子どものアトピーに悩んだことをきっかけに、スキンケアの会社を夫婦で立ち上げ、植物の力を多くの人に知って欲しいと商品販売を続ける鈴木ハーブ研究所の鈴木さちよさん。ショップに併設されたハーブガーデンで、ハーブとの運命的な出合いを伺いました。

ミントは10種類ほどを育てている。地植えにすると地下茎ではびこるため、鉢植えごと土に埋めて根が広がりすぎないようにコントロール。
ワイルドストロベリーもハーブの一つ。実はもちろん、葉もハーブティーなどでに使える。
葉に甘い香りと味があるフェンネル。

ミントやタイム、ラベンダー、カモミール、フェンネル、レモングラス…。500種類以上のハーブが植えられたこの庭は、「鈴木ハーブ研究所」のハーブガーデン。ハーブといわれる有用植物の多くは芳香成分を多く含むので、ガーデンを歩きながらさまざまな植物に触れて香りを楽しむことができます。たくさんのハーブが植えられたこの庭では、草花の間を渡っていく風さえも芳香をはらみ、回遊式のガーデンを一周する頃にはアロマセラピーを受けたような心地よさを感じることができます。

エルダーフラワーの木。ヨーロッパでは古くからハーブとして利用されてきた樹木で、白い花も、そのあとにできる黒い実もジュースやジャムなどでいただける。

「エルダーフラワーのコーディアルでもいかがですか」と、グラスの入ったバスケットを抱えて庭に出てきてくれたのは、鈴木ハーブ研究所の代表、鈴木さちよさん。ハーブの楽しみ方やその力を知ってほしいと、造園家の阿部容子さんに依頼してこの庭をつくりました。

「この庭は見て楽しむだけでなく、実際にここで育った草花を摘んで、モイストポプリやジュースづくりなどの講習会もしているんですよ。このエルダーフラワーコーディアルもこの庭の木から花を摘んでつくったんです。ヨーロッパでは“田舎の薬棚”と呼ばれるほど多くの薬効があるんです」

ノコギリソウの白い花が揺れる初夏のガーデン。チラチラとした小花の多いハーブの庭で、はっきりとした構造デザインが庭風景を美しくまとめている。

鈴木ハーブ研究所は、植物が人の肌や健康にもたらす作用を研究し、スキンケア化粧品の開発と販売を行っています。

代表の鈴木さちよさんが会社を起こしたのは、自身の子どものアトピーがきっかけでした。

「次女が生まれて5カ月の頃からアトピー症状が出始めて、朝起きたら血だらけみたいなこともあるほどでした。病院の薬や市販の保湿剤などいろいろ試したんですが、思うように結果が得られなくて随分悩みました。そんなときに、納豆の成分が保湿にいいと聞いたんです。とにかく試してみようと思ったんですが、保湿剤の市販品がなかったので、原料メーカーさんに事情を説明して材料を分けてもらい、自家用に保湿剤をつくったんです」

鈴木ハーブ研究所の最初の商品で定番人気商品の「納豆シリーズ」。納豆由来の保湿成分「ポリグルタミン酸」に5つの植物が加えられ、肌の潤いを保ちます。
http://s-herb.com/natto_lotion/

その自家製保湿剤により、ひどかった娘さんの症状はすっかり改善。同じ悩みを持つ人たちの間で、鈴木さんの納豆ローションは口コミで広がり、欲しいという人が次々に現れたために工場生産をすることに。以降、納豆ローションのもととなっている大豆のほか、ハーブを中心とした植物の薬効に着目して新しい商品を開発。鈴木ハーブ研究所は、スキンケアブランドとして発展し15年になります。

祖母と暮らしていた家の庭の木を、現在のハーブガーデンにも残してある。

鈴木さんが植物の未知なる力に興味を持ったのは、娘さんのアトピーだけでなく、自身の経験も大きく影響しています。

「実は私、幼い頃から祖母とともに暮らしてきたんですが、24歳の時にその祖母が亡くなったんです。就職はしていましたが、これから私、一体どうなっちゃうのかなって、どうやって生きていったらいいのかなって、広い古い家で一人不安と孤独でいっぱいでした」。そんなとき、偶然雑誌で見つけた古木の桜に、鈴木さんは心を奪われます。

Photo/ 京浜にけ

三春滝桜。福島県三春町で1,200年以上前から咲き続ける国の天然記念物に指定されている枝垂れ桜です。この木に会いたい! という衝動に突き動かされ、すぐに出かけた三春町では、たくさんの人がその古木の桜を見に訪れ、桜の下は人々の笑顔で溢れていました。

「それを見て、ああ、私もこういう風に生きたいなって強く思いました。人に喜ばれる人になろう、歳を重ねてもずっと魅力的な人でいようって思ったんです」

生き方の目標を見つけたその帰り、鈴木さんはもう一つ、三春町で植物と運命的な出会いをします。それがハーブ。

「三春ハーブ花ガーデン(現ブリトマート)で、香りがあって効能もある植物があるんだっていうことを初めて知って、ラベンダーやローズマリーの苗を買って帰ったのが、私のハーブ栽培の始まりなんです」

園路は近所にある施設の人が車椅子でも巡れるようにと、真砂土でつくった。

祖母を亡くし、突然一人暮らしをすることになった鈴木さんを、ハーブの優しい香りはいつも癒し、慰めてくれました。そして、地面にしっかりと根を張り逞しく生きる姿は、生き方を教えてくれたと言います。

「植物は私の人生の師のような存在です。だから、よい製品をつくってたくさんの人に喜んでもらい、植物が持っているいろいろな力を多くの人に知ってもらうことが、植物に私ができる恩返しだと思っています」

鈴木ハーブ研究所のハーブガーデンは、茨城県東海村にあるショップに隣接し、毎年5〜6月にはオープンガーデンを開催。ハーバリウムのワークショップやスキンケア教室なども行っています(要参加費・2018年は5月20日(日)までに要予約 *詳しくはHP参照)。ガーデンを巡りながら、ハーブの魅力を発見してみませんか。

Information

鈴木ハーブ研究所 オープンガーデン
「ウェルカムウィーク2018 〜ハーブの季節を楽しもう〜」

イベント開催日時/2018年5月25日(金)〜27日(日)10〜16時

ご予約・お問い合わせ/029-282-8881(9〜18時)

*6月中はガーデンを公開しています。ご見学が可能です。

会場/鈴木ハーブ研究所 〒319-1112 茨城県那珂郡東海村大字村松2461

http://s-herb.com

Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。