植物を育てる人のごくごく個人的なガーデンストーリーをご紹介します。今回は、山林を自ら造成し、裏の森へとけこむような土地で花と緑に囲まれて暮らす北海道の山崎亮子さんのストーリー。庭の中心となる芝地のことを教えていただきました。

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我が家の庭へようこそ

我が家は、若木や古木の生い茂る森のほとりにポツンと建っています。初めて訪れた人は「ここに本当に家があるのだろうか」と少々不安になりながら先へ進み、日だまりにホッと車のスピードを落とすと、木立に紛れた我が家を見つけるといいます。

今日は、我が家と森をつなぐ大切な空間、芝地にまつわるあれこれをお話しします。

敷地に足を踏み入れれば、木立に囲まれた小さなサンクチュアリが芝地です。木立が時刻とともに影を自在に落としながら、日時計のようにゆったり時を告げていきます。森との境や陽だまりには、野の花が揺れています。

私が思う芝生と芝地

越して来た時、ここは乱開発の跡地でした。取り残された巨木が、砂利まみれの赤土に囲まれて立っているほかは何もありませんでした。私が最初に願ったのは「ここに野原を」そして「里山を」ですから、イギリスなどに見る美しい緑のじゅうたんのような芝生をイメージしたことはありません。

幼い日に花かんむりを編んだ、草刈りの手の入った空き地や公園が私の理想です。美しい緑のじゅうたんを理想とする芝生とは目指すところが違うので、ここではあえて「芝地」と呼ばせてください。

芝に顔を寄せると、クローバーやスミレの可愛い姿が。

今、芝地は念願叶って小さな草花がいっぱいです。西洋芝の間には、スミレやヘビイチゴやクローバーなどの小さな植物が混在しています。刈り込むことで雑草が大きく成長するチャンスを失い、地際に生えるものばかりになっていきます。とはいえ芝地を囲む花壇のコーナーは、大型の野花で溢れていますから、時には芝地に向かないタネが入り込みます。

庭にいる息子を追ってやってきた飼い犬のノノとユピー。

大きく目につく葉物や、真っ黄色のタンポポなど、茎が草刈り機に絡まるものは早春のうちに手作業で抜き取ります。とはいえ、雑草抜きは大仕事ですよね。根が張っていたり、混み合っていれば難易度アップ。けれどもいくら雑草といっても、茎や葉がなければ弱って、周りの宿根草に負けてしまいます。

ですから、庭鋏が地面にめり込むのでは? というくらい深く当てて切れば、せっせと掘らなくても撃退できる雑草も多いのです。でも、スギナ(ツクシ)のように根を張り巡らせて栄養をとっているものは、上だけ一部切ったくらいでは、すぐまた生えてくるので気をつけてくださいね。

我が家の芝地管理の基準

野の花が混じる、のどかな芝地の管理のコツは“メリハリ”です。大きく育てたい草花と、短く刈り込む草。その差がはっきりするほど、庭デザインの意図が明白になります。その“意図”がガーデニングファンでなくても容易に読み取れるなら、芝が引き立てるフラワーゾーンに囲まれたガーデンになるのです。一番大切なのは、こまめな芝刈り。その点では、芝生と変わらないですね。

ムーミンハウスと呼ぶ小屋の周りは息子の遊び場。

我が家のヘッドガーデナーである私が、管理より大事にしているのは、庭が家族それぞれの「自分の居場所」であることです。自分が触れもしない場所は、自宅であっても他の誰かのプライベートスペースになってしまいます。

そんなわけで、芝刈りは夫や息子が担当となっているのですが、庭デザインに興味がない彼らは、「ベンチの下が面倒だった」とか「湿っていて草刈り機が進みにくいから適当に伸びた所だけ刈っといたよ」なんてサボリは日常的。あとから写真をよく見れば、刈りムラも目につき「いい加減なことしてるなぁ」ですって。私も「あらら」と思いますが、彼らもリラックスできる庭が一番。

これまでも、そしてこれからも。家族それぞれの思いやペースを大切に、自然の共有との中で庭空間を楽しんでいこうと思います。

雑草抜きと一緒につくるテーブルフラワー

本日の私のターゲットは、こちらのヒメジョオン。根が切れるくらいに深く切りました。早春の草花はまだ柔らかく、掘るよりずっと楽チン。ただしハサミは傷みやすいので、こうした雑用と花用を使い分けるために、2つのハサミを用意するのがオススメです。

さて、ザクザク切ったヒメジョオンは、どんどんカゴへ。雑草を切りながら、庭の花も思いつきでチョンと切ってカゴへ。

ただの雑草抜きではつまらない重労働ですが、まだ緑の少ない時期の貴重なグリーンは、小瓶を並べたカゴに庭の小花とザックリ合わせて活ける…。暮らしに生かす楽しみも忘れないのが我が家流です。

気がつくと、もはや雑草抜きが花摘みに変わり、愛らしい花カゴが完成しました。この日の花カゴの主役は、スイセン‘サー・ウィンストン・チャーチル’や、去年、水栽培したあと地植えにした小ぶりのピンクのヒヤシンス、プルモナリアです。

春咲いた球根類を来年も咲かせたいなら、葉を残すことが大切です。球根を太らせる栄養は葉から吸収されるので、できるかぎり完全に枯れるまで葉は切り取らないようにします。ヒメジョオンを抜き取って退治するのとは反対の作業ですね。カゴの花を引き立てるグリーンの役目はヒメジョオンに頑張ってもらって、球根には来年の開花に向けて光合成を頑張ってもらいましょう。

家に帰ると、一度カゴから花を出して小瓶を並べます。ジャムの空き瓶、薬の空き瓶、瓶ではありませんがプリンカップも。小ぶりで水が入れば、容器は何でも構いません。

まずは、ヒメジョオンの葉を小瓶にギッシリと詰めていきます。この詰まった葉が、花どめになります。最後に葉の中に埋もれるように花を挿していきます。水の入った瓶の位置が分かりにくいので、「水に花茎が浸かっているか」だけ気をつけて。

仕上げにパンジーも加えて、庭の花たちが集合した花カゴができ上がりました。さあ、庭の花を囲んでの夕ご飯、今夜は何をつくりましょうか。

こんな風に過ごす私のガーデニングは、どこからどこまでが庭仕事で、家事で、子育てで、犬の散歩か。まったく区別なく、すべてが庭を中心に回っているのです。

Credit

写真/山崎亮子

取材&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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