春のお花屋さんでは、よく見かけるラナンキュラス。これまで地植えで栽培するのは難しく、ガーデンではなかなか活躍の機会がありませんでした。しかし、花弁がシルクのように艶めく新品種「ラックスシリーズ」の登場によって、ラナンキュラスは一躍、春の庭のメインポジションに躍り出ることに。春の庭に革新をもたらしたラックスの作出者、宮崎県の「綾園芸」を訪ねました。

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ラナンキュラスとバラのアレンジメント。大きめのピンク花が従来からある切り花品種のラナンキュラス。小さめの淡いピンクの花はバラ。Photo/Julia Tsokur/Shutterstock.com

春、まん丸い小さなツボミが緩み始めると、内側からとめどなく溢れ出るように薄い花びらを幾重にも重ねるラナンキュラス。ピンクや黄色、赤に加え、黒やグラデーション、覆輪、斑入り、ギザギザのフリルなど、新しい花色や花形が次々に生み出され、花屋さんの店先は年々、華やかになっていきます。しかし、これらは「切り花用」の品種。花屋さんで個性的なラナンキュラスを見るたびに、「これがガーデンにも植えられたらなぁ」と口惜しい気持ちになるガーデナーは少なくありません。

「綾園芸」作出のラナンキュラス‘スクラン’。つぼみも可愛い。切り花品種。

というのも、一般的なラナンキュラスは地中海からイラン・イスラエル周辺の原種の遺伝子を持つアシアティクスという種類で、日本の夏の高温多湿や冬の寒風が苦手。ですから本来、ラナンキュラスはキンポウゲ科の球根植物で多年草ですが、日本では地植えで年を越すことは難しく、球根を掘り上げて乾燥させるなどの管理が必要です。バラによく似て華やかで愛らしいビジュアルなのに、これまであまりガーデンに普及してこなかったのは、そうした管理の難しさが大きな理由でした。

ラックスシリーズを作出した宮崎県の「綾園芸」草野修一氏。切り花のラナンキュラスでも数々の賞を受賞している。

しかし、新品種の登場によって、ラナンキュラスは一躍、春のガーデンのメインポジションに躍り出ることになります。それがラナンキュラス・ラックス(ピカピカ)シリーズ。宮崎県の「綾園芸」草野修一氏が作出した庭植え可能な新しいラナンキュラスです。ワックスをかけたように花弁がピカピカと光ることから、ラナンキュラスとワックスを合わせて「ラックス」という名がつけられました。草野さんは、これまでにも切り花用にユニークなラナンキュラスを数多く作出し、国内外でたくさんの賞を受賞してきました。

「ラックスも最初はこれまで同様、切り花を想定していましたが、異種間交配でアシアティクス以外の血が入ったことによって、見た目だけでなく生育上の形質にも、これまでのラナンキュラスにはない“耐寒性”という性質が現れたんです。そのことに最初に気づいたのは、実は私ではなくラナンキュラスが大好きと言ってくださったガーデナーの方なんです」(草野さん)

庭植え可能なラックスシリーズ‘エウロペ’。日本フラワー・オブ・ザ・イヤー2017の鉢物部門で「優秀賞」「ブリーディング特別賞」受賞品種。
アプリコットカラーの花弁にワイン色の花心がシックなラックスシリーズ‘ウラノス’。日本フラワー・オブ・ザ・イヤー2017の鉢物部門で「優秀賞」「ニューバリュー特別賞」受賞品種。
ラナンキュラス・ラックス‘アリアドネ’ 。日本フラワー・オブ・ザ・イヤー2012切花部門 「最優秀賞」受賞品種。

ラックスが冬越しした、と教えてくれたのは、静岡県の浜名湖ガーデンパークにいたガーデナーの佐原宏康さん。

「ある日、佐原さんから、『僕、ラナンキュラス大好きなんです、どうしてもガーデンパークに植えたいんです』と電話をいただいたんです。私はラナンは庭植えは難しいからと渋ったのですが、ぜひやらせてほしいとあんまりおっしゃるので、2010年に手元にあったラックスを浜松にお送りしたんです。そしたら、そこでの管理がとてもよかったおかげもあって、冬を越して2011年の春、立派に咲いてくれたんです。ガーデンでのラックスの可能性を大いに示していただいた瞬間でした。さらに、その後も夏から冬を越し、その次の年の春はさらに株が充実して立派になり、私自身、本当にびっくりしました。ひょっとしてこれは宿根するのか、と思って、あちこちで試験栽培してもらった結果、やはり確かに宿根するということが分かりました」(草野さん)

そして2015年のジャパンフラワーセレクションで、“ガーデニング部門”として初めてラナンキュラスが最優秀賞を受賞します。輝くような黄色の花のラックス ‘ピュタロス’という品種でした。宿根ラナンの登場は、春の景色を変える花として、ガーデン界に驚きと喜びを持って迎え入れられました。

