花や緑に親しみ、季節感に溢れる暮らしを訪ねる「私の庭・私の暮らし」。今回は、竹林を背景にした斜面地にバラを咲かせ、リビングからいつも庭を眺めることができる住宅街の庭をご紹介。盆栽を育てていた夫の「この庭をバラでいっぱいにしよう」の一言から始まった、東京・山本邸の庭物語。

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リビングから一望できるバラの庭

「この場所が一番景色がいいの。あなたも座ってみて」と、部屋の中に招かれてソファーに腰掛けると、窓の向こうにはみずみずしい緑の間に、ピンクや白、黄色のバラが風に揺れる、なんとも穏やかな風景が広がっていました。「ここに座っていると、ああ、今日もいい景色だなぁって、いつまでも眺めていられるのよ。お客さまを招いて、ここでお茶を飲んでおしゃべりするのも私の好きな時間」と話すのは、この庭を丹精する山本静子さん。100種を超すバラを育てて15年になります。

リビングに面したパーゴラには、‘アリスター・ステラ・グレー’などの数種のつるバラが混ざり咲き、室内でもこぼれ咲くバラが眺められます。「毎朝、雨戸を開けると、咲きたてのバラの香りが部屋の中になだれ込んできて、あぁ、またバラの季節がやってきたんだって、嬉しくなるの」と山本さん。このパーゴラは、以前はブドウが育つ棚でしたが、つるバラを絡めるようになってから、いつの間にかバラの数が増えて占領されてしまったとか。

和風の庭からバラの庭へ

青いウメの実が膨らみ始めた貫禄のある木には、つるバラの‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’が絡まり咲いています。庭を見渡すと、鮮やかなバラの背景にはサクラやリンゴ、竹林の緑があり、日差しもやわらかく、花色が引き立っています。

山本さんの庭は、母屋(写真左)が高台にある南斜面で、一番低い位置は竹林(写真右)になっています。

「バラを育てる前、ここは和風の庭でね、100鉢の盆栽が並ぶ主人の趣味の場所だったの。病気をして盆栽の手入れも難しくなっていたある日、この庭をバラでいっぱいにしようって言ったのは主人のほうだったのよ」。その一言をきっかけに、庭をバラでいっぱいにするにはどうすればいいのか、亡くなったご主人と過ごした日々を胸に、山本さんの庭づくりはスタートしたのです。

丈高く育つ竹が南の日差しをやわらげてくれることで、アーチやオベリスクに仕立てた‘バフ・ビューティ’などのつるバラが健やかに育っています。

盆栽をたくさん育てていたご主人が、なぜバラを選んだのか。山本さんに尋ねると、「ロマンチストだったのかしらね。花も好きな人だったのよ。盆栽が並んでいた当時の庭にも、赤いバラが5〜6株はあったわ。だから、リビングから見える日当たりがいい場所に、私が好きなオールドローズを植えたんだけど、それがうまく育たなくて」。なんとかバラを増やしたいと、山本さんは一念発起して、バラ栽培の教室にも通い始めました。

隣家との境には一面にトレリスを設置して、生育旺盛な‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’をたっぷり咲かせています。

バラは、日が当たりすぎるとうまく育たない種類もあると知った山本さんは、株元に日が当たらない場所につるバラを植えてみました。すると無数の花が咲き始め、少しずつバラ栽培のコツをつかんでいったのです。そして、バラの栽培教室の先生だったガーデナーの清水匠さんに、庭のつくり替えを相談することにしました。

庭を囲む6m以上の外壁を縁取るように咲くのは、‘フランソワ・ジュランヴィル’。バラの季節、お客さまを出迎えてくれます。

バラが咲き誇る季節の楽しみ

プロの手も借りながら、山本さんの庭はいつしかバラが無数に咲く場所へと変わっていきました。バラが最盛期を迎える5月になると、友人たちが次々に訪れて、庭は賑やかになります。

バラの季節には、夫婦でコレクションしてきたロイヤルコペンハーゲンの「フローラ ダニカ」の食器の中から、バラの絵皿をリビングに飾ったり、庭のバラを活けて、庭も部屋もバラ一色にしてお客さまとの幸せな時間を楽しむ山本さん。「最近、このバラの庭は、『バラでいっぱいに』と言ってくれたのは、主人から私への最後のプレゼントだったって分かったの」。

バラを育てるようになって、家の中にもバラにまつわるお気に入りの品が増えていきました。

たくさんのバラを庭で咲かせるまで、失敗や苦労もありましたが、花のある暮らしの豊かさを知り、実践することができた山本さん。また来年もいい花を咲かせなくちゃ、と今日も庭へ出ます。

10年以上のおつきあいになるGREENの清水匠さん、清水かおりさんと庭主の山本静子さん。

Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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