花や緑に親しみ、季節感に溢れる暮らしを訪ねる「私の庭・私の暮らし」。今回は住宅街のテラスガーデンをリニューアルして、バラと宿根草が育つ庭を楽しむ個人邸をご紹介。コンテナでは満足に育たなかった植物の成長ぶりに日々、感動をもらうという神奈川・Mさんの庭です。

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ガーデンデザイナーに依頼して庭の悩みを解決

以前はほとんどの部分が石張りで、地植えの場所が少なかった庭をリニューアルしたM邸の5月。

幼少時代に自然がいつもそばにある環境で育ったことから、長年、庭のある暮らしに憧れていたという神奈川に住むMさん。ご主人との海外赴任生活を経て10年前に日本に戻ってからは、いざ新居でガーデニングを楽しもうと庭をつくったものの、思い通りに植物が育たず何年も悩んでいたといいます。

東南向きの外壁を覆い咲くのは白バラの‘アイスバーグ’とピンクの‘春がすみ’。5年前にMさんが吟味して選びました。

誰に任せれば庭づくりの悩みが解消されるのか、いい出会いに恵まれなかったというMさん。そんな中、近所の庭好きの人に紹介されたガーデンデザイナー、GREENの清水匠さん、かおりさん夫婦に、つるバラの剪定と誘引をお願いしたことをきっかけに、庭のつくり替えが実現しました。つくり替えて約1年を迎えた2018年5月の庭では、白とピンクのつるバラが一斉に花を咲かせ、庭の中央の花壇では、白花のオルラヤや淡いピンクのシャクヤクが咲き、花と緑に溢れていました。

憧れのガーデニングデビューは、プランター栽培から

Mさんの庭部分は駐車場の上にありますが、石張りの下には深さ50㎝の土が入っています。庭の中央部分の石張りをくり抜いて地植えができるようにリフォーム。

海外赴任を終えて帰国後、庭つきのマンション暮らしを経て新居に越すと、何社もの業者さんから庭施工の勧誘があってMさんは戸惑ったといいます。「当時は、自分がつくりたい庭のイメージがたくさんあって、どう伝えたら思った通りの形に仕上げてくれるんだろうなと分からないままにいましたが、HPを見て選んだ業者さんに、庭の施工をお願いしてみました」。

庭を囲むレンガ塀とフェンス沿いには、手入れも楽な高さ約40㎝の植栽升をつくってゲラニウムやビオラ、オダマキなどの宿根草が植わるスペースに。

そうして仕上がった庭は、ちょっと思っていたイメージと違う気がしましたが、「草ぼうぼうで手をつけられなかった空き地が、きれいな石張りのテラスに一新されて嬉しかったです。それから、この場所を私の理想の空間にしよう! と張り切って、育ててみたかった花苗を探してはコンテナに植えていきました」。

地面に排水槽がある部分のみ、移動可能な大きめのプランターを置いて、ローズマリーやキモッコウバラを植えています。

Mさんが新しく得た庭は、床部分のほとんどが石張りになったテラスのようなデザイン。家の外壁と同じレンガを使った塀とアイアンのフェンスが周囲を囲み、中央にレンガの煙突を思わせる植栽升がありました。想像以上に植物を植えられる場所がなかったので、植物が増えるたびにコンテナを増やしていったMさん。どうにかならないか試行錯誤を重ねているうちに1、2年が過ぎました。

庭の入り口付近に以前からあった立水栓と壁泉を生かし、水を受ける器の周りにも緑が育つように地植えの花壇スペースを設けました。壁泉の水の出口には女神の像をプラスしたことで、水の流れに変化がつきました。

「憧れていたガーデニングが、なんだか全然面白くないんです。日に日に庭を変えたいなという思いが膨らむのですが、まだ完成して1、2年と日が浅いし、せっかくつくっていただいたのだからと、つくり替えることを考えないようにしていました。そんなモヤモヤした気持ちを抱えながら、石張りのフロアにコンテナをいくつも並べて、宿根草や球根を育てていたんです」。

カーブを描く地植えの花壇と合わせて、庭の角につくったレンガの花壇も曲線に。 水鉢には水草が育ち、メダカが泳いでいます。

理想の庭づくりを目指して努力をしていたMさんですが、自分ではもうどうにもならないと限界を感じていたとき、ちょうど清水さんと出会って、思い切ってこれまでの悩みを相談しました。プランターで植物がうまく育たなくて困っていることや、秋に植え込んだ球根が小動物に持ち去られた事件、そして、どんな庭が欲しいかというイメージを伝えると清水さんは庭のつくり替えを提案してくれたのです。そして、無事庭ができて初めて迎えた2018年の春。Mさんはこれまでの苦労はなんだったのか、不思議に思うほど、理想的なガーデンシーズンを迎えることができました。

