鉢植えでバラを育てている人にとって、冬の間の剪定は欠かせない作業です。しかしながら、バラは順調に育つだけでなく、時には生育不良になってしまう株も。そんな場合は、それぞれの株に合わせた手入れが必要です。状態に合わせた生育不良の鉢植えバラの剪定とお手入れ方法を、バラの専門家・河合伸志さんに解説していただきます。

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バラを栽培する際に、剪定は不可欠な作業というイメージがありますが、実際には全く剪定しなくてもバラは咲きます。ではなぜ剪定を行うのかというと、次のようなメリットがあるからです。

  1. バラは新しい勢いのよい枝(シュート)が発生すると、古枝が徐々に衰退しやがて枯れていきます。このようにバラは新陳代謝を繰り返している植物なので、剪定で古い枝を除去し、新枝を残すことでそれを助けることになります。
  2. 剪定の際には小枝や枯れ枝を切り取ります。それによって、株内部の蒸れが解消され、病害が発生しにくくなります。また、薬剤散布の際に、薬剤がかかりやすくもなります。
  3. 小枝や枯れ枝が除去されることで見た目がスッキリし、鑑賞上の美観が得られます。
  4. 株の樹高や株形を剪定によって調整できます。鉢植えでは、剪定によってコンパクトにすることで、風などで倒れにくくもなります。

しかし、剪定作業にはメリットだけでなくデメリットもあります。生きている枝には養分があるため、剪定をすればするほど株から養分を奪うことになります。ここで紹介するような弱った株や老株に強い剪定を行うと、養分のロスによるマイナス面の方が大きく現れ、成育がより悪くなったり、酷い場合はそのまま枯れてしまうこともあります。枝を切り取るという剪定作業は、バラにとってメリット・デメリットの両方があるので、それらを考慮し接点を十分に見極めることが大切です。

それでは、鉢植えバラを剪定していきましょう。

ここでは、やや調子の悪い株と、重度の生育不良の株の2パターンについて、剪定方法と回復のための手入れを解説します。生育に問題がない鉢植えバラの剪定は、『バラの専門家が教える! 鉢植えで育てるバラの剪定方法』をご覧ください。

軽度の生育不良のバラの剪定

見本の株は、植えてから数年が経ってもほとんど成長していない‘シェアリング・ア・ハピネス’。冬の植え替えで新しい用土に植え込んだことで、生育が少し回復し始めました。冬の植え替えの様子は『バラの専門家が診断! 花数が増えないバラと調子が悪いバラのメンテナンス法』をご覧ください。

丸で囲んだ部分に新芽が見えています。

長年に渡る肥料不足や日照不足、不適切な潅水などの影響で、植え付け後の5年間ほとんど成長していません。植え替えにより新芽は出てきているので、引き続ききちんと手入れをすれば、今後の成長は十分に見込めます。株はまだ完全に完全に回復していないので、通常ならば切り落とすような弱小枝も大切に残し、株への影響を考えながら行います。

剪定の手順

  1. 葉を取り除く
    株全体の姿が分かりやすくなるよう、残っている葉があれば摘み取ります。多少葉があっても、全体の姿が判別できれば、ほかの作業と並行しながら取り除いてもOKです。ただし、剪定後に葉を残すと翌年に病害虫を持ち越してしまうこともあるので、最終的には全ての葉を取り除きます。
  2. 折れた枝を切る

    多くの場合、折れてしまった枝は枯死してしまうので、切り取ります。
  3. 枯れ枝を切る

    茶色く枯れた枝をつけ根から切ります。
  4. 弱小枝を切る

    開花の見込めない前年(12月に剪定する場合は当年)に伸びた細い枝(弱小枝)をつけ根から切ります。この品種は中輪なので、割り箸の太さより細い枝を弱小枝の目安としますが、この株は生育が良くないため、基準を格下げして竹串の太さより細い枝を弱小枝とします。
    ※弱小枝の目安
    弱小枝のおおまかな目安としては、大輪品種では鉛筆の太さよりも細い枝、中輪品種は割りばしよりも細い枝、小輪品種は竹串よりも細い枝になります。ただし大輪品種であっても枝が細めの品種があるなど、品種特性の差もあるので、その辺は考慮して判断します。また生育の悪い大輪品種は、鉛筆を基準にすると枝が全てなくなってしまうことがあるので、生育の度合いに応じて判断することも大切です。
  5. 樹形を整える

