家族や友人とのひとときを楽しむ場として…また、自分だけの静かな時間を過ごす場として…信州の民家で古くから親しまれてきた土間空間を現代的に再構成した「土間サロン」。この庭と室内をつなぐ空間を提案している「工房信州の家」の住まいづくりを紹介する。

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豊かな自然とつながる工房信州の家

写真/フォレストコーポレーション

JR長野駅から車で約20分。各住宅メーカーのモデルハウスが建ち並ぶSBC長野中央ハウジングパークの中に、ひときわ目を引く一軒がある。

玄関脇に積み上げられた薪の山、庭に対して大きく開かれた開口……。モダンで洗練されたデザインの中に、どこか懐かしさと親しみを感じる佇まい。これが地元・信州の自然と調和した暮らしを提案しているフォレストコーポレーション「工房信州の家」のモデルハウス(以下、長野中央展示場)である。

「工房信州の家」は、この地の美しい景観と豊かな自然を感じながら暮らすことをテーマとして、長野県各地に6カ所のモデルハウスを用意して、様々な世代や家族構成に対応する住まいを提案している。

今回お伺いした長野中央展示場は、「子どもが二人いる40歳代の子育て世代」をイメージしたもので、地場産の木材や自然素材を使った広がりを感じる間取り、そして四季を通じて快適な室内環境を実現するエアパスソーラー工法など、同社のコンセプトと様々な技術が凝縮されたものである。

自分のスタイルで活用できる土間サロン

写真/フォレストコーポレーション

長野中央展示場に来てまず目に飛び込むのが吹き抜けの気持ちの良いリビングと、そこからつながる土間風の空間である。初夏を思わせる暑さとなった4月の取材日も、庭に面して大きく開け放たれたこの空間からリビングに心地よい風が吹き抜けていた。

展示場で迎えてくれた寺澤周平店長はこう話す。

「この家の大きな特徴は庭やリビングとつながるこの土間サロンです。こうして開口を全て開けると信州の豊かな自然を室内に取り込むことができます。この土間サロンは、元々当社の社長が信州の昔ながらの住まいにお伺いした際に、伝統的な土間の魅力に惹かれ、この空間がもつ良さを現代の住まいにも取り入れたいと考えたのがきっかけでした。当社のどの展示場にも、大なり小なり、この土間サロンを設けています」

天窓から外の光が差し込み、明るい空間に

写真/フォレストコーポレーション

かつて信州の多くの民家に当たり前のようにあった土間は、日々の作業や家事はもちろん、ご近所とのコミュニケーションなども行われる信州人の日常生活にとって大切な場所であった。 その後、住環境の近代化とともに、徐々に姿を消していった土間のある暮らしを現代的に提案したのが、この土間サロンであり、2013年度グッドデザイン賞を受賞している。 その性能は極めて現代的であり、かつての土間と何よりも大きく異なるのはその明るさである。 土間サロンは庭に面した部分だけでなく、天井にも2カ所、天窓が設けられており、ここに腰を下ろすと土間というよりはまるでサンルームにいるかのような心地よさに包まれる。

寺澤店長はこう言う。 「実際に土間サロンを採用いただいたお客様のお宅に伺うと、ここにテーブルを置いて畑仕事の合間のお茶を楽しむスペースとして使っていらっしゃったり、また登山やスキーの道具を置いたり、自転車やバイクのメンテナンスを行う趣味の空間として活用されている方も多く、本当に様々なかたちで活用いただいています。あとお子さんたちは玄関ではなく、ここから『ただいま』とドロンコで帰ってくることも多いと聞きますね(笑)」。 庭とリビングをつなぐ土間サロンは、笑顔を生み出す懐の深い空間なのである。

五感で自然を感じる空間

写真/フォレストコーポレーション

建具を開け放つと土間サロンと一体的につながるリビングは、この家の中心である。ここもまた普通の家のリビングとはひと味違う心地よさを感じる空間である。

「2層吹き抜けのため、空間の広がりを感じますし、何よりも高いところに設けた窓から1階の奥の方にまで光が差し込みます。土間サロンから吹く心地よい風とこの明るい光。こうした自然の心地よさを満喫できることがとても快適だと、お客様からも好評です」(寺澤店長)

また、「信州の木の家」をコンセプトの一つに掲げている同社の家は、構造材の100%、家全体でも80%の木材を県産材でまかなっており、基礎にヒノキ、柱や梁にスギ、床にマツといった具合に、地域の素晴らしい木材を適材適所に用いている。

家に居ながら信州の森に抱かれているような、五感に心地よい住まいである。

地域に調和する住まいづくりをサポート

図版/フォレストコーポレーション

「長野県は夏暑く、冬は寒いという過酷な気候です。工房信州の家はそのような環境でも四季を通じて快適な住まいとなるよう様々な技術やアイデアを採用しています。

庭の植栽もその一環で、私たちは土間やウッドデッキが配置される南面に落葉樹を植えることをお勧めしています。そうすることで夏は茂った葉が木陰をつくって直射光を遮り、その日陰で冷やされた涼しい風がリビングや家の隅々にまで流れます。

逆に冬は葉が落ちますので、低い日差しが部屋の奥にまで差し込みます」(寺澤店長)

土間サロンの開口部を全て開けると、夕涼みの風が室内にとどく

写真/フォレストコーポレーション

こうした工夫を含め、「工房信州の家」には、軒の出の深さ(900㎜)など住まいを快適にする様々なデザインコードが設けられている。

寺澤店長はこう語る。

「例えば、隣地との境界を遮へいせず、通風や日照が確保できるよう心掛ける敷地計画。そしてそれによってもたらされるメリットを土間サロンなどにつなげて住まいに取り込むプランニング。

また家の顔となるアプローチについてもなるべく生垣や自然素材を用いることを心掛けています。こうした基本ルールを適用することで、信州の自然の中で暮らす住まいのあり方を提案させていただいています」

地域の気候風土に対応しながら、そのメリットを取り込む「工房信州の家」の住まい。信州だけでなく自然に寄り添った日本の住まい方を考えるうえで大いに参考となるだろう。

 

 

 

引用元/『HomeGarden&EXTERIOR vol.2』より

写真・図版/フォレストコーポレーション

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