梅雨の鬱陶しさを瑞々しい生彩に変え、季節を伝えてくれるアジサイ。日本各地に名所がありますが、東京・銀座の地上40mにもアジサイの名所があることをご存じですか? 近年、日本の育種家たちが生み出すアジサイの新品種を一堂に集めた「あじさいガーデン」がファンケル 銀座スクエア10階の空中庭園で開催中です。繊細さと華麗さを併せ持ち、これまでのアジサイのイメージを大きく変えつつある日本の新しいアジサイの世界をご覧ください。

『木々が光を遮る深い森の奥、濃密な緑がふと開けた明るい場所に、美しい湖とともに現れるアジサイの花園。青緑色の水をたたえた湖の湖面を白鳥達がすべるように進み、その奥の小高い丘には“白鳥城”の名を持つノイシュヴァンシュタイン城*がひっそりとそびえ立ち………。』

(*ドイツロマンチック街道の奥にあり、若き美しきバイエルンの王、ルートヴィッヒ2世が莫大な資金とその生涯をかけ、作り上げた世界一美しい城)

森の動物たちが湖畔で遊ぶ“白鳥の湖”を抜け、あじさいガーデンの奥へ進むとノイシュヴァンシュタイン城が。

ファンケル 銀座スクエア10階の空中庭園では、そんなロマンチックなストーリーで構成された「初夏のあじさいガーデン」が6月8日(金)まで開催中です。アジサイといえば、雨を脇役としつつも控えめに季節の主役を演じてきた「和」のイメージが定着していますが、今回この庭に登場するのは、「エレガント」「ゴージャス」「ドラマチック」といった形容詞が似合う新品種。日本全国から集められた30種類以上の新品種が初夏の宿根草とともに庭を華麗に彩ります。

ガーデンの中に設けられたテーブルにはアジサイの花を水に浮かべたフローティングフラワーが。

アジサイは近年、日本の育種家たちによって次々に新しい品種が生み出され、花弁の縁が別の色で彩られたピコティや繊細なグラデーション、フリルのようにたっぷりとした八重咲き、劇的な色変わりを見せるアンティークアジサイなど、その表情は多種多様な広がりを見せています。この庭を企画、制作した渡辺さくらさんは、今回の展示もそんな新しいアジサイのイメージを感じてもらえるように演出にも趣向をこらしたと話します。

島根県で作出された‘銀河’。泡立つような中心部と白い縁取りのある覆輪の花が夜空に散りばめられた星をイメージさせる。

「近年、日本で生まれる新品種のアジサイは、アジサイ寺などこれまで私たちが抱いていた、いわゆる水色の手まり状の花というイメージから飛躍し、花色も花形も驚くようなユニークな花がたくさん登場しています。そうした新品種ならではのアジサイの魅力を演出するために、あえてヨーロッパを舞台にした“あじさいガーデン”をつくることにしました。今回の庭は、白鳥を象った素敵な鉢との出合いからイメージを膨らませ、白鳥城といわれるドイツのノイシュヴァンシュタイン城と、その城が見下ろすアルプ湖をデザインコンセプトにしています」(渡辺さん)

湖に浮かぶ白鳥の背を彩るのは「鬼木園芸」の秋色アジサイ‘山口パープル’(右)とユーフォルビア‘ダイアモンドフロスト’(左)。

ここには、アジサイの育種が盛んな群馬県の「さかもと園芸」や「小内園芸」、常緑アジサイを生み出した「久保田花園」、秋色アジサイで有名な福岡県の「鬼木園芸」、‘万華鏡’や‘銀河’など優良品種を次々に生み出している島根県アジサイ研究会など、日本を代表するアジサイの育種・生産者たちの名品、新品種が一堂に会しています。ガーデン全体の雰囲気を楽しみながら、一つひとつの花に目を向けてみると、これらの新しいアジサイは、華麗でありながら、日本独自の感性による花の育種文化を色濃く反映していることが分かります。

福岡県の‘筑紫(つくし)ルビー’。

例えば、「さかもと園芸」の代表品種でフラワー・オブ・ザ・イヤーを受賞した‘KEIKO’は、咲き始めは白の花弁にピンクの濃い縁取りがあり、次第に縁取りの色が溶け出るように全体がピンクがかって、さらにグリーンを帯びたアンティークカラーに変化するという複雑な色変わりが楽しめる花です。花形も最初はガクアジサイのように花の中心があいていますが、咲き進むに従ってふんわり手まり状に変わっていきます。こうした新しいアジサイは一見すると、その艶やかさに気を取られがちですが、そればかりでなく花の表情は繊細で緻密、そして時の移り変わりを楽しませるという趣向は、日本的な美意識のもとに生み出された花であることを感じさせます。今回の展示では新品種の‘ピンキーリング’もお目見えしています。

「さかもと園芸」の新品種‘KEIKO’。ピンクのピコティが愛らしい。
市場未発表の赤いアジサイ‘白寿紅’。真っ白な花から紅を帯び、最終的にワインレッドに。その他、‘雪姫の恋’、‘紫雲紅’なども。

日本で生み出される新しいアジサイは、梅雨以降の庭の風景を変える重要な素材になりつつあり、今回の展示では庭のみならず寄せ植えやハンギングバスケットなど、アジサイのさまざまな演出方法が提案されています。

開催中はアジサイの鉢苗を販売しているほか、最終日の6月8日(金)には展示品の一部販売も行われます。市場ではあまりお目にかかれない希少種を手に入れるまたとないチャンスでもあるので、銀座にお出かけの際は足を運んでみては。これまでのアジサイのイメージを大きく変える日本の新しいアジサイの世界をご堪能ください。

 

赤いビンカの‘タトゥー’と引き立て合う鬼木園芸のアジサイ‘ノブコ’のハンギング。
オオバギボウシとアジサイの涼しげな大鉢。
宿根草や夏の一年草との組み合わせも参考になる庭演出。傘形のプランターに植栽。

Information

初夏のあじさいガーデン 6月1日(金)~8日(金)
会場:ファンケル 銀座スクエア10Fロイヤルルーム
問い合わせ:TEL 03-5537-0231(インフォメーションカウンター)
http://www.fancl.jp/sq/

Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。