    今回の株は鉢の大きさを考えると、さほど切り詰めなくてもバランスが取れそうです。また、株の体力を温存させることを優先する必要があるので、あまり強い剪定はせず樹形を整える程度に軽く枝先を切り詰めます。この品種は枝が横に張るので、枝を切る際にはなるべく外芽で切ります。
    ※外芽
    外芽とは、その名の通り株の外側に向かって芽吹いている芽を指します。反対に、株の中心に先端が向いている芽のことを内芽といいます。枝の一番上の芽が最もよく成長するため、内芽の上で切ると、将来的に芽が伸びてきたときに枝が混みあってしまいます。外側に向かって伸びていく外芽を活かして剪定するように心がけましょう。
  6. 株元の掃除

    外芽とは、その名の通り株の外側に向かって芽吹いている芽を指します。反対に、株の中心に先端が向いている芽のことを内芽といいます。枝の一番上の芽が最もよく成長するため、内芽の上で切ると、将来的に芽が伸びてきたときに枝が混みあってしまいます。外側に向かって伸びていく外芽を活かして剪定するように心がけましょう。

    剪定前の株(左)と剪定後の株(右)。

    ここまでで剪定が完了しました。剪定前と剪定後の画像を比較すると分かるように、生育不良の株の場合、あまり強い剪定は行いません。

    剪定後は、翌春によい花を咲かせるために、忘れずに肥料(寒肥)を与えます。

  7. 寒肥

    剪定後に与える肥料は、施肥後、次第に溶けてゆっくりと効く緩効性の肥料がオススメです。肥料を与える際は、株の周囲に置くだけでOK。1鉢にどの程度の量を施すかは肥料のパッケージに記載の規定量を確認しましょう。
    使用した肥料:「マイローズばらの肥料」/株式会社住友化学園芸
    https://www.sc-engei.co.jp/guide/detail/1437.html

重度の成育不良の株の剪定

見本の株は、枯死寸前にまで陥った ‘クロッシェ’。冬の間に根を洗い、肥料分が配合されていない用土に植え直し、養生中のバラです。冬の作業は上述の‘シェアリング・ア・ハピネス’と同記事の『バラの専門家が診断! 花数が増えないバラと調子が悪いバラのメンテナンス法』をご覧ください。

この株はかなり重症です。前年に根腐れをおこした結果、非常に生育状態が悪いです。現在は根を再生させている最中で、新しい芽も元気よく伸びる気配がまだありません。とはいえ引き続き丁寧に世話をすれば、回復する可能性はあります。このように生死を彷徨う株は、ほとんど剪定は行わず、葉や枯れ枝を切り取るだけにとどめ、株へのダメージを最小限にとどめます。

新芽が吹いて回復の兆しも見られます。

剪定の手順

  1. 葉を取り除く

    葉を残しておくと、翌年に病害虫を持ち越してしまうこともあるので、すべての葉を取り除きます。
  2. 枯れ枝を切る

    茶色く枯れた枝をつけ根から切ります。
  3. 株元の掃除
    株元に葉や枯れ枝が落ちていないように掃除し、剪定は完了です。今回の株のように著しく弱っている株は、この時点で肥料を与えることでかえってダメージになってしまうことがあります。もう少し様子を見て、回復の兆しが見えてから施肥します。しばらくは活力剤を与え、根の発育を促しましょう。
  4. 活力剤を与える

    既定の分量で薄めた活力剤を与え、株の体力の回復を図ります。

Credit

アドバイス&文責/河合伸志
千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。

写真&文/3and garden

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