春のガーデン花材として活躍するラックスシリーズ。写真は神奈川・横浜のガーデン。

ラナンキュラス・ラックスは、ちょうど桜と同じ頃に開花します。チューリップなどの球根花やパンジー・ビオラといった定番花にラナンキュラスが加わったことで、近年の春の庭の様相は一気に変わり始めています。ラックスは草丈50〜60㎝と背が高くなるわりに、株元の茎が太くしっかりしているので倒れにくく、スプレー咲きで次々に花が咲いて庭での存在感は抜群。加えて普通のラナンキュラスに比べ、風に揺れるような抜け感があり、ふわふわして優しい雰囲気なので、他の花と合わせやすいのもガーデンフラワーとして優秀な点です。花は一重から半八重で、咲き進むにつれてシルバーやゴールドのような輝きが強くなります。たくさん咲くので切り花としても楽しめ、つぼみのうちに切っても花瓶の中でしっかり咲いてくれます。

左から順に咲き始めから咲き終わりまで。ラックスは花色の変化も特徴。

<栽培のコツ>

  • ラックスは比較的耐寒性があるので、露地で多少の霜や雪で葉が凍っても越冬できます。
  • 水はけのよいところに植えましょう。
  • 寒風に直接当たるところは避けましょう。
  • 半日以上、日が当たる場所を選びましょう。
  • 乾きすぎに注意。植えつけ後、2週間は特に注意して、表土が乾いたらたっぷり水を与えます。
  • 地植えの場合、健康に育つと、株は一年で2倍以上に成長します。
  • 市販の株は5号鉢以下のものなので、すぐに2回りほど大きな鉢に植え替え、以降は2~3年ごとに植え替えましょう。
  • 最初から地植えが心配な場合は、鉢植えで球根を増やしてから地植えにすることをオススメします。

「ラックスが宿根するというのは本当に偶然のことで、花を育種していると、こういう予想がつかないことがたくさん起こるんですね。でも、20世紀は時代的に工業製品が生まれていろいろな商品が画一化され、花の育種においても効率性が求められ、いかに花が揃っているかということが重視されてきました。100万粒のタネを播いたら、100万すべてが同じ花を咲かせるということが課題。また、トラックにできるだけたくさん積みこめる“効率のよい花”をつくることが重要だったんですね」(草野さん)

寄せ植え花材としても人気のラックス。

「ですから、ビジネスにおいての育種は “捨てること”とされてきました。効率の悪い規格外は捨てていかれるんですね。一方で、園芸の世界では育種はずっと“拾うこと”なんです。私はといえば、昔から結構、変わった形質のものを残して花を育種してきましたから、そういう意味では本当のビジネスマンではないかもしれません(笑)。でも、世界的にみても歴史的にみても、日本の育種というのは、もともと変わったものに価値を見出して残していく傾向にある文化なんです。ですから個性的・多様性という点から見たら、私は日本の育種は世界一だと思います」(草野さん)

個性的な色合いの切り花品種 ‘アミズミズ’。
繊細な花色の切り花品種 ‘バイヨンヌ’。
花形がユニークな切り花品種 ‘シストロン’。

今、SNSの普及で、世界中のユーザーがその日本独自の育種文化に目を向け始めています。その証拠にインスタグラムでは#Japaneserananculusとして世界各国のフローリストが綾園芸のラナンキュラスで作品をつくり投稿しているほか、世界的なフラワーデザイナーも宮崎のハウスに足を運び、自身の作品にラックスシリーズを用いました。

現在、ラックスシリーズは、宮崎県を代表する春の花として、「こどものくに」や「フローランテ宮崎」などの公園で開花が見られるほか、一部のネットショップで花苗を購入することができます。

日本人の感性によって生まれた花が世界で注目されていると思うと、ちょっと嬉しいですね。あなたの庭でもラックスを育ててみませんか。年々株が大きくなって、春の庭を華やかに彩ってくれますよ。

宮崎県の「こどものくに」のガーデン。大事に育てられ、株分けされたラナンキュラス・ラックスシリーズが春の開花を待つ。
宮崎県の「こどものくに」。春、ラナンキュラス・ラックスシリーズがガーデンを華やかに彩る。写真提供/源香さん(こどものくにヘッドガーデナー)

綾園芸
http://www.ayaengei.com/index.html

こどものくに
http://www.kodomo-no-kuni.com
宮崎県宮崎市青島1-1-1
TEL/0985-65-1111

フローランテ宮崎
http://www.florante.or.jp
宮崎市山崎町浜山414-16
TEL/0985-23-1510
*2018年4月22日まで「ラックスガーデンAYA」開催中。

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Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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