つくり替える前から花壇に植えてあったアオダモの木を、リビングからも見やすい位置へ移動。リビング前は、家族がくつろげるベンチスペースに。

「花壇に好きな宿根草をたくさん植えたんですが、植物の育ちがこれまでとまったく違うんです。例えば、オダマキ。ポットで買ってきてプランターに植えても、それ以上大きくならずにいつの間にか消えてしまいましたが、今は大きく成長して、花の数も増えて。私、オダマキがあんなに育ったのを見るのは生まれて初めてなんです。それが自宅の庭で叶うなんて!」と目を輝かせ、庭での感動を語ってくれました。

この場所で、チューリップがまともに咲いたのを見たことがなかったというMさん。「今年は本当にきれいに咲いて。チューリップってこんなに花が長くもつんですね」。Photo/清水匠

この庭づくりが始まった頃からMさんに奇跡的なことがおきました。それは、8年も抱えていた病が回復へ向かったというのです。「ちょうど清水さんにお会いした頃は、家にいても体を動かすのが億劫だったのですが、庭の施工が始まってからは、なんだか体の中に力が湧いてきて。日に日に元気になっていったんです。そのうち体力がついて、病院に検査に行ったら、8年間飲み続けていた薬がもういらないまでに病気が治っていたんです。それには先生も驚いていました。心配していた家族も私の回復ぶりを喜んでくれて。これって、きっと庭のおかげだよね、と家族と話しました。庭はすごい力を持っているんですね」。

ガーデンデザイナーが教える小さな庭の花壇の工夫

もし花壇の中に石がなかったら、植物に手が届かず、作業するのを諦めてしまうことも。
足が乗せられる程度の石を花壇の中にいくつか置いておくだけで、一歩踏み込んで手入れができます。

乱張りの敷石をくり抜いた花壇は、縁取りのレンガなどをあえて加えず、切りっぱなしにしたことで、歩く際につまずかず、庭も広く感じられます。また、花壇の中央は盛り土したことで、植え込まれた植栽に立体感が出ました。そして、花壇の中にいくつかの石を並べて置くことで、土がこぼれ出ない効果と、先に紹介したように足をつく場所にもなります。ランダムに置いた石があることで、ヒューケラなどの植物を植えつけるポイントになったりと、石ひとつにもいろいろな効果があります。石は、Mさんのリクエストで、コッツウォルド・ストーンの自然石を使いました。

理想の庭ができて家族の生活が変わった

庭に面したリビングの窓から、いつでも庭に咲く花が見られます。

Mさんは、中学の頃から自身の家づくりに憧れのイメージがありました。それは、レンガづくりの家で、玄関に明かりが灯り、室内から明かりや笑い声がもれ、あたたかい家族が住んでいる。そして、家族がくつろぐ家には、庭も必要と考えていました。こうしてようやく、自身もガーデニングを満喫できる庭が完成し、憧れのイメージは現実のものになりました。

これまで庭にほとんど興味を持っていなかったご主人も、出勤前にベンチに座ってくつろいだり、帰宅すればビールを片手に庭に出るように。毎日ちょっとずつ変わっていく庭の様子を眺めるのが、Mさん家族にとっての新しい日課になりました。

ベンチコーナーの側には、庭に灯すライトをプラス。

ところで、Mさんはどんな庭にしたいと清水さんに話したのでしょうか? それは、とてもたくさんの注文だったとMさんは笑います。「まずは、流れる水とメダカの池、睡蓮が咲く水鉢が欲しいことと、ロックガーデン風も好きだなぁとか。全体のイメージは、イングリッシュガーデンというくくりではなく、和も洋も共存させたい。そして、野鳥がやって来る庭。もうひとつ欲張って、ターシャのような庭も憧れとお話ししました。さらには、できるだけ今育てている植物を生かして欲しいこともお伝えしました」。

清水夫妻による施工は、工事途中もとてもきれいだったとMさん。「また翌日も工事にいらっしゃるというのに、必ず毎日帰るときはゴミを仕分けしてきれいに掃除をしていかれるんです。そういう丁寧な仕事ぶりも、とても気持ちのよいものでした。何といっても、庭でダメになりかけていた小さな苗も手入れをしながら、新しく完成した花壇にぜんぶ植えてくださって。作業の合間に、こぼれ種も採っておいてくれたんですよ。植物を本当に愛していらっしゃるんだなと思いました。清水さんに任せてよかったです」。

つるバラが植わる地面も植え込める部分を増やしたことで、バラと相性がよいラムズイヤーやサルビアのコンビネーションも楽しめるように。

庭というのは、施工が終わった後に、季節ごとの手入れを重ねて育てていってこそ、より理想の形へと近づいていきます。「あんなにたくさんの私の希望を、この小さな庭に詰め込んでくださった清水さんに感謝しています。これから先も、清水夫妻の手を借りながら一緒に庭を育てていきたい。そう思える庭づくりの水先案内人と出会えたことは、私にとって本当に幸運でした」。庭をつくり替えただけでなく、信頼のできるガーデナーさんとの出会いは、Mさんにとって何よりも嬉しい出来事となりました。

Information

設計・施工/GREEN 清水 匠
https://greengdo.amebaownd.com

Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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