロリバンダローズが東京都へ贈られ、「日米親善のバラ園」として、ここ神代植物公園に植栽されたとのことです。当時の日米親善のバラは、現在13品種が残っていて、2018年10月に訪れた時、ちょうどそのバラたちの咲く姿を見ることができました。

‘フロリック’(F)1953年作出

フロリック

‘ワイルド・ファイアー’(F)1955年作出

ワイルド・ファイアー

‘ヘレン・トローベル’(HT)1951年作出

ヘレン・トローベル

‘ピース’(HT)1945年作出

ピース

‘クイーン・エリザベス’(Gr)1954年作出

クイーン・エリザベス

‘レディ・ラック’(HT)1956年作出

レディ・ラック

‘レッドキャップ’(F)1954年作出

レッドキャップ

‘ファンファーレ’(F)1956年作出

ファンファーレ

‘リリベット’(F)1953年作出

リリベット

‘ヒート・ウェイブ’(F)1958年作出

ヒート・ウェイブ

‘ルビー・リップス’(F)1958年作出

ルビー・リップス

‘グリーン・ファイヤー’(F)1958年作出

グリーン・ファイヤー

‘ムーン・スプライト’(F)1956年作出

ムーン・スプライト

また、本園内では、1961年に植栽され、57年が経った現在も花を咲かせる‘クイーン・エリザベス’の古木も見ることが出来ます。

クイーン・エリザベス
‘クイーン・エリザベス’の古木。

バラの歴史と系譜をたどる「野生種・オールドローズ園」

神代植物公園

「野生種・オールドローズ園」に向かうと、春の一季咲きのバラが多いせいか、本園に比べて秋はひっそりとした雰囲気です。その中でも花を咲かせているバラたちは、中国原産で18世紀から19世紀初めにかけてヨーロッパへ持ち込まれ、ヨーロッパのバラたちに四季咲き性をもたらしました。

 秋バラ
‘スレイターズ・クリムズン・チャイナ’(手前の赤色のバラ)と‘オールド・ブラッシュ’(奥のピンク色のバラ)が並んで咲いて。

現在、当たり前のように、秋に多くのバラの花を見ることができるようになったのは、このバラたちのおかげだと、しばし見入っていました。ふと周りを見渡せば、秋には花を咲かせない一季咲きのバラたちも、ローズヒップという美しく可愛らしい置き土産を残してくれています。

‘レディ・ペンザンス’のローズヒップ
‘レディ・ペンザンス’のローズヒップ。

世界中の育種家の未発表の新品種が並ぶ「国際ばらコンクール花壇」

国際バラコンクール花壇

こちらは、「国際ばらコンクール花壇」です。このコンクールは、1963年から始まり、以来毎年、日本国内や世界中の育種家から未発表の新品種を公募し、2年間の試作を行う中で、「公益財団法人 日本ばら会」の審査員が審査を行い、入賞花を選出しています。

クイーン・オブ・神代

本園の温室寄りの花壇には、歴代のコンクール入賞花が植栽されています。この‘クイーン・オブ・神代’(HT)は、2009年度コンクールの四季咲き大輪金賞受賞花です。2011年の開園50周年を記念して、名前を公募し命名されました。

神代植物公園

秋は春よりも気温が低くなるため、バラの開花時間が少し長くなり、さらに寒暖の差で生じる花色の深みが加わって、何ともいえない美しさを感じる時が多くあります。春より濃く感じられる香りと共に、じっくりと一輪の花と向き合って観賞するには、秋はベストシーズンかもしれません。

フレンチレース
秋開花した‘フレンチレース’。

ぜひ、秋バラの咲くバラ園へ出かけてみてください。

デスティニー
‘デスティニー’の秋バラ。ピンクに色づいた花びらが美しい。

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Credit

写真&文/元木はるみ
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。「日本ローズライフコーディネーター協会」代表。近著に『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)など。
http://roseherb.exblog.jp

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