私たちが常日頃、何気なく口にしている植物の名前。故事や見た目に基づくその由来を知ると、その植物との関わりや歴史が垣間見え、新たな一面を発見することも。植物名の由来を探してみましょう。

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ガーデンや身近な場所で見かける植物はたくさんありますが、その由来をどれだけご存じでしょうか? 植物の名前は、見た目からつけられたり、物語や発見者の名にちなんだりとさまざまです。身近な植物の名前の由来についてご紹介しましょう。

知っていますか? 身近な植物の名前の由来』も併せてご覧ください。

クローバー(シロツメクサ)

Photo/Sann von Mai/Shutterstock.com

幸運のシンボル、四つ葉探しでおなじみのクローバー。最近では葉色の豊富なバリエーションに加え、葉の枚数も5枚以上になるような園芸品種まで登場し、寄せ植えのアクセントとしても人気があります。クローバーという名は古代英語に由来し、「獣の蹄の割れた形の葉」という意味だそう。ちなみに日本ではシロツメクサやツメクサと呼ばれ、白詰草などと書きます。これは、江戸時代に、オランダ人がガラス製品(ギヤマン)など交易品の梱包に、緩衝材としてよく用いたことに由来します。

アスチルベ

Photo/ Volcko Mar/Shutterstock.com

初夏にふわふわとした花穂を出し、半日陰のシェードガーデンでも咲くアスチルベ。ギリシャ語「astilbe」からの外来語です。「astilbe」は「~がない」という意味の「a」に、ギリシャ神話の輝きの妖精で、きらめきを意味する「stilbe」が合わさった言葉で、葉につやがないことや、花が地味で目立たないことを表すとされます。名前の評価はやや辛口ですが、泡のような花姿はナチュラルな風情が洋風の庭にも和風の庭にも相性がよく、ガーデンに取り入れたい花の一つです。

スミレ

小さな紫色の花を咲かせ、春を告げるスミレの名前は、大工さんの使う道具から。スミレの花姿が直線を引くための道具である「墨入れ(墨壺)」を思わせることから「スミイレ」と呼ばれ、次第に転訛して「スミレ」になったという説がよく知られています。また、スミレは「スミイレ」であり、スミはツミ(摘み)の異形で、摘んで楽しむ「摘入草」の意味から生じたという説もあります。日本国内にも、山間部に生育し、葉裏が紫を帯びるシハイスミレや、海岸近くに生息するイソスミレなど、多くの仲間が自生しています。

ギボウシ

葉を大きく広げるギボウシは、シェードガーデンには欠かせない宿根草です。鉢に一種植えにしても見映えがよく、ガーデナーにとってはお馴染みの存在。このギボウシという名は、もとはギボウシュであり、若い葉が擬宝珠(欄干の柱の上端につける飾り)によく似ていることからというのが定説ですが、「葱帽子(ネギボウシ)」が転じたという説もあります。欄干の装飾はもともと「葱宝珠」であったという記述もあり、はじめにネギの花を葱宝珠と呼び、次いで欄干の装飾にこの名を用い、最終的に葉が擬宝珠に似たギボウシも同じ名で呼ばれるようになったのではないかと考えられています。ちなみに、東京「日本武道館」の屋根の上にある通称「玉ねぎ」は、擬宝珠なんですよ。

アマリリス

Photo/fon.tepsoda/Shutterstock.com

ユリに似た大きな花を咲かせる、鮮やかな印象のアマリリス。この名前は英名「amaryllis」をそのまま利用したものです。「amaryllis」の由来は、ギリシャ語の「amaryllis」にさかのぼります。この名は、紀元前3世紀頃のギリシャの牧歌詩人、テオクリトスにより書かれた牧歌の中に登場する、美しい羊飼いの少女の名だそうです。ちなみに学名のアマリリスについてはややこしく、ガーデニングでアマリリスと呼ばれている種は、現在はアマリリス属ではなく、ヒッペアストルム属に分類されています。そのため、アマリリス属に属するものはホンアマリリスと呼んで区別しています。

ホオズキ

Photo/sasimoto/Shutterstock.com

ふっくりとした赤い実が印象的なホオズキ。毎年7月上旬には、東京・浅草にホオズキ市が立つことでも馴染み深い、季節を告げる草花の一つです。歴史的仮名遣いではホホヅキと書き、口に含んで膨らませ、頬をついて音を鳴らすという子どもの遊びに由来する、というのが通説です。他に、実の様子から人の紅い頬を連想したという説や、ホホというカメムシ類の虫が好むことからという説、実が火のように赤いことから「火火着、火火著(ホホツキ)」と呼んだという説など、さまざまな説があります。ホオズキは漢字では鬼灯とも書き、赤い灯火のような実の様子を、怪しげな赤い提灯として表しています。

バラ

数ある花の中でもトップクラスの華やかさと人気を誇り、花の女王とも呼ばれるバラ。西洋風の印象が強い花ですが、ノイバラは日本でも古くから愛され、ウマラという名で万葉集にも登場します。バラの語源は茨(イバラ)で、トゲのある小さな木の総称でしたが、次第にノイバラを指すようになりました。イバラの語頭のイはウとも発音され、またバラのバがマにも通じたためにウマラとも呼ばれ、この名のほうが歌には好まれたようです。その後、語頭のイやウの音が脱落し、現在のようにバラと呼ばれるようになりました。

ベゴニア

Photo/Ancha Chiangmai/Shutterstock.com

育てやすくて花期が長く、春から晩秋まで咲き続くベゴニアは、花壇で広く活躍する花です。花色や花形、草姿などの豊富なバリエーションも魅力です。このベゴニアの名前は、フランス領アンティル諸島の総督だったフランスの植物学者、ミシェル・べゴンに由来します。ちなみに、日本でも親しまれているシュウカイドウもこのベゴニアの仲間。シュウカイドウは漢字では秋海棠と書き、バラ科の花木である海棠(カイドウ)に似た花を秋に咲かせることから、この名で呼ばれています。

Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献:
『語源辞典 植物編』(吉田金彦編著・東京堂出版刊)
『日本辞典』 http://www.nihonjiten.com/

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